Xiaomiのスマホ投入が2021年よりも「慎重」な理由 楽天モバイルとは「DNAが非常に似ている」(3/3 ページ)

» 2022年06月13日 16時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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ユーザーの声を受けて、当時はあり得なかった6000mAhバッテリーを搭載

―― 海外でも同様の取り組みをしていると伺いましたが、成功事例を教えてください。

ワン氏 私はインドに1年勤務したことがあります。日本とインドでは、消費者のユースケースがかなり違う。現地事情として、家の中にテレビやPCがないケースが多々あり、そういった方にとってはスマートフォンが唯一のスクリーンになっています。インドでもファンミーティングに参加しました。その時にはバッテリー容量を4500mAhにしようか5000mAhにしようか決めかねていたので、意見を伺いました。一致していたのは、できるだけ大容量がよく、そのぶん厚みが増すのは気にならないという意見でした。これには2、30人のファンが全会一致で賛同していました。

 この結果を受け、最終的には6000mAhのバッテリーを搭載したスマートフォンを発売することになりました。これが好評で、他のメーカーも後追いをし、バッテリー容量が3000mAhから4000mAh、最終的には6000mAhへと上がっていきました。最初に本社に報告した時には、「お前は頭がおかしいんじゃないか」と言われましたが(笑)、結果としては大成功でした。

―― 確かに、インドでは大容量バッテリーを搭載した端末が好まれるという話は聞いたことがあります。

ワン氏 それを最初にやったのがXiaomiです。ですが、当初はとっぴなアイデアだと思われていました。これは他社もそうかもしれませんが、6000mAhのバッテリーを作りたいと言っても、本社や工場がすぐに受け入れられるわけではありません。当初は、「モバイルバッテリーが作りたいのか」と返されてしまいましたから。これがまさに、ファンとの交流で得られるもので、ファンミーティングの醍醐味(だいごみ)です。ファンと距離を置き、オフィスの中でああでもない、こうでもないとやっていると、みんなが望まないものができてしまいます。

 モノ作りには2つのパターンがあります。1つはきちんと意見を吸い上げ、みんなが望むものを提供すること。もう1つは、Appleがやっているように、消費者が気付いていない潜在的なニーズのあるものを、メーカー側が教えるやり方です。どちらのパターンにも属さない、中途半端なやり方が一番よくないと考えています。

―― ちなみに、4500mAhと5000mAhの選択肢を出した結果が、なぜ6000mAhだったのでしょうか。選択肢以上の数値になっているような気がしますが(笑)。

ワン氏 そこで、「なぜ選択肢が5000mAhまでなのか」と聞かれたからです。単純なアンケート調査だと、4000、4500、5000と数字を並べて、そこから選ぶことになりますが、実際にお話をすることで本当のニーズを掘り起こせます。もちろん、いただいた意見を全て製品に反映できるわけではありません。実現可能なのかどうかや、どの販路で売れるのかといった調査は付随して行わなければなりません。

―― ファンミーティングをサービスに反映するという点では、MVNOのmineoが近い取り組みをしています。サービス化する際には、機密保持契約を結び、一部経営情報を開示しているパターンもありますが、Xiaomiの場合はどこまで踏み込むのでしょうか。

ワン氏 どこまでやるかは目的によって異なりますが、1回目、2回目に関しては、リラックスできる場を設けて、まずはXiaomiを知っていただきたい。手始めに、簡単なことからやっていきます。また、発売前の新製品のβテストをしていただくことも考えています。

 他にもいろいろなアイデアがあります。もう少しコロナが落ち着いたら、本社に来ていただくこともできます。そうすれば、機密情報も開示できます。50なり100なりのデザインを見ていただき、どういったものが日本市場に合うのかといった意見を求めることもできると思います。

―― ここには安達さんも関わっていくということですね。

安達氏 僕もまず中国に行きたいのですが(笑)。今回の取り組みには積極的に関わり、ユーザーといい製品を作っていきたいと考えています。スティーブンがお話ししたようなバッテリーに関するインサイトをいただいたり、カメラに対するユーザーの視点を教えてもらったり、われわれが想像していなかった使い方をしている方もいると思います。どのように製品をお楽しみいただいているのかといった情報も参考になります。仮に1つの商品パッケージとしてアウトプットができなくても、そこには価値があると思っています。

ライカとは深いレベルでの技術交流をしたい

―― 熱心なファンだと、とにかく中国で売っているハイエンドモデルを全部出してほしいという声もあると思います(笑)。

ワン氏 そういった声があるのは把握していますが、コストバランスがあり、いろいろな要素を考えなければなりません。ユーザーの希望に合わせて、好きな機能を組み合わせたスマートフォンを出すというのはさすがに難しい。ただ、社内でどちらがいいかを決めかねているときには、ぜひ消費者の意見を参考にしたいと考えています。

―― 最後に、Redmi Note 11 Pro 5GともXiaomiモノ作り研究所とも関係がない話ですが、先日、ライカとの協業をグローバルで発表しました。現時点で何かお話しできることはありますか。

ワン氏 ライカとの取り組みは、単に名前を印字するといったレベルのものではなく、深いレベルでの技術交流をしたいと考えています。協業は、R&Dレベルでのパートナーシップだからです。ライカは長い歴史のある企業で、カメラのチューニングには豊富な経験があります。カメラに関する実力は、誰も知るところでしょう。

 そんなライカがわれわれと組んでどんなメリットがあるのか。われわれはテクノロジーの会社で、AIやソフトウェア、チップセットに力を入れています。コンピュテーショナルフォトグラフィーに関しても、われわれの方が知見はあると思っています。ですから、ライカとはウィンウィンの関係を構築できると考えています。カメラの機能をさらにグレードアップできることを期待しています。

取材を終えて:熱心なファンの周辺ユーザーをどう巻き込んでいくか

 2021年1年間を通して、日本市場を学習したというXiaomiだが、その経験を生かし、2022年はラインアップをより売れるものに絞り込んでいくという。Redmi Note 11シリーズが4機種中2機種なのもそのためだ。とにかく出場機会を増やして打席に立つのが2021年なら、2022年は打率を上げる取り組みをしているといえる。楽天モバイルでの販売も始まり、販路は着実に広がっている。

 ユーザーミーティングに近い位置付けだが、Xiaomiモノ作り研究所を通じて、どのような製品が登場するのかも楽しみだ。いち早くFeliCaや防水に対応できたXiaomiには、こうした声に応えるだけの技術力やリソースもある。日本での販売数に対して応募数が多いのは、ファンマーケティングを徹底してきたXiaomiならではだ。

 ただ、より広い層に訴求する上では、これまでXiaomiの製品を手に取ったことのないユーザーの視点も大切だ。絵文字や写メールなどをはじめとする日本発のケータイ文化は、必ずしも特定メーカーの熱心なファンから生まれたわけではない。熱心なユーザーを集めつつ、その周辺をどう巻き込んでいくのかは、将来的な課題になるかもしれない。

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