KDDI通信障害、「約款返金271万人」と「おわび返金200円」の根拠は?

» 2022年07月29日 21時06分 公開
[田中聡ITmedia]

 KDDIが、7月2日から4日にかけて発生した通信障害に関するユーザーへの返金を発表した。

 返金の内容は2通りある。まず、契約約款に基づく「約款返金」として、障害が発生した期間中、24時間連続して通信サービスを利用できなかったユーザー271万人に対し、契約している料金プランの基本使用料から2日分相当額を減算する。2日分としたのは、通信障害が発生した期間が7月2日1時35分から4日15時までの合計61時間5分で、丸24時間使えない期間が2日間だったため。

au 今回の通信障害では「約款返金」と「おわび返金」の2つを実施する

 一方で気になったのが271万という数字だ。今回の障害の影響を受けたのが、音声が約2278万人、データが765万人以上だが、271万人は音声の影響回線数の12%弱と少ない。

au 音声とデータの影響回線数

 KDDIの契約約款では、音声通話やデータ通信を24時間以上利用できない状態が続いた場合、その期間の料金を返金するよう規定されている。今回の通信障害では、24時間以上利用できない状態となったのは音声通話のみで、データ通信に関しては、流量制限をかけていたものの、24時間以上利用できない状態にはなっていなかった。

au 24時間以上通信サービスを利用できない場合、その期間の料金を返金する旨は、約款で定められている

 従って、271万という数字は音声契約「のみ」を契約しているユーザーで、音声+データ通信を契約しているユーザーは含まれない。データ通信は24時間の中で少なからず使えていたので、音声が24時間使えなかったとしても、通信手段を確保できていたという考えだ。271万人は、auの音声サービスのみを契約していて、ISP契約をしていない人ということになる。

 ただしこの271万人の中で、24時間連続して音声通話が利用できなかったかどうかを個別に把握することはできないため、「24時間以内に音声通話が利用できていた人が含まれている可能性がある」(KDDI)とのこと。

au KDDIの高橋誠社長

 返金される金額は、ユーザーが契約しているプランによって異なるが、KDDIの高橋誠社長は「平均52円」と説明する。

 「データ通信は使えたかもしれないが、音声が全く使えず、日常生活や仕事に支障が出た」という人にとっては、納得のいかない対応かもしれない。しかし約款は音声とデータ通信で分けられているわけではなく、5G、LTE、WIN、UQ mobile、povo2.0などでまとめられており、返金についても音声とデータは「通信サービス」とひとくくりにされているため、あくまで約款に沿った対応ということになる。

 ただし、「重大性やお客さまへの影響の大きさを受け止め」(高橋氏)、スマートフォン、フィーチャーフォン、ホームプラス電話を契約している全3589万人を対象に、一律で200円(税別)を返金する。これが、もう1つの「おわび返金」だ。こちらは約款で義務付けられているわけではないため、「どこまでおわびの返金をするかは悩んだ」(高橋氏)が、約款返金の平均52円をベースに検討した。

 約款返金は2日分の料金になるが、おわび返金は約款の規定に縛られることはない。通信障害は3日にわたって起こったため、3日分と考え、52円×3日で156円になる。これに「おわびの意味を込めて200円という数字にした」(高橋氏)。なお、povo2.0は基本料金が0円のため、返金ではなくデータトッピング(1GB/3日間)を進呈する。

 ちなみに、2013年のLTE通信障害では、700円のおわび返金を行った。今回より高額だが、高橋氏によると、当時のLTEプランが月額6980円で今よりも高額だったためで、日割り分を返金した。今回は音声プランのみなので、金額が安くなったというわけだ。例えば、現在KDDIが提供している音声専用の「ケータイプラン」は月額1265円(税込み)。これを日割りにしても40.8円で2日分だと81.6円にしかならない。

 約款返金とおわび返金の総額は73億円。高橋氏は「経営に対して影響がないとはいえないような額だが、経営努力でカバーしていきたい」と話した。仮にデータ通信も24時間以上連続して使えていない状況になっていたら、約款返金が膨大な額になっていたことは想像に難くない。

au 返金については、全国の新聞やSMSで案内する。SMSはフィッシング詐欺でないことを示すよう、メール本文にURLを張らない形で送付する

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