多種多様なスマートフォンが市場に出ている中で、時代の影に消えていったのが「2画面のスマートフォン」だ。国内外で大きな注目を集めた2画面スマホは、なぜ消えていってしまったのか。
2画面のスマートフォンとはどのようなものがあったのか。まず挙げられるのが、2011年に京セラが米国で販売した「Kyocera Echo」だった。日本でこそ発売されなかったが、京セラが投入したこともあって話題を集めた。
2011年とAndroidスマートフォンとしても黎明(れいめい)期に近い頃の商品でありながら、2画面という独自性に果敢にトライした点は今もなお高く評価したいところだ。
日本では2013年発売のNECカシオ製「MEDIAS W N-05E」が印象深いものだ。4.3型のディスプレイを2つ備えており、展開時は5.6型のタブレット端末としても利用できた。
Android 4.1のためマルチタスクは専用のアプリを用いて対応した。アプリ開発SDKが公開されていた上に、アプリコンテストなども行われていたため、専用アプリもある程度充実していた。
こちらのスマホはドコモが販売し、市場の注目度も高い1台だった。一方で、電池持ちの悪さやソフトウェアの粗削り感といった黎明期らしい点もあり、当時は「キワモノ」という認識が強いものだった。
2017年に発売されたZTE製「ZTE M Z-01K」は、5.2型のディスプレイを持ち、展開時には7.6型のタブレット端末としても利用できるものだ。OSにAndroid 7.1を採用したことにより、標準機能である画面分割を拡張する形で2つのアプリを動かすことができた。
特性的にもMEDIAS Wの後継ともいえる存在であったが、クセのある操作感やアクセサリーの少なさなどもあって、普及したとはいえなかった。
ここまでは「閉じてコンパクト、開いて大画面」という画面サイズを拡張させる方向に注力した2画面スマホを紹介したが、それとは違う方向に展開した機種がいくつかある。その例が、本体背面にサブディスプレイを備える端末だ。
通知用サブディスプレイという点では、「Xiaomi Mi11 Ultra」や「Meizu Pro 7 Plus」のように、端末背面に小型のディスプレイを備えるモデルもある。これらは通知領域や機能面の向上を目的として搭載されていた。現在は「Galaxy Z Flip」シリーズのサブディスプレイに近いものといえる。
サブディスプレイをさらに拡張して電子ペーパーを採用したスマホもある。Yota devices製「Yota Phone」は背面パネルを利用して通知領域の拡張、端末デザインの自由度向上、省電力モードでの利用といった用途で考えられていた。電子ペーパーなので、書き換えさえしなければ電池を消費しないことが利点だ。
このような電子ペーパーを利用したスマートフォンは、現在も中国のHisenseから発売されている。
こちらに関しては、画面占有率を上げる当時のトレンドの延長から生まれたものである。当時の理想型は「カメラなどの邪魔なものがない全画面」であり、各社ポップアップインカメラやパンチホールカメラの小型化に力を入れていた。
そのような中で、「背面ディスプレイを備えれば、こちらを利用して高画質な自撮り撮影も可能なのでは?」というコンセプトで生まれたものが前述した端末だ。どちらも差別化を図った製品であったが、背面に画面を設ける点にあたって本体設計やケースなどのアクセサリーにかなりの制約が生まれてしまった。
2019年にLGエレクトロニクスから「V50 ThinQ」というスマートフォンが発売された。こちらはGalaxy Z Foldへの対抗として「デュアルスクリーン」と呼ばれる拡張ディスプレイを備え、必要に応じて着脱可能になっていた。20万円以上と高価なGalaxy Z Foldに対してその半分の値段ながら、2画面を用いて体験的には近いことが可能であることをアピールしていた。
日本では派生機となる「LG G8X ThinQ」がソフトバンクから、後継機にあたる「V60 ThinQ」がドコモ、ソフトバンクから発売された。ドコモではやや小型の「LG Velvet」も扱っており、この手の端末ながら、展開されたラインアップ自体は多い。
怒涛(どとう)の2画面スマホを連発したLGだったが、そんなタイプのスマホに可能性を示した端末が「LG WING」だ。このスマホは「ながら見」「コントロールセンター」といった形で単なる2画面スマホから、メイン画面とサブ画面という形で明確な役割を与え、サブ画面をより有効的に利用することに主眼を置いたものとなる。他社からも登場しないコンセプトを持つ斬新な端末であったが、LGがスマートフォン市場から撤退したため、後継機は現れていない状態だ。
同じ時期に発売された2画面スマホとして、Microsoft「Surface Duo」がある。こちらはより本に近いビュワー端末というコンセプトだったが、1画面のタブレットとして使うには難があったり、カバーディスプレイがなく見開き以外では使うにくかったりするのが課題だった。
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