au通信障害、なぜiPhoneは音声がダメでもデータ通信は使えたのか――高橋社長「iPhoneとAndroid、機種によって振る舞いが違う」石川温のスマホ業界新聞

» 2022年08月07日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 今回のau通信障害で個人的に興味を抱いたのがスマートフォンのOSによって障害の度合いが違ったという点だ。7月3日の会見で高橋社長は「Androidはデータ通信、音声ともダメだったが、iPhoneはデータ通信は利用できているようだ」と語っていた。確かに自分がau回線で使っているiPhoneもデータ通信はできていた。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年7月30日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 「なぜ、AndroidとiPhoneで挙動が違うのか」

 この点に関して、通信障害発生直後にメーカー関係者に取材したところ「うちでも検証段階だが、AndroidはSnapdragonでアプリケーションプロセッサとモデムが一体となっているが、iPhoneは別々。本来、VoLTEが接続されてからデータ通信ができるようになるが、AndroidはVoLTEが接続できず結果、データ通信もできなかった。しかし、iPhoneの場合はモデムが独立しており、VoLTEがつながらなくても関係なく、データ通信ができたのではないか」という仮説を立てていた。実際、Wi-FiルーターなどVoLTEと関係ないものはデータ通信ができていたので、かなり信憑性があったのだ。

 しかし、後日、この仮説に対して、物言いが入った。

 別の業界関係者から「Androidが音声もデータ通信もできなかったのはKDDIのキャリア仕様をきっちりと守っていたから。その点、iPhoneはKDDIの仕様に対応していない。一方、AndroidもIOT(相互接続性試験)を受けていないものはデータ通信ができていたようだ」というタレ込みが寄せられたのだった。

 では、実際のところ、AndroidとiPhoneで何が違うのか。7月29日の会見で高橋社長に質問したところ

 「今回、データサービスをつかさどってる設備には不具合はまったくなかった。VoLTEの交換機が障害中であってもデータ通信が可能な状況であった。

 一方、また、通常時の位置登録件数も、異常時と比較しても同じであり、全ての移動機のデータに対しての課金情報というのが残っている。

 ただ、指摘のとおり、iPhoneと、Android、それもAndroidの中でもメーカーの機種によって振る舞いが違ったっていうのは事実だ。

 かなり昔の仕様になるが、VoLTEの交換機の接続ができない場合に、データ通信をどう取り扱うかっていう規定を、一応われわれのほうでスペックとして設けている。

 ただ、それから時代がだいぶ変わっており、スマートフォンがたくさん世の中に出て、グローバルの仕様を持って、メーカーが規定する時代になってしまった。われわれからするとキャリアによる強制の仕様にはなっておらずに、メーカーさんごとに決められた規定というものを、われわれは受け入れるという形になっている。

当然、iPhoneであれば、グローバルで同じ仕様になっているし、Androidも同様。端末の実装における、端末のモデムとかチップによって、あるいは通信のソフトウエアによって、データ通信が利用可能な頻度というものに、あるいは時間というものに差分があったと確認している」と語っていた。

 つまり、一律に「VoLTEに接続する」といっても、メーカーや機種によって、様々な仕様が存在するということだ。かつて、ガラケーのころはキャリアが決めた仕様をメーカーがきっちり守っていたが、もはやそんな時代ではなく、メーカーの仕様に合わせて、キャリアが調整する時代に変わってきているのだ。

 様々な端末を受け入れなくてはならないキャリアのネットワーク運用というのが、かなり大変そうだと改めて認識させられたのだった。

© DWANGO Co., Ltd.

アクセストップ10

2024年03月29日 更新
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年