「Galaxy M23 5G」投入のサムスン なぜオープン市場への参入に時間がかかったのか(3/3 ページ)

» 2022年06月10日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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販路の拡大は柔軟に考えていきたい

―― その意味だと、やはり対面での修理受付などがあると安心感があります。Galaxy Harajukuでは手厚いサポートをしていますが、こういったものをもっと広げていくお考えはありますか。

小林氏 本社もエクスペリエンスは非常に重視しています。無線事業部がMX(モバイル・エクスペリエンス)という形になったのも、プロダクトだけでなく、エクスペリエンスを強化したいからです。機能やスペックは基本情報として大事ですが、高額な商品ですし、体験としてどう感動できるのかを見ていただくことは必要だと思っています。

 ですので、Galaxy S22シリーズでも積極的に「Galaxy POP-UP STUDIO」をやっています。リーズナブルな体験施設をたくさん作りましたが、手品のようなナイトグラフィーの体験も喜ばれています。あの「WOW」があれば、だからこのスペックなのかと納得していただける。

Galaxy 最新のGalaxyスマートフォンを体験できる「Galaxy POP-UP STUDIO」を、関東・関西の一部エリアで展開している

 これが、オープンマーケットになればなるほど、購入時にスタッフの皆さんからの“最後の一押し”のような話がないところからスタートせざるをえません。そこは重視していきたいと思っているところです。デジタルの良さは確かにありますが、それだけだとスペックとサイト検索だけでディシジョンを下されてしまうので、いろいろな形でのフォローアップが必要だと思っています。

―― 確かに、オンラインで購入しようとすると、手触りのようなものが分からないため、スペックでの横並びの比較になりがちです。

小林氏 持った感じや手触り、収まりの良さのようなものをどうカタログで伝えるかは、コミュニケーションの部隊が一生懸命やってはいますが、やはり体験が一番ですね。

―― Galaxy M23 5Gはオンライン専用モデルという位置付けですが、店頭販売も増やしていくのでしょうか。

小林氏 同じようなことばかりになってしまいますが、これもお客さまの声や、量販店の売り場の声に素直に耳を傾けていきたいと考えています。この商品はオンライン専用なので絶対に売りません、というようなことは考えていません。そこは柔軟に判断していきたいと思います。

SシリーズやZシリーズの展開はあるのか

―― オープンマーケットに投入する端末ですが、今後、SシリーズやZシリーズなどのフラグシップモデルに広げていくお考えはありますか。

小林氏 ストレートにそういうお話をしているわけではありませんが、キャリアの皆さまと未来志向のお話をしています。日本以外の国だと、スマートフォンと回線は別々というのがスタンダードで、各社とも将来的にはいろいろなことを考えているということを聞きますし、相談もしています。そういった中での流れに沿っていくと思います。

 後はお客さまの声も常にベンチマークしていきたい。自分たち自身で端末を出すということは、もう少しちゃんと研究しなければなりません。ドコモやKDDIに収めているブランド力やマーケティング力、顧客基盤をベースに仕事をするのが主軸である点は変わりませんが、そこをリスペクトしたうえでどうするのかを考えて進めることになると思います。

Galaxy Galaxy S22 UltraやGalaxy Z Fold3 5Gなどのフラグシップモデルのオープン市場への展開も期待される

―― キャリアもオンライン専用ブランドを拡大していますが、一方でpovoやLINEMOは端末を直接的には販売していません。こういったところは狙えるのではないでしょうか。

小林氏 (キャリアの人と話す)将来展望の中で、似たようなお話になることは多いですね。これは、各キャリアのサブブランドや料金プランの将来像をよく見てからです。短期的な利益のために飛びつくのではなく、ウィンウィンな関係にならなければいけないと考えています。

Galaxy M23 5Gが「n79」に対応しないのはなぜ?

―― 仕様面でいうと、Galaxy M23 5Gはドコモの5Gの周波数の1つである「n79」に非対応です。ドコモはn79で5Gエリアを広げている側面があるので、利用しづらい印象も受けますが、この点はどうお考えでしょうか。

小林氏 (5Gが)使えないところがあるという声は認識しています。技術課題として考えていきたいと思っていますが、解決するには、ビジネス要件や環境でクリアしなければいけないところがあります。

―― その意味で、5Gは必要だったのでしょうか。他社を見ると、オープンマーケットにはまだ価格を抑えた4Gモデルも残っています。

小林氏 そこは議論したところですが、最終的には必要ということで全体合意を取っています。5Gはサムスン電子が気合いを入れてスタートした自負もあり、ここはGalaxyのアイデンティティーとしてやるべきであるという結論になりました。

取材を終えて:エントリーモデルにもラインアップが広がるか

 ついにオープンマーケット版のスマートフォンを投入したサムスンだが、どちらかというと実験的な色合いも濃い。Galaxy M23 5Gの結果やユーザーの声を踏まえ、その後の展開を練っていくようだ。小林氏が「石橋が壊れてもいいからたたく」と評していたように、慎重を期していることがうかがえる。Galaxy M23 5Gはどちらかといえば、スペックが高く、コストパフォーマンスに優れた端末(約4万円)だが、オープンマーケットの売れ筋はもう少し安価なモデルが多い。オープンマーケットの端末が、いわゆるエントリーモデルに広がっていくかどうかは注目しておきたいところだ。

 規模を拡大するためには、MVNO回線とのセット販売をする必要が出てくるはずだ。MVNO1社1社は小規模だが、トータルで見ればそれなりに大きな数になる上、回線契約に伴う割引も販売の後押しになる。また、EC比率の低い日本市場の動向を踏まえると、やはり実店舗への展開は欠かせないように思える。MVNOとのセット販売を考えても、主戦場である実店舗は欠かせない。こうした店舗でどう扱ってもらうのかは、今後の課題だ。オープンマーケットへの第一歩を踏み出したサムスン電子の次の一手に期待したい。

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