サブブランドやMVNOへの開放により、ユーザー数拡大を狙う+メッセージだが、競合するLINEなどのメッセンジャ―アプリと比べると乗り越えるべき課題はまだまだ多く、メッセージアプリの主役になれるかは未知数だ。SMSの発展版に位置付けられているため、ユーザー数自体は増えていく可能性は高いとはいえ、使ってもらえなければ意味がない。実際、ユーザー数の規模に反し、企業アカウントの数が限定的なのは、+メッセージにビジネスチャンスを見いだせていないからだろう。
本来のRCSには、飲食店の事前注文や航空券の予約、個人間送金、決済など、コミュニケーションから発展したさまざまなサービスを支えるプラットフォームとしての役割が期待され ていたが、現状の+メッセージは非常にシンプルなメッセージのやりとりだけとどまっている。一部の公式アカウントはこれに近い機能を備えているが、数が圧倒的に足りない。スーパーアプリ化するLINEなど、他のメッセンジャ―アプリに大きく後れを取っているといえそうだ。
ユーザー数を増やす上では、iOSをどう攻略するかも課題だ。SMSまで含めて+メッセージで一元管理できるAndroid版とは異なり、iOS版は+メッセージだけが独立した形でサービスが提供されている。Android版の場合、電話番号さえ知っていれば最低限SMSは送信できるが、iOS版だと標準のメッセージアプリを開き直す必要がある。Apple自身がメッセージアプリでSMSとiMessageをまとめて扱えるようにしているためで、現状のiOSでは、サードパーティーのアプリが端末内に保存されたSMSにアクセスすることができない。iOS版に関しては、SMSを提供してきたキャリアの強みが生かせていない。
また、+メッセージの提供を開始した2018年と現在では、市場環境に大きな違いがある。最大の競合であるLINEがソフトバンクの傘下に入ったためだ。既にRCSの“理想像”に近い機能を実現しているLINEが身内になったソフトバンクにとって、+メッセージを推進するモチベーションは薄くなっている。実際、真っ先にMVNOに対して機能を開放したKDDIや、1カ月以内に追随するドコモに対し、ソフトバンクは2022年春と提供時期が遅く、足並みがそろっていない印象を受ける。
+メッセージと距離を置く楽天モバイルが徐々にユーザーを増やしているため、“分断”がさらに広がってしまう可能性もある。だからこそ、+メッセージをサブブランドやMVNOに開放する必要があったともいえる。ただ、サービス内容が現状のままだと、先行するLINEとの距離はますます遠のくばかりだ。少なくともアプリの改善や公式アカウントを開拓するペースは、今まで以上に上げていく必要がありそうだ。
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