ミニプランを導入したもう1つの狙いが、LINEモバイルからのマイグレーション(巻き取り)だ。LINEモバイルはもともと、LINEの運営するMVNOとして発足したが、その後ソフトバンクが過半数の株式を取得。LINEMOの導入にあたり、ソフトバンクの完全子会社化になった。回線はドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社から借りているが、LINEMOのサービス開始に伴い、LINEモバイルは新規契約者の受付を終了した。サービス自体は継続しているものの、ドコモやKDDIの回線を借りていることもあり、徐々に契約者を移行させていく必要がある。
一方で、スマホプランしかなったころのLINEMOは、LINEモバイルの受け皿にはなっていなかった。先に挙げた通り、LINEモバイルのユーザーの8割超が3GB以下の料金プランを選択していたからだ。寺尾氏によると、「かなりの数が動いているが、もともと900円や1000円といった料金で契約している方も多く、そこがまだ動いていないのは事実」だという。LINEMOは、ゼロレーティングのサービスがLINEのみで、他社のサービスまで含めていたLINEモバイルとは差分はあるが、通信品質の高さはMNOであるLINEMOに軍配が上がる。料金水準が近づいたことで、移行が進んでいきそうだ。
ただし、LINEMOにはLINEモバイルにあった「SNSデータフリー」や「SNS音楽データフリー」といったゼロレーティングのオプションがない。こうしたオプションを駆使して、データ容量を節約していたユーザーの受け皿にはなれていないというわけだ。そのため、データ容量が近いからといって、LINEモバイルからLINEMOに移行すると、月の途中で通信速度に制限がかかってしまう恐れもある。「SNSデータフリーを選択されている方はそれほど多くない」(同)というものの、LINEモバイルからLINEMOへの移行のハードルになる可能性はある。
LINEとの相乗効果が薄いのも、マルチブランドを推進していくうえでの課題といえる。ソフトバンクやY!mobileは、決済サービスのPayPayと連携しているが、LINEMOにはそういった特典がない。QRコード決済の分野ではPayPayとLINE Payが2022年4月にサービスの統合を予定しているため、そこに向けてLINEMOを連携させる必要が出てくるだろう。「ようやく通信部分の土台ができ、直し(修正)が終わった。次のフェーズとして、LINEとのシナジーをどうするかを考えていく」(同)方針だ。
こうした課題はありつつも、自社で設備を持つMNOが、オンライン限定ながら3GB、990円という料金を打ち出してきたインパクトは大きい。2年契約などの長期契約や途中解約の違約金がなくなりつつあるなか、価格に敏感なユーザーが動く可能性は高いといえる。オンライン専用プランを導入しているドコモやKDDIはもちろん、楽天モバイルやMVNO各社も、何らかの対抗策を打ち出す必要がありそうだ。
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