「20GBだけでは挑戦的ではない」 0円から使える「povo2.0」誕生の秘密を聞く(1/3 ページ)

» 2021年11月22日 14時46分 公開
[石野純也ITmedia]

 基本料を0円に設定し、トッピングである程度自由にデータ容量を買い足していける仕組みを採用したKDDIのpovo2.0が好調だ。同社の代表取締役社長、高橋誠氏よると、前身となるpovo1.0と合わせてユーザー数は100万を突破。povo2.0がスタートしてから約1カ月で、10万契約以上を上乗せすることができたという。povo1.0のころから導入されていたトッピングをメインに打ち出した形で、ユーザーの工夫でさまざまな使い方が可能になるが、povo2.0の魅力といえる。

povo2.0 「povo2.0」では基本料金を0円とし、必要に応じてデータ用量をトッピングするスタイルとなった

 もともとKDDIは、povo1.0の導入前にKDDI Digital Lifeを設立しており、シンガポールに拠点を構えるCircles Asiaと提携していた。目指していたのは、オンラインならではのMVNO。ユーザーがアプリを使って自由に組み立てる料金プランというコンセプトは、そのころからあったものだ。その意味では、むしろpovo2.0の方が原点に料金体系になっているといえそうだ。

 また、買い物をするだけでデータ容量が付与される「ギガ活」も、povo2.0の特徴といえる。現状ではまだまだ対応店舗は限られるものの、ユーザーが増えればマーケティングに使える強力なツールになりうる可能性を秘めている。ここでは、そんなpovo2.0を導入した経緯や、現状の使われ方、ギガ活の今後などをKDDI Digital Lifeの代表取締役社長、秋山敏郎氏に聞いた。

「ギガ活」によって0円で使うことができる

―― povo2.0は、基本料が0円で、トッピングでデータ容量を足していく料金体系になりました。povo1.0とはガラッと変わった格好ですが、なぜこのような形になったのでしょうか。

秋山氏 個人的な思いや事業戦略上の話、マーケティングの話などいろいろな側面があります。povo1.0を3月に始めたときは、お客さまにどう自分の料金プランをコントロールしていただくのかということと同時に、フェアで適正な価格で使っていただくためにはどうすればいいのかということをベースとして考えました。3月に始めたものは20GBを最初から入れた上で、通話はセットにせず、コントロールできる形を体現したものではありました。ただ、究極的には使わないときには払わない、プリペイド型といえばプリペイド型ですが、そちらの形に振り切った方がいいのではないかという思いはありました。

 オンライン型ということで、いわゆるテレコム系企業ではなく、ネット企業ならどうするか。Netflixのようなサブスクリプション型のサービスは増えていますが、一方で、ネットには見ないときには料金が発生しないものはいろいろとあります。チャージして先に払ってから使うという方が、ネット専売には合うのではないか。お客さまが払ったものを使っていくのは分かりやすいということもあり、povo2.0のタイミングでそちらに振り切ることにしました。

povo2.0 KDDI Digital Lifeの秋山敏郎社長

―― 決算説明会では、楽天モバイル対抗というお話も出ました。0円の部分はやはりかなり意識されていたのでしょうか。

秋山氏 競合として楽天モバイルを意識しないわけはありません。あの料金体系は、すごくよくできていると思っています。そこに対して、KDDIとしてエコシステムをどうするか。楽天モバイルは1GBまで無料で多くのお客さまを獲得していますが、われわれが同じようにできるかというと、そうではありません。povo2.0はオンデマンド型で、0円のままだと128kbpsしか出ませんからね。ただ、楽天会員の代わりではありませんが、ギガ活によって0円で使うことができ、これまでの枠を超えた使い方で安くなるようにしています。1GBを超えたら料金がかかるのではなく、遊び心も交えた形にして、われわれなりの新しい料金をご提案しました。

新しい通信事業の在り方とは

―― povo2.0の方が、当初発表していたKDDI Digital Lifeが運営するMVNOにコンセプトが近いように見えます。なぜ最初は20GB一択だったのでしょうか。

秋山氏 一言で言うと市場環境です。われわれもお客さまの期待にこたえなければいけない中で、いきなり斜め上すぎることをやっても落胆されてしまうおそれがありました。当初は20GBという軸があり、分かりやすくご期待に沿ったサービスを提案したのが経緯になります。

―― 直近で100万契約を超えましたが、povo1.0でもそこに近いところまではユーザーを獲得できていました。その意味では順調だったともいえますが、なぜそんな料金体系を大きく変えたのでしょうか。

秋山氏 こういう思い切ったことをやりたかったんです。20GBでそのままいってもそこそこは成長できたと思いますが、あまり挑戦的ではありません。次の時代の、新しい通信事業の在り方とは(povo1.0は)距離があると思っていました。もともと、なぜCircles Asiaとパートナーシップを組んでブランドまで分け、MVNOとしてやることを発表したのかというと、次世代の新しい通信事業に先鞭(せんべん)をつけられると期待していたからです。どんどん変えて、挑戦していかなくてはいけないという強迫観念のようなものは、KDDIのDNAです。いろいろありましたが、ここまで注目していただき、お客さまにも来ていただけました。

povo2.0 povo1.0では20GBプラン1つのみというシンプルな設計にしていた
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