「Galaxy M23 5G」投入のサムスン なぜオープン市場への参入に時間がかかったのか(1/3 ページ)

» 2022年06月10日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 サムスン電子が、満を持してオープンマーケットに送り出したスマートフォン――それが、「Galaxy M23 5G」だ。Galaxy Mシリーズは、もともとAmazonでの販売を中心に考え、企画されたスマートフォン。日本でもその枠組みを踏襲し、Amazonを中心としたオンラインに特化した販売を行っている。リアル店舗で取り扱っているのは、サムスン電子自身が運営する「Galaxy Harajuku」だけだ。

Galaxy M23 5G サムスンが初めて日本のオープン市場向けの投入するスマートフォン「Galaxy M23 5G」

 これまでサムスン電子は、キャリアとの取引をビジネスの中心に据えてきた。フラグシップモデルはもちろんのこと、販売のボリュームを増やしているミドルレンジモデル、エントリーモデルも、全て大手キャリアを通じて販売している。夏モデルも、「Galaxy S22」シリーズや「Galaxy A53 5G」はドコモとKDDIのみが取り扱っている。一方で、市場を見渡すと、ほとんどのメーカーがキャリア版とは別にオープンマーケット版を販売するようになった。

 今ではソニーやシャープなどの日本メーカーも、複数モデルを自身で開拓した販路で取り扱っている。ミドルレンジモデルだけでなく、フラグシップモデルを販売するケースも増えた。では、なぜサムスン電子はこのタイミングでオープンマーケット版の販売に踏み切ったのか。他メーカーのように、今後はバリエーションが広がっていくのか。そんな疑問を、サムスン電子ジャパンでCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)を務める小林謙一氏にぶつけた。

オープン市場で必要とされているスマホを分析した

―― 実際に発表、発売してみて、反響はいかがでしたか。

小林氏 ITmedia Mobileの記事をはじめとして、さまざまな方に取り上げていただけました。新聞の経済面にも載るなど、思わぬところからの反響もありました。お客さまからはもちろん、業界内やメディアからの反響も大きかったですね。(販売状況は)ある程度予測していた数値の範囲内で動いていますが、そうは言っても、発表会以降、主だったマーケティング活動をしていません。取りあえず打ってみて、どのぐらいのパフォーマンスが出るのかというところから始めています。会社としてこれまでにやったことがなかったビジネスなので、どのぐらい売れれば成功なのかがよく分かりませんが、そのためにもAmazonと組み、いろいろとチェックをしているところです。

Galaxy M23 5G サムスン電子ジャパンの小林謙一CMO

―― まだ初速という段階だと思いますが、次につながりそうでしょうか。

小林氏 いろいろな意味があります。1つはオンラインという市場です。キャリアともお話はしていますが、オンラインは強めることはあれ、弱めることはない重点市場です。その中で、いろいろな形でスマートフォンを提供する機会を作るのは、やっていくべき方向性です。これが売れなかったのでやめます、ということは多分ありません。

―― 初号機として発売されたGalaxy M23 5Gですが、なぜこのモデルだったのでしょうか。

小林氏 当たり前ですが、さまざまなマーケットリサーチをしてきました。オープンマーケットでどういうスマートフォン必要とされているのかを、よく分析したのが一番の理由です。また、自分たちが既にお仕事をしているキャリアに投入しているポートフォリオを崩すのは、得策ではないと考えました。

 私が入社する前からSシリーズやAシリーズの投入も検討はしていたようですが、プロコン(メリットとデメリット)を見ても、あまり得策ではない。逆に、Mシリーズはもともとオンライン専用モデルとしてスタートしています。そういうモデルがあるという話から始まり、その製品を研究し、お客さまのニーズを見ながらプライスも考え、Galaxy M23 5Gに決定しています。

―― SシリーズやAシリーズという選択肢も検討したんですね。

小林氏 最初からSシリーズやAシリーズありきで検討したのではなく、そもそもオンラインの市場やオープンマーケットで端末を買われるのはどういう方なのか、というところからスタートしました。端末ありきではなく、お客さまのニーズありきで、そこに何が当てはまるのかを考えました。

―― そのニーズとは、やはりコストパフォーマンスということなのでしょうか。

小林氏 反響が物語っていますが、Galaxyで初めてのオープンマーケットモデルを出すときに、安かろう悪かろうではやってはいけないと思っていました。プライスもギリギリでこれぐらい、バッテリーも5000mAh欲しい……といったところを1つ1つ見ていきました。結果として、フラッグシップモデルではありませんが、市場のニーズの中、ある程度ハイエンドに近いところに落ち着きました。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年