ソフトバンクは、LINEMOの新料金プラン「ミニプラン」を発表した。オンライン特化型の新ブランドとして立ち上げたLINEMOだが、料金プランは他社のオンライン専用“プラン”と横並びの20GB一択で、低容量のユーザーを十分取り込めていないという課題があった。ミニプランを導入することで、ドコモやKDDI、楽天モバイルといったMNOのユーザーはもちろん、もともと低容量の料金プランを得意としていたMVNOのユーザーの流入も見込める可能性が高い。
中でも大手キャリアとしていち早く採用したeSIMのサービスは、トライ&エラーを繰り返しながら満足度を高めてきた。eSIMはオンラインと相性のいいサービスなだけに、今後の伸びを支える基礎体力が向上してきた格好だ。ここでは、LINEMOのサービス開始から現在に至るまでの動向を振り返るとともに、新料金プランの狙いを解説していきたい。
政府の要請に応える形で導入された大手3キャリアのオンライン専用料金プランだが、中容量帯での料金の安さが評価され、各社とも順調に契約数を伸ばしている。ドコモのahamoは、開始から約1カ月後の4月末で100万契約を突破。KDDIのpovoも、5月に開催された決算説明会で、「100万契約が見えてきた」(代表取締役社長 高橋誠氏)と語られている。
対するLINEMOは「ahamoと比べるとまだまだの数字」(常務執行役員 寺尾洋幸氏)とはいうものの、前身であるLINEモバイルと比べると勢いは加速している。寺尾氏によると、「21年度の第1四半期は前年対比で2倍以上と、一定の数字が出ている」という。総務省の統計を元に計算すると、LINEモバイルの契約者数は2020年6月末時点で約97万契約となり、前四半期との差分は7万4000ほど。月平均では2万5000弱の契約者を獲得していた。LINEMOの導入で、少なく見積もっても、この数字が月5万契約以上に伸びていることが分かる。
各社とも、オンライン専用プラン/ブランドではデジタルネイティブの若年層をターゲットにしているが、その狙いも当たっていたようだ。LINEMOは契約者の7割近くが30代以下で、ここが「Y!mobileとの大きな違いになっている」(同)という。店舗数が多く、シニア向けの訴求もしているY!mobileは「人口比より少し年齢層が高い」(同)ためだ。若年層の多いLINEMOと、シニア比率の高まっているY!mobileで、補完関係ができているといえる。
直近ではユーザーの満足度も上がり「30代以下のお客さまは、満足度93.3%まできている」(同)という。こうした満足度を支えているのが、週単位でスピーディーに改善を繰り返す開発体制だ。寺尾氏によると、大小合わせて400項目の改良を加え、契約のフローや契約後の利用環境を見直していったという。手探りで導入したeSIMには、その成果が如実に表れている。
eSIMは、オンラインでユーザー自身が申し込んで設定まで行うため、キャリアにとっては「その場でクロージングできるのがメリット」(同)だ。一方で、ユーザーの知識やスキルの差は大きいうえに、「1から10までの手順を真っすぐやってもらえればできるが、1の次に4をやってしまう人も多い」(同)。設定の仕方などを分かりやすく説明したうえできちんと誘導しないと、トラブルが多発してしまうことになる。「失敗した後のフォローがしづらいのもeSIMの特徴」(同)というわけだ。
導入当初のeSIMは、「APNを設定しろ、プロファイルを入れろ、SIMロックを解除しろ、ネットワーク暗証番号を入力しろと、物理SIMのときに引っ掛からなかったことに、次々と引っ掛かった」(同)。LINEMOでは、SIMロック解除の説明を手厚くしたり、ネットワーク暗証番号の入力やAPN設定、プロファイルのインストールを不要にしたりすることで、こうしたトラブルを解決。開始直後は物理SIMに圧倒的に劣っていたNPS(推奨度)も、「直近の週では物理SIMを超えるようになった」(同)。
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