2社とも4月以降、解約率が一気に上がり、競争が激化していることもうかがえる。KDDIは、2020年度の解約率が通期で0.71%だったのに対し、第1四半期は0.83%に増加。「外の人(他キャリア)が強く、解約率が上がっていたが、6月以降はUQ mobileを強化し、電気サービスとの連携や固定通信との連携をやり、モメンタムが戻ってきた」(高橋氏)というものの、第2四半期の解約率も0.74%と水準は高い。「より下げなければいけない」(同)というのがKDDIの認識だ。povo2.0のスタートも、こうした動きの一環といえる。
同様にソフトバンクも、2020年度は通期で0.71%に抑えていたスマートフォンの解約率が、第1四半期には1.01%に急増。第2四半期は0.91%に抑えることはできたが、料金値下げによる他社の影響は依然として大きい。ただし、先に挙げた宮川氏の「Y!mobileを強化していきたい」というコメントを踏まえると、ソフトバンクはオンライン専用ブランドのLINEMOではなく、もともと好調だったY!mobileに磨きをかけていく方針のようだ。
実際、ソフトバンクのスマートフォン累計契約数を見ると、1年でY!mobileが大きく伸びているのに対し、LINEMOとLINEMOモバイルは合算で微増、ソフトバンクブランドは純減していることが分かる。料金を下げたいソフトバンクユーザーの受け皿になっていることに加え、他社からユーザーを獲得できているのはY!mobileというわけだ。povo2.0で新しい料金体系にチャレンジするKDDIに対し、ソフトバンクは得意分野をさらに伸ばそうとしているといえる。
方針が大きく分かれたKDDIとソフトバンクのオンライン専用料金ブランド/プランだが、現時点でユーザーの支持が厚いのはpovo2.0といえる。一方のLINEMOは、Y!mobileとの差別化が十分図れていないようにも見える。ショップでのリアルなサポートの有無はY!mobileとLINEMOの大きな違いだが、割引まで加味すると料金差は小さい。さらに「Yahoo!プレミアム」が無料でついたり、PayPayとの連携で還元率が上がったりするのもY!mobileの魅力だ。
こうした点を加味すると、ユーザーがあえてLINEMOを契約する動機が弱くなる。オンライン専用ブランド/プランではいち早く200万契約に達しそうなドコモのahamoだが、これは同社がUQ mobileやY!mobileに相当するサブブランドを持っていないからこその勢い。KDDIがpovo2.0で料金体系を大きく変えたのも、UQ mobileとの差別化を明確にする狙いがあった。裏を返せば、“オンライン”だけではなかなか契約に結び付かないということだ。Y!mobileに注力するソフトバンクだが、LINEMOならではの工夫やサービスにも期待したい。
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