NTTドコモから発売された初代「Galaxy S」を皮切りに、日本で約12年間Androidスマートフォンを販売してきたサムスン電子だが、同社の端末は、キャリアを通じてしか入手することができなかった。「Galaxy Z Flip Thom Browne Edition」や「Galaxy Z Fold2 Thom Browne Edition」のようなコラボモデルは、例外的にサムスン自身が取り扱っているものの、通常モデルは、原則としてキャリアモデルとして提供されている。
一方で、MVNOの台頭に伴い、中国メーカーや台湾メーカー、日本メーカーの一部はメーカー独自の販路を開拓。MVNOの一部も、こうした端末を取り扱うようになった。そんな中、サムスン電子が満を持してオープン市場に投入するのが、「Galaxy M23 5G」だ。4月21日の発売に先立ち、同モデルを一足先に試用できた。ここでは、その使用感をお伝えするとともに、サムスン電子の勝機を探っていきたい。
Galaxy M23 5Gは、“オンライン専用モデル”をうたう端末だ。販路は、Amazonに加え、ビックカメラやヨドバシカメラといった家電量販店のオンラインストアに限定される。サムスン電子ジャパンでCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を務める小林謙一氏によると、同シリーズは、グローバルでも「Amazonとニーズを確認しながら開発されたモデル」だという。
スペックとしてはミドルレンジモデルのGalaxy Aシリーズに近いが、よりオンラインでの販売に特化し、ニーズの高い仕様を組み込んだのが同モデルの特徴といえる。日本でも、Amazonでの販路を中心に考え、「通信事業者(キャリア)モデルとは明確に違う」(同)Galaxy M23 5Gを投入するに至った。
小林氏によると、ターゲットは「通信料と端末価格が一体になっていないことを気にしない方」。端末と通信サービスがセットになっていないことの多い、オンライン専用プラン/ブランドやMVNOのユーザーにリーチするための端末といえそうだ。いわゆるメーカーモデルでは、端末のコストパフォーマンスが重視されることが多いだけに、Galaxy M23 5Gも“お値段以上”の機能を盛り込んだ。
1つ目が、ディスプレイだ。同機は6.6型と比較的大型のディスプレイを備えており、解像度はフルHD+だが、1画面に表示できる情報量が多く、動画などを見ても迫力がある。サムスン電子が得意とする有機ELではなく液晶のため、コントラスト比は低いが、チューニングが行き届いているためか、発色などの傾向はフラグシップのGalaxy Sシリーズなどにかなり近づけてある印象だ。
液晶では採用例の少ない、120Hzのリフレッシュレートに対応しているのもポイント。書き換え速度を上げると、そのぶんバッテリーの消費量は多くなってしまうものの、画面をスクロールさせた際の動きが滑らかで、操作感は良好。2つ目の要素として、プロセッサにSnapdragon 750Gを採用しているのも、レスポンスのよさに貢献している。約4万円の端末としては、十分快適な端末といえそうだ。
一般的なキャリアモデルでは、この価格帯で120Hzのディスプレイや700番台のSnapdragonを搭載しているケースは少ない。例えば、120Hzの有機ELディスプレイを備え、Galaxy M23 5Gと同じSnapdragon 750Gを搭載したドコモの「Galaxy A52 5G」は、価格が約6万円。その他のスペックに違いがあるため、価格差を横並びで比較するのは難しいが、メーカーモデルを好むユーザーの趣向に合わせ、基本性能の強化にコストをかけたことがうかがえる。
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