感圧センサーの操作についても触れたい。AirPods(第3世代)には軸に少し窪んだ部分がある。ここに感圧センサーが備わっており、先述の通り指先でぎゅっと握ることで再生・停止、曲送りなどの操作が行える。これは上位のAirPods Proと共通した特徴だ。
実は、AirPods(第2世代)までの「軸をダブルタップして揺らす」という操作では、一度に割り当てられる操作が限定的だった。ダブルタップ=「再生・停止」、あるいはダブルタップ=「次の曲にスキップ」といった動作を左右の耳に対して、ユーザーがカスタマイズして使う必要があった。
しかし、感圧センサーでの操作なら、1回つまむと再生・停止、2回つまむと次の曲にスキップ、3回つまむと前の曲に戻る、長押しで〜、というように複数の操作がどちらの耳にも割り当てられている。音量調整などはできないものの、たいていの操作が片耳の操作で完結するという点で、便利に感じることは多い。
例えば、通勤・通学電車で音楽を聴いているような場面、「あ、今の曲をもう1回聴きたいな」と思ったときに、感圧センサー対応モデルなら、スマートフォンを取り出さずに耳元の操作で曲戻しができる。ダブルタップのように「周囲から見てあからさまに操作している感」が出ないため、所作もスマートだ。
一方、こういう操作感に価値を感じず、「いつも手元でiPhone開いているからいらない」「Apple Watchでできるから大丈夫」と思う人なら、旧モデルのAirPods(第2世代)を選ぶのも一考の価値がある。
3つ目のポイントは空間オーディオのサポートだ。例えば、Apple Musicを使っている人なら、「空間オーディオ」を検索すると、空間オーディオ対応のプレイリストが表示される。これを対応のイヤフォンなどで聴くと、空間に立体的に配置された音響が楽しめる。また「空間オーディオをApple Musicで」という予告動画も音の配置が分かりやすいコンテンツなので、覚えておきたい。
Apple MusicでDolby Atmos対応楽曲などを集めた「空間オーディオ:ジャズ」プレイリストの画面(写真=左)。コントロールセンターから音量を長押しして「空間オーディオ」のボタンを押すと、オン・オフを操作できる(写真=右)例えば、「空間オーディオ:ジャズ」プレイリストの先頭にあったフレディ・ハバードの「Arietis」という曲を聴いてみよう。すると、ジャズ特有のライドシンバルの音(いわゆる「ライドパターン」)が、宙に浮いていて、まるで手で握れそうな不思議な感覚になる。「あ、ここにベースがいて、ここにサックスがいて……」と手を伸ばしてつかみたくなる感じだ。単にステレオで左右に音が分かれているというわけではなくて、(自分が上下左右に移動しなければ)頭の向きを変えても同じ空間座標から音が聞こえるのが面白い(これを「ダイナミックヘッドトラッキング」という)。目を閉じれば、ジャズ・クラブに来たと妄想しながら楽曲に浸れるかもしれない。
最近のiPhoneのスピーカーなども空間オーディオそのものには一応対応しているのだが、やはりAirPodsシリーズで体感する空間オーディオ×ダイナミックヘッドトラッキングの体験はほぼ別物だと個人的には感じる。これに対応しているのは、AirPods Pro、AirPods Max、そしてAirPods(第3世代)の3製品。もし音楽・映画好きで空間オーディオ未体験の人ならば、それだけでもAirPods(第3世代)を買う価値はあると思う。
この空間オーディオは、決してAppleが用意したサンプルコンテンツだけで楽しめるわけではない。例えばミュージックならば、ドルビーアトモス(Dolby Atmos)対応の楽曲が空間オーディオとして楽しめるように、その裾野は広い。
関連したところで、Dolby Atmosに対応した音楽制作ソフト「Logic Pro 10.7」などを使って、自分で空間オーディオ作りにチャレンジしたいと考えるDTMerにとっても、7万円弱するAirPods Maxを買うより、2万円ちょっとで手に入るAirPods(第3世代)は魅力的に映ると思う。
なお、iOS 15では「FaceTime」が空間オーディオにも対応していることもトピックだ。興味がある場合には、試してみると良いだろう。
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