Xiaomiのスマホ投入が2021年よりも「慎重」な理由 楽天モバイルとは「DNAが非常に似ている」(2/3 ページ)

» 2022年06月13日 16時00分 公開
[石野純也ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

楽天モバイルを契約しているXiaomiユーザーが多い

―― 楽天モバイルでの販売が決まった背景を教えてください。他のキャリアから販売されている端末は、もっと独自のカスタマイズが施されていますが、今回はほぼオープンマーケット版と同じです。その差はどこにあるのでしょうか。

ワン氏 なぜ協業を始めたかというと、楽天モバイルとXiaomiは、DNAが非常に似ていると思っていたからです。2社とも非常に効率やコストパフォーマンスを重視します。お客さまを中心に据えている点も同じです。もう1つ共通点としてあるのは、2社ともチャレンジャーであるということです。楽天モバイルはキャリア、われわれはスマートフォンやハードウェア業界で、それぞれチャレンジをしています。

 どのようなカスタマイズを施すのかは、両社の製品チームが協議をしながら決めています。他と比べ、差分があるのはいいことです。差分があるからこそ、競争が生まれるからです。他社と同じようなものを作っていては、われわれを選ぶ理由になりません。両社で一緒に作るとなった際に、最もコストパフォーマンスのいいミドルレンジのスマートフォンにするということを目標にしました。

 為替が変動し、円安が進む中、他のメーカーは値上げに踏み切っていますが、われわれと楽天モバイルは何とかコストパフォーマンスの良さを際立たせる値段に据え置くことができました。これは、両社の企業努力で実現したことです。

Xiaomi 楽天モバイルでは市場想定価格よりも安い4万2980円(税込み)で販売。MNPなら2万ポイントの還元も受けられる

―― 一方で、オープンマーケットで購入した端末に楽天モバイルのSIMカードを挿すこともできます。楽天モバイル自身が取り扱う意義はどこにあるのでしょうか。

ワン氏 楽天市場は非常に競争力のあるECで、十分なメリットを生かせると考えています。ECは楽天にとってもそうですが、Xiaomiにとっても得意とする分野です。われわれと楽天モバイルそれぞれで販売に取り組んでいますが、お互いにイベントを開催するなど、それぞれのペースで製品を盛り上げていきたい。それによって、消費者がさまざまな価値を得られるからです。例えば、楽天モバイルを通じて契約すれば、ユーザーはSIMカードにひも付く端末購入補助を得ることができます。

 実は1世代前の販売データを見ると、かなりのお客さまが楽天モバイルのSIMカードを契約していました。楽天モバイルのお客さまが、オープンマーケットで製品を買っていたということです。ですから、SIMカードとスマートフォン本体をバンドルする販売手法は、きちんとユーザーに価値を届けられると信じています。

安達氏 楽天モバイルはECだけでなく、リアルな店舗も重視して、日本郵政との協業もしています。これは、われわれが今までリーチできなかった方々に、Redmiブランドを直接ご紹介できるチャンスです。リアルな場があるのは、お客さまにとっては非常にありがたいことです。

ワン氏 私自身、Twitterや価格コム、Amazonなどのレビューを全て読んでいますが、投稿している購入者は、楽天モバイルを契約していることを表明するケースが非常に多い。Rakuten Linkに対応してほしいという声もありました。こういう要望には応えたいと思っていますし、(協業することで)楽天モバイルのネットワークで使う際に、より使いやすくなるというメリットがあります。このために、4、5カ月間かけ、アンテナのチューニングもしています。

―― そのチューニングは、オープンマーケット版にも施されているのでしょうか。

ワン氏 オープンマーケット版にも反映されています。これは、経験の蓄積です。これまでも、KDDIやソフトバンクで発売する製品のためにチューニングを施したことがあり、そのノウハウは製品に蓄積されています。今回は初めて楽天モバイルとIOT(相互接続性試験)のチューニングを行いました。それは、楽天モバイル版とオープンマーケット版のどちらにも反映されています。

―― あと蓄積しなければいけないのは、ドコモのノウハウですね。

ワン氏 ドコモに関しては、n79(5Gの4.5GHz帯)がネックになっています。作るとすると、製品を一から設計しなければならないからです。共通で使用している部品がそのまま使えないのが難しいところです。

―― 価格に関してですが、いわゆるボリュームゾーンはもう少し低い価格帯だと思います。勝算はどの程度あるのでしょうか。

ワン氏 確かに価格に関しては、昨年の端末ほどギリギリを攻めているわけではありません(Redmi Note 11 Pro 5GはAmazon.co.jpで税込み4万4800円)。しかし、この価格帯は、今月(取材を実施した5月)のマーケットにとっての「新しい現実」だと思っています。為替の変動が激しく、さかのぼると3月も4月も円安が進んでいたからです。その後にオープンマーケットで発売した製品は、新しい為替を元に価格が決められます。以前の為替で価格を決めた旧モデルと比べて、実質的には20%ぐらいの差があります。来年(2023年)になって振り返っていただければ、コストパフォーマンスの良さが分かるのではないでしょうか。

Xiaomiモノ作り研究所には想定以上のユーザーが応募

―― 次に、Xiaomiモノ作り研究所について伺います。現時点(インタビューは5月26日に実施)で、応募数はどのぐらいになりましたか。

安達氏 5月19日の夕方にTwitterで発表し、その日のうちに200人を超える方から応募がありました。一夜明けた翌日には、応募者数が500人になっています。この後、再度告知をさせていただきますが、当初の締め切りまでには、期待を大きく超えた人数の方に応募いただけることになると思います。これから、皆さまの熱い思いを拝見させていただきます。1つ1つにしっかりと目を通り、どういった形で取り組むかを検討していきます。

ワン氏 予想を上回る人数の方に応募していただけました。イベントは、オンラインとオフラインの2種類に分けようと思っています。全員にお会いするのはさすがに現実的ではないので、オフラインは熱心な方に限って開催しますが、オンラインイベントは全員にご参加していただけるようにしたいと考えています。毎月もしくは四半期ごとに開催する予定ですが、こういった活動は継続していくことに意義があると思っています。

Xiaomi ユーザーの声を集めて製品作りに役立てるイベント「Xiaomiモノ作り研究所」を発足させる

―― 狙いは、ユーザーの声を集めることでしょうか。

ワン氏 はい。どんな製品でも、発売するたびに会社の中ではさまざまな意思決定をします。どんな製品なのか、どんなカスタマイズをするのか、どのぐらいの価格にするのか。どういった販路で販売するのかといったことも含め、10カ月から1年前に決定していきます。不確定要素も多いのですが、直接ファンの方と交流することで、意見を直に伺うことができます。声を聞くことで、正しい意思決定ができるようになります。

 逆に、なぜ他のメーカーがこういったことをやっていないのかが不思議でなりません。われわれと実際のユーザーでウィンウィンの関係が築けますからね。われわれが多くの情報を得られるだけでなく、消費者にブランドを知ってもらうこともできます。ユーザーに参加してもらえる取り組みは有意義であると考えています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年