独自プロセッサ×音声認識が“文字起こし”に革命を? 「Pixel 6 Pro」全力レビュー(後編)(3/3 ページ)

» 2021年11月01日 20時00分 公開
[石井徹ITmedia]
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Pixel 6 Proスマホとしての使い心地は?

 ここからは、Pixel 6 Proのスマホとしての使用感を早足で紹介していこう。

 Pixel 6 Proの有機ELディスプレイのアスペクト比(縦横比)は「19.5:9」とやや縦長だ。よりの設計だ。パンチホール型のインカメラは11.1メガピクセルと画素数が高め。インカメラの周囲には2mmほどのパンチホール(黒抜き)があり、表示している画面にもよるが、強い存在感を放っている。

 ディスプレイの解像度は1440×3120ピクセルで、画素密度は512ppiと高めだ。細かい文字もくっきりと見えるという点で優秀といえる。最大リフレッシュレートは120Hzで、もちろんHDR(ハイダイナミックレンジ)表示もサポートしている。

 重量は約208gとやや重いが、ディスプレイサイズやカメラの構成から考えると致し方ない面もある。フレキシブル有機ELパネルの採用が軽量化につながったのか、Pixel 6との重量差は少ない。

正面 ディスプレイは1440×3120ピクセルの6.7型有機ELディスプレイ。上部の中央にはインカメラ用のパンチホールがある

 モバイル通信はnanoSIM+eSIMのデュアルSIMに対応しており、5Gと4G LTEでの同時待ち受け(DSDV)も可能だ。

 Pixel 6シリーズは5G通信をサポートしているが、iPhone 12/13シリーズと同様に対応確認が取れたキャリアでのみ、5G通信が有効になる仕組み(ホワイトリスト方式)となっている。11月1日現在、日本において5G通信を利用できるのはau 5GネットワークとSoftBank 5Gネットワークのみとされており、他社(NTTドコモと楽天モバイル)の5GプランのnanoSIM/eSIMを入れても5G通信はできない。他社の5Gネットワークには後日行われるソフトウェア更新によって対応するが、時期は明示されていない。

 日本ではスマートフォンの防水に高いニーズがあるとされているが、Pixel 6シリーズはIPX8等級の防水性能と、IP6X等級の防塵(じん)性能を備えている。水にぬれても安心だ。日本版モデルはおサイフケータイにも対応している。

 充電は30Wの急速充電をサポートし、Qi規格のワイヤレス充電も利用できる。

対応状況 各国における5Gネットワークへの対応状況は、Googleのサポートサイトで確認できる。現時点ではauとソフトウェアの5Gネットワークにのみ対応している

Pixel 6 Proのここが気になる

 Pixel 6 Proを含むPixel 6シリーズには、現時点において「このスマホでしかできない」という機能が複数ある。興味深いスマホであることは確かなのだが、Pixel 6 Proを使っていてどうしても気になるポイントが大きく3つあった。「指紋センサー」「電池持ち」「ストレージ」である。

指紋センサー

 Pixel 6シリーズでは、ディスプレイ内に光学式の指紋センサーを備えている。指をセンサー周辺に当てると強い光が発せられ、それを使って指紋を読み取るという仕組みだ。

 この指紋センサーはロック解除に失敗することが多い。センサーの認識ゾーンが狭いのか、指も当て方によって全然認証が通らないのだ。使っていて一番気になった、言葉を選ばなければ一番使いづらかったポイントである。

指紋センサー 画面内指紋センサーは、認識範囲が狭め。他モデルの画面内指紋センサーと比べても、指の当て方にシビアに思える。今後のソフトウェア更新で改善するのだろうか……?(画像はPixel 6におけるロック画面のスクリーンショット)

電池持ち

 Pixel 6 Proのバッテリー容量は5000mAhと大きめだ。大容量だから電池も長持ち……と言いたい所なのだが、他のスマホと比べてもバッテリーの消費がとても速く感じられる

 100%の充電状態から1日4〜5時間程度使うと仮定すると、満充電から良くて1日半持たせるのが精一杯だった。端末ソフトウェアのブラッシュアップでどこまで改善するのか、これも様子見をしたい所である。

 なお、SNSなどでは発表後、展示機を体験したユーザーの感想で「発熱する」という指摘が散見されたが、実際に使ってみると手で持てなくなるほど発熱することはなかった。ただし、クラウドへ写真をアップロードしたときなど、大量のデータ送信が発生したタイミングで、背面下部、特に左手に当たる部分がほんのりと熱を持つと感じることはあった。手に当たる位置に熱源があるため、発熱しているという印象を強めているのだろう。

 字幕表示からの翻訳機能やカメラ機能では、TPUを活用することで消費電力を抑制しつつ高速なAI処理を行えるようになった。しかし、現時点では電力消費が大きくなりがちなようだ。筆者が試した範囲では、モバイル通信で5Gの境界域にいることが多かったため、そのせいでバッテリーの消費が増えてしまった可能性がありそうだ。

ストレージ

 少し細かいことかもしれないが、Pixel 6シリーズではmicroSDに対応しないことがやはり不安要素である。

 「内蔵ストレージの容量を選べるんだから大きい方(256GBモデル)を買えばいいのでは?」と思うかもしれない。しかし、Pixel 6シリーズではストレージの容量によって選べるボディーカラーが変わってしまうのだ。

 Pixel 6 Proの場合、Google直販の「Google Store」では3色を取りそろえている。しかし、色を選んでみると分かるのだが、「Stormy Black(嵐のようなブラック)」を選ばないと256GBストレージの選択肢が出てこない。要するに、「Cloudy White(雲のような白)」や「Sorta Sunny(幾らかの晴れ)」を選ぶには128GBストレージに“甘んじる”しかない状況なのだ。

 Googleとしては「なるべく端末内にデータを置かずに、どんどんクラウドにアップロードすればいいじゃないか」という考え方なのかもしれないし、それも理解できなくもないのだが、特に≪サイズがどうしても大きくなる4K動画を撮影する人にとっては、ローカルストレージの容量は多い方がよい。「容量を犠牲にしてカラーを優先する」のか、「カラーを犠牲にして容量を取る」のか、選択を迫られることは選ぶ側の立場としてはありがたくない。

選択肢 Pixel 6 Proの256GBモデルを選びたい場合は、Sorta Blackしかカラーの選択肢がない

「革命的なAI体験」を楽しめるスマホ

 Pixel 6シリーズが搭載するTensorチップは「Google独自」とはいえ、CPU/GPU部分はArmからライセンスを受けた設計図をベースに作られている。確かにハイエンドクラスの性能はあるのだが、“独自性”をどこまで発揮できるかは疑問に思っていた読者も多いことだろう。実のところ、筆者もPixel 6 Proを手にするまでそう思っていた1人だ。

 しかし、テキスト文字起こしや翻訳の実用的なレスポンスやその精度、さらに幅広いシーンに対応できるカメラの実力を知って、その考えは改めざるを得なかった。

 米Vergeのインタビューの中で、GoogleはTensorチップの設計に4年をかけたことを明らかにしている。Pixelスマホの初代モデルは2016年10月の発売であるため、シリーズ展開初期の段階から独自チップの必要性に気付いていたということだ。

 その後5世代を経て日の目を見えたPixel 6シリーズは、まさに「Googleが本当に作りたかったスマートフォン」といえる仕上がりだ。

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