独自プロセッサ×音声認識が“文字起こし”に革命を? 「Pixel 6 Pro」全力レビュー(後編)(2/3 ページ)

» 2021年11月01日 20時00分 公開
[石井徹ITmedia]

独自チップ「Google Tensor」とは何物か?

 Pixel 6シリーズの進化の“鍵”を握っているのは、Google Tensorである。これについて、もう少し詳しく見ていこう。

 この記事では便宜上「プロセッサ」と呼んでいるが、Tensorは「SoC(System On a Chip)」と呼ばれる半導体チップに分類される。

 SoCは、コンピューターの中核処理を担う「CPU」、グラフィックス処理を担う「GPU」、通信を担う「モデム」など、スマートフォン(コンピューター)を構成する上で必要なハードウェアを1つの半導体チップに集約したものである。SoCを用いる最大のメリットは、実装しなければいけない部品数を削減できることにある。そのため、部品の実装面積が限られるスマホでは、SoCが広く使われている。

 従来、PixelシリーズではQualcommが設計したSoC「Snapdragon(スナップドラゴン)」を利用してきた。それを今回、Googleは自社で設計したものに切り替えたのだ。

Tensor Googleのサンダー・ピチャイCEOのツイートに添付されたGoogle Tensorの実物写真。この1枚チップにCPU、GPUなどスマホを構成する複数のハードウェアが統合されている

 ただし、GoogleはTensorの“全て”を自社で開発したわけではないようだ。同社の説明を聞く限りでは、自社で独自開発したことを明言しているのは、機械学習ベースのAI(人工知能)処理を担う「TPU(Tensor Process Unit)」と、カメラのイメージセンサーから入力されたデータを映像に変換する「ISP(Image Process Unit)」の2要素に限られる。

 CPUは、他社のスマホ用プロセッサと同様にArmからライセンス供与を受けたコア(処理回路)を採用している。CPUコアは「2+2+4構成」、つまり3種類のコアを計8個搭載しており、うち2コアはArmの最新アーキテクチャである「Cortex-X1」を採用していることを明らかとしている。残りの2コアと4コアは特に言及がなかったが、実機でアプリを使って調べてみると「Cortex-A76」が2コア、「Cortex-A55」を4コア搭載していることが分かった。GPUについては、CPUと同じくArmが開発した「Mali-G78」を搭載している。

 Armアーキテクチャを採用する他社のプロセッサと比べても、TensorのCPU構成は独特だ。Qualcommの「Snapdragon 888」やSamsung Electronics(サムスン電子)の「Exynos 2100」では、最新かつ高パフォーマンスを誇るCortex-X1を1コアのみ搭載している。TensorがCortex-X1コアを多く搭載しているのは、「ピーク性能」を重視した結果だと思われる。

 ともあれ、TensorはGoogleが独自に設計したプロセッサであることは間違いないが、AIやカメラの処理をいかに効率的に行うかに注力した設計となっている。これは、競合のプロセッサにない強みであることは間違いない。CPUやGPUについてはArmのライセンスを活用し、最上位機種としてふさわしい性能を担保した格好だ。

CPU-Z CPU-Z」でTensorのCPU/GPU情報を確認する。CPU部分は最大2.8GHz駆動のCortex-X1コア×2、最大1.8GHz駆動のCortex-A55コア×2と最大2.25GHz駆動のCortex-A76コア×4を搭載する8コア(オクタコア)構成で、GPU部分はMali-G78を搭載している
コア Google Tensorと、ライバルとなるプロセッサのCPUコアとGPUコアの基数を比較。ライバルが高効率コアを手厚くしているのに対し、Tensorは高クロックコアであるCortex-X1を多めにしている。ピーク性能を重視している表れだと思うのだが、高機能コアがライバルよりも少し古いことが気になる(この表ではCPU/GPUの実動作クロックやキャッシュメモリの構成は一切考慮していない)

 さらに、Tensorにはプロセッサ内部にセキュリティプロセッサを統合している。Googleでは、自社開発のセキュリティチップとして「Titan M」を開発し、Pixelシリーズに搭載していたが、プロセッサ自身にもセキュリティ機能を搭載することで、セキュアさが求められる処理を安心してこなせるようになった。

 Pixel 6シリーズでは、Titan Mの第2世代「Titan M2」チップもプロセッサから独立する形で搭載されている。セキュリティプロセッサとTitan M2の“二重”のレイヤーによって、ハードウェアのセキュリティレベルをさらに向上している。

独自プロセッサでもアプリの互換性は問題なし

 Google独自のプロセッサと聞くと、アプリの互換性も気になる所だ。結論からいうと、この不安は杞憂(きゆう)に終わる可能性が高い。

 先述の通り、TensorのCPU/GPU部分はArmが開発したコアを採用している。Android端末でよく使われるプロセッサもそれは同様なので、Armコアをターゲットに開発されたアプリなら問題なく稼働する。少なくともSNSアプリやツール系アプリは全く問題なく動く。

 ただし、ゲームアプリだけは少し注意が必要だ。一部のAndroid向けゲームアプリは、Qualcomm製プロセッサに搭載されている独自GPU「Ardeno(アルデノ)シリーズ」でベストなパフォーマンスが発揮されるように調整されているケースがあり、他のGPUを備えるプロセッサだと思ったほどパフォーマンスが出ないことがあるのだ。

 今回、ある意味でAndroidスマホの「レファレンスモデル」においてMali-G78が採用された。それを契機に、同GPUへの最適化を一層進めるゲーム開発者が出てくる可能性もある。少し時間はかかるかもしれないが、期待したい。

 「じゃあ、現在のPixel 6シリーズはゲームに不向きなのか?」と聞かれたら、そうでもない。多くのゲームは普通にプレイできる。Pixel 6 Proで「原神」を試しにやってみた所、普通にプレイはできるものの、120fpsでの動作には対応していなかった。

ゲームをプレイ 独自プロセッサであるが、Armアーキテクチャを採用していることもあり、アプリの実行面で問題が発生することはほとんどない。ゲームアプリもおおむね快適にプレイ可能だ(写真は「Pixel 6」) 「ウマ娘 プリティダービー」(C)Cygames, Inc.

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