DAZNの値上げは「成長に必要なこと」 月額3000円でも「競争力ある」と自信

» 2022年01月26日 15時07分 公開
[房野麻子ITmedia]

 スポーツ動画を配信する「DAZN」が、2月22日から価格改定をする。1月25日にメディア向けに開催したラウンドテーブルで、DAZN Japanのキーパーソンが価格改定の狙いや、収益化に向けてさらなる事業拡大への意気込みを語った。

DAZN 2月22日から月額3000円に改定される「DAZN」

価格改定は「成長に必要」「適正価格」

DAZN DAZN Japan エグゼクティブ バイスプレジデントの山田学氏

 既報の通り、2月22日からDAZNの価格が改定される。いつでも契約、退会が可能な「月額プラン」は月額1925円(税込み、以下同)から3000円になる。1年分を一括で支払う「年間プラン(一括払い)」は、1万9250円から2万7000円になる。年間プラン(一括払い)は月額換算で2250円となり、月額プランより25%安い計算だ。また新たに、分割で支払える12カ月間の契約プラン「年間プラン(月々払い)」を追加した。この場合は月額2600円の支払いとなり、月額プランよりも13%安い。

 価格改定の背景として、DAZN Japan エグゼクティブ バイスプレジデントの山田学氏は、ローンチから5年間で大きな投資をし、新規サービスの開発に注力してきたことを説明。同業のスポーツ専門OTTプレイヤーと比較しても、コンテンツ数に関しては「恐らくわれわれが国内においては圧倒的」、価格についても「このコンテンツ量に見合う、かなり競争力のある価格設定になっているのではないか」と自信を見せた。

DAZN 配信コンテンツ数や総ストリーミング時間は順調に伸びている

 質疑応答で「なぜこのタイミングで値上げをしたのか」と聞かれた際に山田氏は、「これからさらに成長を目指していくことを考えたときに、やはりこのタイミングで値上げは必要だという判断に至った」と語った。また、ライブコンテンツ、スポーツ界の著名人も登場するオリジナルコンテンツ、メディアパートナーのコンテンツをそろえているサービスを「総合的に勘案した結果、3000円が適正価格であろうと判断した」とも述べている。

 なお、1カ月間、無料でDAZNのサービスを体験できるトライアルも、料金改定日2月22日の前日で終了する。ただし、山田氏はこれに代わる提案を検討していると語った。

 「DAZNに正式に加入する前に、ちょっとお試しをしたいというニーズに応えられるように、違った形を検討、準備をしています。新しい事業についても、現在いろいろな準備をしています。向こう1カ月、2カ月ぐらいで新たな発表を案内できると思っていますので、楽しみにしていただければと思います」(山田氏)

ローンチ以降、2021年までは投資フェーズ

 DAZN 日本社長&マネージングディレクターの中村俊氏は、2016年のローンチからこれまでの軌跡を振り返った。

 DAZNは2016に立ち上がり、日本では同年8月に世界に先駆けてサービスを開始。今ではドイツ、イタリア、スペイン、カナダ、アメリカなどを含む200以上もの国と地域でサービスを提供し、スポーツメディアとしてほぼ全世界を網羅している。

 全世界での配信コンテンツ数は2016年比で約8.5倍、総ストリーム時間は約10億時間、2016年比で104倍に及ぶ。日本での配信コンテンツ数は1万2000以上に上り、ローンチ当時と比べて約8倍。総ストリーミング時間は約270倍の2.2億時間以上に上り、着実に成長してきた。「明治安田生命Jリーグ」や「プロ野球」といった人気コンテンツを抱える日本は、「スポーツへの興味・関心が高く、テクノロジーも発展していて、全社的にも非常に重要なマーケット」(中村氏)と捉えられているという。

 日本でのサービス開始直後にNTTドコモおよびJリーグとの長期パートナーシップが結ばれ、2017年にはJリーグの全試合ライブ配信が開始された。2018年にはプロ野球コンテンツを拡充し、11球団の試合をライブ配信。2019年春には読売グループと包括提携を結び、読売ジャイアンツの試合配信や、共同でドキュメンタリー番組の制作・配信を行っている。

 同年にはブラジルで行われたコパ・アメリカ2019の放映権を獲得し、サッカー日本代表戦を初めて配信した。2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大がスポーツ業界にも大きな影響を与えたが、その中でもJリーグと契約延長を行い、2021年にはアジアサッカー連盟と長期契約を締結。AFCアジア予選やAFCチャンピオンズリーグの配信を行っている。

 通信会社との協業で料金のキャリア決済も可能となり、より多くのユーザーがサービスを利用しやすくなった。これらの包括的な功績が評価され、優秀なサービスに送られる「Google Play ベストオブ2021」や「Apple App of the Year」も受賞している。近年は、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)を重視し、女性スポーツの配信にも注力していると中村氏は語った。

「オフプラットフォーム」やパートナー事業を強化

 ローンチから2021年までを投資フェーズとしてきたDAZNは、6年目を迎える2022年、さらなるに事業拡大に挑戦していく。グローバルではCEOにシャイ・セゲフ氏、CFOにダレン・ウォーターマン氏が就任。日本でも2021年9月にDAZN Japanのエグゼクティブ バイスプレジデントに山田学氏が就任した。山田氏は、“DAZN Japan 2.0”としてこれからのビジネスを説明した。

 DAZNは、「オンプラットフォーム」として、コア事業であるスポーツ動画配信に引き続き注力しつつも、「オフプラットフォーム」と呼ぶSNSやDAZNのオウンドメディア、パートナーメディアを活用したビジネスを成長させ、さらには、さまざまなパートナーと協業してビジネスを創造していくという。

 「今年(2022年)の秋頃と聞いていますが、totoで新サービスが立ち上がるので、われわれも準備していますし、NFT(非代替性トークン)に関しても検討しています」(山田氏)

 直近では、いくつかの便利機能を追加した。お気に入りチームの試合前などに通知が届く「フォロー」機能や、ゴールシーンなど試合の大事な瞬間をチェックできる「キーモーメント」機能、キーモーメントをアラート設定することで、ゴールシーンをすぐに見ることができる「パルス(ライブ速報)」といった機能が利用できるようになった。また、家族や仲間と一緒にコミュニケーションしながら観戦できる「ウォッチパーティ(グループ観戦)」機能も2021年にローンチしている。

 これらは基本的に試合のライブ配信中に利用できる機能だが、試合前、試合後にもユーザーが楽しめる機能やコンテンツをそろえている。試合前にはDAZN上での特別コンテンツやDAZN SNS上での事前番組を配信し、試合の注目点などを記事や動画で提供している。試合後は専門家による試合のレビューや解説を特別番組として提供している。

 2020年からは本格的に広告事業も展開している。2021年には60社以上のクライアントから出稿があり、事業収益は前年比で3倍の成長を遂げたという。

 「オンプラットフォームのみならず、SNSやパートナーメディアを活用したオフプラットフォームも展開していますので、リーチの広さが好評です」(山田氏)

 2020年12月からは、スポーツバーのような商業施設向けのサービス提供も行っている。2021年末時点で、国内において約1400店舗と契約。成長率は前年比1.4倍となっており、コロナ禍で飲食店が大きな影響を受けている中でも確実に成長している。なお、インターネットカフェにおいては、業界店舗の約60%がDAZNのサービスを採用しているという。

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