世界を変える5G

激安スマホも5G対応、中国メーカーへの対抗を強化するサムスン電子山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)

» 2022年05月19日 15時00分 公開
[山根康宏ITmedia]

 世界のスマートフォン出荷台数の順位は1位サムスン電子(Samsung Electronics)、2位Appleと続くが、この下にずらりと並ぶのは中国メーカーだ。LGが2021年にスマートフォンから撤退したことで「韓国勢」と呼ぶ勢力もなくなり、韓国メーカーはサムスン電子1社となった。

中国メーカーがサムスンの地位を脅かすほど成長

 今やXiaomiはAppleどころかサムスン電子の地位を脅かす存在になりつつあり、OPPOとvivoがそのあとに続く。各国で勢いを増すrealme、OPPOとの強力を強固にしたOnePlus、モトローラを擁するLenovo、そしてアフリカなどにTecno、Infinix、Itelブランドで低価格モデルを次々と投入するTranssion Holdings(伝音)、さらには忘れてはいけないHuaweiと、そのHuaweiから独立したHonor、そしてZTEなど、世界のスマートフォンの半数以上を中国メーカーの製品が占めている。

 中国メーカーは新興市場を中心に勢いを増しているが、高性能・高価格なプレミアムモデルではAppleに追い付く製品はまだ投入できていない。このクラスの製品は性能だけではなくブランド力も重要であり、中国メーカーでは唯一Huaweiが対抗できるレベルの製品を展開していた。世界シェア2位とはいえ出荷台数で20%に満たないAppleだけで世界のスマートフォンの利益の半分以上を獲得しているのは、iPhoneのラインアップが「iPhone SE」を除き全てハイエンド製品だからだ。

中国スマホ戦略 Huaweiの「Mate Xs 2」は久々に登場したプレミアムな折りたたみモデル

 一方、中国メーカーはミドルハイレンジモデル以下で次々と目新しい新製品を投入するとともに、エントリーモデルでは圧倒的に低価格な製品を出すことでローカルメーカーを追いやった。インドのMicromaxやフィリピンのCherry Mobileなど、数年前までは格安スマートフォンで自国民から大きな支持を得ていたメーカーも今では勢いを失っている。Xiaomiの「Redmi」やrealmeの1万円台スマートフォンは東南アジアでもメジャーな存在だ。

 LGはまさにこの中国メーカーの勢いのあるラインアップとバッティングする製品を主力としていたため、事業撤退に追い込まれたわけだ。だが影響を受けているのはLGだけではない。サムスン電子は「Galaxy S」シリーズや折りたたみの「Galaxy Z」シリーズはAppleと同じプレミアム市場で互角の争いを行っているが、ミドルレンジ以下では中国メーカーの追い上げを受けている。

 カウンターポイントの調査によると、2021年の東南アジアのスマートフォン市場でサムスン電子は1位を死守したものの、2位OPPOとの差はわずかだった。しかも実は2020年はOPPOがサムスン電子を抜いて1位であった。3位vivoも肉薄しており、サムスン電子が2位以下に圧倒的な差をつけているのはベトナムなどわずかな国にとどまっている。サムスン電子はタイではOPPO、フィリピンではrealmeとトップ争いをしているものの、インドネシアではOPPO、vivo、Xiaomiに次ぐ4位にまで後退した(いずれもカウンターポイント調査から)。

サムスンも低価格5Gスマートフォンの投入を本格的に開始

中国スマホ戦略 東南アジアのスマートフォンシェア。サムスン電子とOPPOが激しい戦いを繰り広げている

 とはいえ、サムスン電子も手をこまぬいているわけではない。中国メーカーは母国である中国の5Gユーザーが8億人を超えており(2022年3月末時点)、低価格モデルも5Gに対応させている。中国では毎月10機種前後の5Gスマートフォンが発売になるほどなのだ。5Gの普及が始まった先進国では中国メーカーの5Gモデルが4Gからの乗り換えや、若年層の最初のスマートフォンとしても人気になっている。低価格モデルの5G対応が当たり前になった今、4Gモデルへの消費者の関心も薄れてきている。

 サムスン電子はミドルレンジを中心とした「Galaxy A」シリーズを手ごろな価格のモデルとして各国で展開している。ちなみにGalaxy Aシリーズは10桁のモデル名の10位の数字が大きいほど高性能モデル、小さいほど低機能モデルだ。

 Galaxy Aシリーズの2021年モデルはGalaxy A02からGalaxy A72まで複数の製品が発売されたが、低価格モデルの「Galaxy A02」「Galaxy A12」は4Gのみ対応で、5Gモデルは「Galaxy A22 5G」「Galaxy A32 5G」「Galaxy A42 5G」「Galaxy A52 5G」「Galaxy A72 5G」とミドルレンジ以上の製品だけだった。しかし2022年モデルは現時点で最も低価格な「Galaxy A13 5G」を2021年12月に早くも発表し、低価格5Gスマートフォンの投入を本格的に開始している。

中国スマホ戦略 200ドル台の低価格5Gスマホ「Galaxy A13 5G」

 Galaxy A13 5GはMediaTekのDimensity 700をプロセッサに採用し、6.5型720×1600ピクセルのディスプレイに5000mAhバッテリーを搭載する。カメラは5000万画素と200万画素(マクロ)、200万画素(深度測定)の3つでインカメラは500万画素だ。価格は249.99ドル、日本円にすると約3万3000円となる。

 同スペックの中国メーカーの製品と比べると、例えばXiaomiの「Redmi 10 5G」は6.58型1080×2408ピクセルディスプレイに5000万画素+200万画素(深度測定)のデュアルカメラを搭載し、他のスペックはほぼ同等で200ユーロ、約2万7000円。Galaxy A13 5Gの方が高価格ではあるものの、サムスン電子のブランドと信頼性を加味すれば競争力はありそうだ。なおRedmi 10 5Gは中国では「Redmi Note 11E」として、またインドではサブブランド「Poco」の名を付けたほぼ同スペックの「POCO M4 5G」が登場するなど、このクラスの製品は5G入門機としてXiaomiにとっても重要なモデルになっている。

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 オンライン販売向けの「Galaxy M」シリーズ、「Galaxy F」シリーズでも、2021年モデルの「Galaxy M22」は4Gモデルだったが、2022年モデルとなる「Galaxy M23 5G」はSnapdragon 750 5Gを搭載したミドルレンジの5G製品となった。Galaxy M23 5Gは主要国の中では日本が早い時期に投入され、XiaomiやOPPOのSIMロックフリーモデルへ対抗しようとしている。

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