2021年12月にNTTドコモのエコノミーMVNOに加わったトーンモバイルの「TONE for docomo」だが、これまではiPhone専用SIMカードの提供にとどまっていた。一方で、トーンモバイルは、設立当初から垂直統合型のビジネスモデルで、端末から通信サービスまでを一手に手掛けてきたMVNOだ。サービスをネットワーク側に寄せることで、部分的に自社開発の端末に近い見守り機能を提供していたが、そこには限界もあった。
その状況が、2月24日から大きく変わる。エコノミーMVNOの枠組みの中で、同社が開発した「TONE e21 rev.2」を取り次ぎ販売するためだ。自社開発のAndroidスマートフォンを販売することで、トーンモバイルはエコノミーMVNOでも、フルサービスの提供が可能になった。中でも、Android端末のみに実装されているシニア向けのサービスが利用できるようになるインパクトは大きい。狙うのは、3Gのフィーチャーフォンを使うユーザーだ。そのインパクトを考察していきたい。
フリービット傘下のトーンライフスタイルは、2月24日からドコモのエコノミーMVNOで端末の取り次ぎ販売を開始する。発売するのは、トーンモバイルが2021年4月に導入したTONE e21。最新のソフトウェアを一部先行適用しながら、dポイントなどのサービスに対応したバージョンで、同社はこれをTONE e21 rev.2(レビジョン2)と名付けている。ドコモショップでドコモ以外の端末を販売するのは、異例といっていいだろう。
ただし、上記のように、ドコモショップはあくまで販売を取り次ぐだけだ。ドコモショップにはTONE e21 rev.2の実機が展示されるものの、ユーザーがその場で購入し、持ち帰ることはできない。端末は、申し込みをしたユーザーのもとに宅配で届けられることになる。ドコモショップ全店で在庫を抱えるのはリスクが大きく、管理も煩雑になるためだ。
フリービットの代表取締役社長CEO兼CTO、石田宏樹氏は「在庫を最適化した形で、(ドコモショップ)2300店舗のレバレッジを効かせることができる」と、この方式のメリットを語る。その場に端末がないと、店舗で初期設定のサポートができないが、TONE e21 rev.2には、契約者情報に基づき「年齢やスキルに合わせて端末を自動で設定する」(同)機能を搭載。追加の設定が必要な場合は、ドコモショップを再訪してサポートを受けることもできるという。
端末を自社で開発し、サポートも行ってきたトーンモバイルだが、「2300店舗(という膨大な数の販路で)でものを販売した経験はない」(同)。エコノミーMVNO以前と比べ、販路が24倍に増えたこともあり、在庫管理やサポートの負荷を軽減するため、「在庫を1カ所に集約し、そこから配送して自動設定やショップで対応する仕組みをドコモと一緒に編み出した」(同)という。
その場で販売できないことで販売の機会を逃してしまうケースもありそうだが、端末の取り扱い店舗数が一気に24倍に増えたインパクトは非常に大きい。仮に1店舗で10台販売するだけで、端末の販売台数は2万3000台を超えるからだ。拡大に備え、トーンモバイルでは「始めるにあたって、前もって増産をかけた」(同)という。9980円(税込み、以下同)という破格の安さを実現できたのは、そのためだ。TONE e21の元値である2万1780円の半額以下に引き下げられた格好で、ユーザーにとって買いやすい端末になったといえる。
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