「1プランが柔軟性を損ねていた」 povoが0円+データトッピングに変更した理由

» 2021年09月14日 00時00分 公開
[田中聡ITmedia]

 KDDIが2021年9月下旬から、オンライン専用プラン「povo」を「2.0」にアップデート。基本料金を0円とし、データ容量は必要に応じてトッピングで選ぶ形に変更する。これまでは月額2728円(税込み、以下同)の20GBプラン1つのみを提供していたが、なぜこのような仕組みに変更したのか。

povo 月額0円でデータ通信はトッピングで選ぶ形とした「povo2.0」

 KDDI Digital Life 代表取締役社長の秋山俊郎氏は、「1プランが逆に柔軟性を損ねているのでは」と考えたと明かす。現行のpovo1.0ではデータ通信が20GB一択なので、3GB前後の小容量や、20GBを超える大容量の通信を利用したいというニーズには応えられない。

povo KDDI Digital Lifeの秋山俊郎社長。povo2.0は、KDDI Digital LifeとシンガポールのCircles.Lifeとの協業で実現している(写真提供:KDDI)

 KDDIではさまざまな選択肢を検討したそうだが、「複数プランがあると迷ってしまうこともある」「従量制や段階制も考えられるが、知らないうちに料金が上がっていく」などのデメリットがあると判断。その中で、データ通信の利用スタイルは月で区切ることが必ずしも正解とは限らないと考え、以前から提供していたトッピングに落とし込むことにした。

 そんなpovo2.0のコンセプトは「ゼロから、君のやりかたで。」。文字通りベースプランを0円とし、通話定額だけでなくデータ通信もトッピングで組み立てていく形とした。データ容量が毎月固定されないので、利用スタイルに応じて、毎月のプランを選択するイメージに近い。例えばある月は在宅勤務が中心なので3GB/30日間を選び、別の月は外で仕事をすることが増えるので20GB/30日間を選ぶ、といった変更が柔軟にできる。

povo povo2.0のコンセプト

 さらに、30日単位ではなく、60GB/90日間、150GB/180日間という、より長いスパンで利用できる大型トッピングも用意した。povoでは月末に余ったデータ容量を繰り越す機能がないが、有効期限が90日や180日なら、毎月のデータ容量にムラがある場合でも、無駄なく使いやすくなる。例えば60GB/90日の場合、均等に使うと1カ月あたり20GBになるが、ある月は10GB、別の月は20GB、次の月が30GBという具合に、多少のムラがあってもカバーしやすい。

povo povo2.0で選べるデータトッピング
povo 月に応じてトッピングを変更できる
povo まとめて大容量のデータを購入して、無駄なく使うこともできる

 有効期限が過ぎた後に同じトッピングを自動適用することはできず、都度選択する必要があるので一手間かかるが、データトッピングはpovoアプリから2タップで選択できるよう、使い勝手にもこだわった。

povo トッピングはアプリから2タップで購入できるという

 コンテンツもトッピングで用意する。760円/7日間の「DAZN使い放題パック」と220円/24時間の「smash.使い放題パック」がそれで、KDDIによると、今後も対応コンテンツは拡充していくという。定額サービスは月額課金が多いが、povo2.0ならより短いスパンで課金できるので、「見たいときだけ見る」という無駄のない使い方ができる。さらに、トッピングで購入したコンテンツのデータ通信も使い放題になるので、DAZN使い放題パックに申し込めば、7日間、データ容量を気にせずモバイル回線でDAZNが見放題になる。

 高橋社長はpovoの改定について、「今までの反応はなかなか良かったが、原点から考えて、進化させていかないといけない」と考えたことを振り返る。

povo KDDIの高橋誠社長(写真提供:KDDI)

 「今までの料金プランは、契約を締結いただくところまでフォーカスを当てて、その後は2年間お使いいただければよかったが、契約をしてからお客さまのことを理解して、ずっとアプローチし続けるようなプランにしたい」と高橋氏は続ける。その結果、「0円でスタートして、いろんなトッピングで、いろんなアプローチをして使い続けていただく」形がベストだと判断した。

 高橋氏が「通信会社はどうしても自分で(プラン設計を)やりたがるが、われわれが得意なパートナーとの協業でトッピングを作りたかった」と話す通り、買い物やサービス利用でデータ容量(ギガ)がたまる「#ギガ活」も始める。これも他のサービスにないユニークなポイントだ。

 一方、povo2.0では180日間で一定額の利用は必要だが、そこをクリアすれば月額0円で運用できるため、収益のインパクトが懸念される。しかし高橋氏は「業績への大きな影響は想定していない」という。その理由は、povo1.0ではアクティブに使うユーザーが多かったからだという。「povo2.0も、契約後のトッピングを#ギガ活で盛り上げることで、お客さまに多様な使い方をしてもらうことになり、大きな減益にはつながらない」とみる。

 現在のpovoは90万契約であることも明かされた。これまでのpovo1.0は完成形ではないこともあり、プロモーションはあえて控えていたそうだが、2.0で本腰を入れてプロモーションを行う可能性もありそうだ。

 povoは、政府の強い値下げ要請を受けて作られたといえるプランだが、高橋氏は「事業者同士の競争が、結果的にサービスを良くしていく。こうした原点に気付かせていただいたことは前向きに捉えていきたい」と振り返る。料金競争の手を緩めないことを改めて示した。

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