インタビュー
» 2022年01月14日 06時00分 公開

「最初は半信半疑だった」 フリービット石田社長に聞く「トーンモバイル for docomo」の狙いMVNOに聞く(1/3 ページ)

NTTドコモのエコノミーMVNOに、2社目となる「トーンモバイル for docomo」が加わった。「TONE for iPhone」と呼ばれる料金プランを用意し、スマートフォンを初めて持つ子どもをターゲットに設定。当のトーンモバイル自身も、ドコモから声がかかった当初は半信半疑になるほどの意外性があったという。

[石野純也,ITmedia]

 NTTドコモのエコノミーMVNOに、2社目となる「トーンモバイル for docomo」が加わった。トーンモバイルは、子どもやシニア世代に特化したMVNOで、独自の見守りサービスに磨きをかけ、他社と明確な差別化を図ってきた。エコノミーMVNO向けには、「TONE for iPhone」と呼ばれる料金プランを用意し、スマートフォンを初めて持つ子どもをターゲットに設定。料金も従来のiPhone用サービスから大幅に値下げしている。

トーンモバイル for docomo 「トーンモバイル for docomo」が2021年12月22日からドコモショップで提供されている

 独自路線を貫いてきたMVNOなだけに、トーンモバイルのエコノミーMVNOへの参画には業界関係者からも驚きの声が挙がっていた。当のトーンモバイル自身も、ドコモから声がかかった当初は半信半疑になるほどの意外性があったという。一方で、ドコモの展開する既存のサービスとトーンモバイル for docomoを比べると、ターゲット層からサービス内容まで、きれいにすみ分けができていることが分かる。

 ドコモは充実した見守りサービスを、トーンモバイル側はドコモショップの販路やサポートを手に入れられるため、この取り組みは相互補完的といえる。ただ、トーンモバイルは本来、独自の端末で垂直統合的にサービスを手掛けてきたMVNOだ。そんなトーンモバイルが、トーンモバイル for docomoではiPhoneのみのサービスになった点には疑問も残る。今後、独自端末の展開はあるのか。トーンモバイル for docomoの狙いや将来展望を、フリービットの代表取締役社長CEO兼CTO、石田宏樹氏に聞いた。

エコノミーMVNOの手数料で悩むことはなかった

―― フリービットのエコノミーMVNO参画には、意表を突かれたユーザーも多いと思います。まずは、なぜこの取り組みが実現したのかを教えてください。

石田氏 2018年に作ったトーンモバイルの中期経営計画で、3年間で(サービスの)オープン化をするということを進めていました。という動きの中、総務省の(料金値下げ等の)話もあり、2020年12月に発表されたエコノミーMVNOの情報が相互接続を担当している部門経由で入り始めてきました。トーンモバイルがドコモの条件を満たしているのか――(サービス内容は)かなり変わっていますし、スペックシートでは並べられない特徴がありますが、本当にエコノミーMVNOに入れるのかはかなり折衝を重ねました。

トーンモバイル for docomo フリービットの石田宏樹社長

―― 金額などのスペックだけで横並びにならないところが、むしろよかったのではないでしょうか。

石田氏 外側から見るとそうですね。ドコモにあるプランとかぶらない金額や容量が求められてきます。建て付けとしては、MVNOが自由にしていいということになってはいますが、ドコモショップで店員がこういうお客さまにはこれをお勧めできるということがきれいに整っていないと、2300もの店舗をコントロールできません。分かりやすいことが必要になります。

―― その意味では、対象ユーザーがはっきりしていて分かりやすいですね。ただ、MVNOの中には、コスト面を懸念する会社もあります。

石田氏 トーンモバイルの場合、Web広告などの“空中戦”で認知を取った上で、ほとんどの方が店舗で指名買いをしています。そのため、もともと、店舗へのインセンティブがビジネス構造に組み込まれていました。そこからすると、(エコノミーMVNOの手数料は)妥当な金額だと思っています。その部分では悩むことはありませんでした。

―― 結果として、ショップが23倍になるというのは、かなりインパクトが大きいと思いました。

石田氏 面が広がりますからね。CMのような空中戦がしやすくなります。地域、地域でCM枠を買っていかなければなりませんが、コンバージョンするポイントが増えるのは大きいですね。お近くのドコモショップに行けばいいからです。

トーンモバイル for docomo ドコモショップの2300店舗が加わることで、トーンモバイルの取扱店舗が一気に拡大する

―― 一方で、サービス内容の独自性が高い分、ショップスタッフの教育は大変だったのではないでしょうか。

石田氏 バックエンドのチームは、もともと1400店舗のTSUTAYAに展開する計画を立てたときに準備を済ませていました。TSUTAYAのプロジェクトや、カメラのキタムラのプロジェクトで、モバイルを販売していなかった人への教育プログラムはできていました。そこは、入りやすかったですね。

なぜiPhone専用SIMからスタートしたのか

―― 冒頭のお話で、声をかけられたのが2021年の頭ということですが、発表されたのは10月に入ってからです。その間は、どのような検討をしていたのでしょうか。

石田氏 正式に検討を開始したのは、もっと後のことです。本当にやれるのかどうか、半信半疑なところもありましたからね。セキュリティ基準など、かなりハードルが高いところもありました。技術的には完全内製なので、すごい勢いでやってきましたが、仕様を決めるのには時間がかかりました。すり合わせのところです。今回は別会社(トーンライフスタイル)でやっていますが、人材のところまで、きちんとコミュニケーションを取れるような形で動かなければなりませんでした。

―― 石田さんにとっても、声がかかったのは意外だったということでしょうか。

石田氏 はい。ビックリしました(笑)。そういった狙いはありつつ、システムは作り込んではいましたが、(エコノミーMVNOが実現しなかった場合に備えて)端末だけをトーンモバイルで用意し、ドコモのSIMカードで動かすというような折衷案も考えていました。通信料が値下げされてくれば、そういうものの上でトーンモバイルの端末を動くようにしてもいい。回線自体の利益より、他のサービスでの利益の方が大きいところがあるからです。そんな状態だったので、まさか丸ごとトーンモバイルを販売してもらえるとは思っていませんでした。意外でしたね。

―― エコノミーMVNOではTONE for iPhoneが販売されています。iPhone向けのサービスとしてスタートしたのは、なぜでしょうか。

石田氏 われわれの完全解は、端末まで含めてサービスを作っていくことで、そうではないところで、iPhoneの向けのSIMがありました。エコノミーMVNOの仕組みをスタートさせるということは、マーケットにもお約束していました。ただ、サービスインまでの時間が比較的タイトだったので、「iPhone専用でいいんですか」というところからお話をさせていただきました。

 iPhone用のSIMは、最初はMDMを使って制御をしていましたが、レギュレーション的にグレーということで、VPNを経由したものに切り替えました。そこがなかなか完全に動くところまでいかなかったので、2年がかりで「TONE SIM 5.0」を開発していました。これによって、フレキシブルにVPNを構築できる形になりました。その意味では、タイミングがよかったといえます。

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