―― 5G SA対応をうたっていますが、ドコモはまだコンシューマー向けのサービスを開始していません。ハードウェアとしては対応しておき、ドコモが始めた段階で対応するということでしょうか。
石田氏 基本的にはそういった可能性を含めて考えています。TONE e22にはeSIMが入っていますが、そのとき(5G SA対応するとき)にはOTAでeSIMのプロファイルを入れて対応するということもできます。ファームウェアのアップデートは必要になりますが、ハードウェア的には対応しています。
―― eSIMはそのためだったんですね。とはいえ、現時点ではまだトーンモバイルとしてeSIMを提供していません。これはいつ頃の予定でしょうか。
石田氏 機種変更した場合や、端末が壊れて再購入した場合のフローを含めて考えていかなければなりません。われわれのユーザーに、それがどこまで分かるかというのもあります。今、EIDの仕組み(ドコモのeSIMは、MVNOも含め、EIDと呼ばれるeSIMの識別番号をユーザー側が登録する必要がある)も含め、全てZEN(トーンモバイルの端末を自動設定する仕組み)の中でやろうとしていますが、ドコモと接続するAPIの中で、調整しなければいけないことが残っています。その辺まで自動化できれば、最もスムーズになります。
MVNOがeSIMを使えるようになったのは、すごく大きなことです。われわれも準備はしていました。われわれにとってSIMカードの在庫がなくなるのはすごくありがたい。2300店で店頭在庫を持つのは、結構厳しいところがありますからね。
―― MVNOとして、5Gのメリットはどのようなところにあると見ていますか。
石田氏 われわれは低レイテンシ(遅延)に特化しています。アプリケーションとしては、IP電話やメッセンジャーがあり、TONE Careという遠隔健康相談のサービスでも、低遅延が生きてくると思います。
―― MEC(マルチアクセス・エッジ・コンピューティング)を入れないと、無線区間だけではあまり低遅延にならないという話もありますが、いかがですか。
石田氏 ただ、IP電話を見ていると、結構違いがあります。小さなUDPのパケットがたくさん流れるものは違いが出ていて、通話がよりスムーズになる。5G SAになって、スライシングのようなものが入ってくるのは楽しみです。IP電話では、広帯域の電話というようなものもあり得ると思います。YouTubeで中継する方や、Instagramでライブをする方も増えていますし、スマホのマイクもどんどん性能がよくなっています。電話というとちょっと違うのかもしれませんが、そういったものもあると思っています。
―― TONE Laboは無料で提供していますが、この狙いを教えてください。このサービスは、無料で続いていくものなのでしょうか。
石田氏 将来、実証実験が終わった段階で有料にする可能性はあります。ただ、あれがそのまま有料になるのではなく、有料サービスとして別のものを立ち上げていきます。
ただ、TONE Laboの中にも、今後、いろいろなものが加わっていきます。例えば今は健康相談ですが、保健医療までやりたいという話もあり、そこまでいければと考えています。われわれが目指しているのは、健康相談が来たときにセンサーで取った情報を使うことで、ある程度の予測ができるというものです。今はシニアやお子さんのゲーム依存に特化していますが、これもデータがあるだけで全然違う。移動情報も、どのぐらいの強度で移動したかというような情報は、健康相談の際にパーミッションを得て取得しています。
―― とはいえ、端末の割引まで提供しています。これは採算が取れるのでしょうか。
石田氏 割引は実証実験に参加していただける母数形成が目的で、フリービット全体としては、インキュベーション(事業の立ち上げ支援)のゾーンに入っています。1モニターの獲得コストだと考えれば、十分採算に合います。
―― 逆に言えば、2万1780円だと端末としての利益は出ないということですね。
石田氏 定価であれば利益は出ますが、2万1780円だとほぼ利益は出ないですね。ここはドコモも本当に驚いていたところです。
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