楽天のパートナーが抱える「基地局用地」と「周波数」問題――スペースモバイル計画に対する「疑い」への答えとは石川温のスマホ業界新聞

» 2021年10月23日 12時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 今週、開催された楽天グループのイベント「Rakuten Optimism」。モバイル関連ではかなり興味深いセッションが開催された。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年10月16日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 現在、楽天は自社で構築した完全仮想化ネットワークの販売に注力している。すでにドイツの1&1社がネットワーク構築の長期的パートナーシップを締結している。

 楽天グループの副社長兼CTOであり、楽天シンフォニーのCEOでもあるタレック・アミン氏と、ドイツ・ドリリッシュ・ネッツ AGのCEOであり、1&1社のテレコミュニケーションSEでもあるミハエル・マーティン氏が登壇していたのだが、1&1社がいま「苦労していること」としてあげたのが2点あった。

 一つ目が基地局設置で「数年間で1万2000という基地局を設置するには、場所を確保して認可申請をしないといけない」という。もうひとつが周波数帯でプラチナバンドを確保するため、2025年に予定されている800MHzのオークションに期待しているということであった。

 まさに楽天モバイルが抱えている課題と同じだ。ネットワークは完全仮想化で既存キャリアをリードできても、基地局設置と周波数というアナログな部分では、どの国であっても、どうにもならないということなのだろう。

 さらに注目のセッションだったのが、楽天モバイルの「スペースモバイル計画」についてだ。セッションには楽天モバイルの内田信行技術戦略本部長とASTスペースモバイルのアーベル・アヴェランCEOが登壇。内田氏からは「スペースモバイル計画を業界関係者に説明すると実現性について疑いを持つコメントをもらうこともある。アーベル氏も同じようなことがあったと思うが、どういったことを言われたことがあったか」と、筆者が聞きたかった質問をASTスペースモバイルにぶつけてくれた。

 アーベルCEOは「イノベーションを起こす上でたくさんの課題解決をしてきた。これまで誰もやったことがないことだが、1兆ドルのマーケットがあり、地球上の4分の3の人がインターネットサービスを受けていない状態にあり、大きなチャンスがある。

 技術的な課題は多いが、そこに価値がある。世界中にインパクトを与え、誰もがネットにつながる社会にして、世界を豊かにしていきたい。

 宇宙産業はこれまでの30年間、政府主導の業界で宇宙へのアクセスが限られていたが、これからは民間主導で大きなイノベーションを起こしていきたい。

 我々は低軌道で運用していく。200ぐらいの特許も申請している。いろいろなことを言われるが、どうぞ見ていてください。

 楽天とのパートナーシップでエコシステムを確立していく。かつてない、初めてのことになるが、もうすぐローンチするし、必ず実現したい」と意気込んでいた。

 あまり突っ込まれないよう、隙を与えないためにしゃべり倒していたようにも見え、もうちょっと「具体的になぜ実現できるのか」を説明して欲しかった気もするが、とりあえず、2022年には日本でもトライアルをするようなので、期待しておきたい。

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