サムスン電子の縦折り折りたたみスマホの第3世代である「Galaxy Z Flip3 5G」は、防水やおサイフケータイといった便利な機能に対応し、そのうえ他のハイエンドスマホと同等の価格を実現することで、初めはキワモノ扱いだった折りたたみスマホを普及させるきっかけの一台となったといえるでしょう。
そんなGalaxy Z Flip3 5Gも発表から約1年経過し、第4世代の発表がうわさされ始めています。新型機が出ると始まるのが旧型機の在庫処分で、Galaxy Z Flip3 5Gも例外ではありません。型落ち間近の投げ売りで一括6万743円(税込み、以下同)、端末購入プログラムで実質23円(毎月1円)の投げ売りとなっていたNTTドコモのGalaxy Z Flip3 5Gを購入しました。
ドコモのGalaxy Z Flip3 5Gの場合、発売当初は一括14万8896円(税込み)、実質8万8176円だったので、大幅な値下げです。※なお、ここでの価格は筆者が購入した店舗のケースであり、全ての店舗でこの価格で販売しているとは限らない点はご注意ください。
投げ売りがきっかけではありますが、せっかくの機会なので、折りたたみスマホをほとんど触ったことがない筆者がGalaxy Z Flip3 5Gに触れて感じたことを述べていこうと思います。
十数年ぶりに2つ折りの携帯電話を手にして感じたのはなんというか、郷愁のような懐かしさでした。
2つ折りのガラケーが主流だった時と比べると、今の携帯電話でできることは信じられないほど多くなりました。メールやSNSをチェックする、写真を撮って友達に共有する、ソーシャルゲームのデーリーミッションをこなすといった膨大な作業をしなければならないことを考えると、端末を広げるという1工程多い縦折りの折りたたみスマホは非常に厄介で、スマホが手放せない現代人にとってはストレスフルといっても過言ではないでしょう。
しかし、コントローラブルなディスプレイが自分の手元よりも遠い折りたたみスマホは逆に画面からわれわれを開放しているともいえます。平たくいうとプチ・デジタルデトックス的なことができるということです。
折りたたんだ状態のGalaxy Z Flip3には1.9型のサブディスプレイがあります。例えばサブディスプレイで通知をチェックし、そこで端末を開くに値するかどうかが判断することで、従来のスマホのような通知を開いてその後もダラダラとネットサーフィンをするといったことを避けることができます。
バルミューダの寺尾社長は「BALMUDA Phone」の発表時に「私たちの人生の重要なことはたいてい画面の外で起こる」と言っていました。私もその考えにはおおむね同意でしたが、画面の外のちょっとした幸せを見つけるのに必要なものはテクノロジーではないと思っていました。そんなときに手にしたGalaxy Z Flip3 5Gは、「じゃあ画面を自分から遠ざければいいじゃない」というシンプルかつエレガントな答えを教えてくれたのです。
必要なときだけ開く、折りたたんでしまうといったちょっとレガシーな体験は、スマホなんてなかった時代のリアルが充実していた感覚を少し思い出させてくれるようなもので、それこそが縦折りの折りたたみスマホの価値なのではないかと私は思います。
概念的なことだけを話していると各所から怒られてしまいそうですから、モノとしての折りたたみスマホの方にも目を向けてみましょう。
折りたたみスマホは画面が一番大事です。それも、折りたたむことを実現したメインディスプレイよりも折りたたんだ状態で使うサブディスプレイの方が大事だと私は思います。
折りたたみスマホの唯一無二の特徴は、文字通り折りたためることです。それなら折りたたんだ状態で何ができるかということこそが大事で、その価値を生み出せるのがサブディスプレイなのです。
縦折り折りたたみスマホのサブディスプレイ体験はストレスフリー、かつある程度制約があることが求められます。「開いた方が便利だ」と思わせてしまったら折りたたむメリットは希薄になるし、何でもできてしまうとそれはそれで画面にとらわれているし、何より「開いた方が見やすいな」と思わせることになります。
Galaxy Z Flip3 5Gの1.9型のサブディスプレイでは、時間の確認はもちろんのこと、通知の表示やカメラの起動と撮影、再生中のミュージックのコントロール、天気の表示といったことができます。同じ縦折りのモトローラ「razr 5G」のサブディスプレイは2.7型ともう少し大きく、任意のアプリを開いたり文字入力することも可能で、例えばマップをチェックしたり「PayPay」を起動したり、動画を再生したり、はてにはゲームを遊ぶことも可能です(※サードパーティーアプリをインストールすればGalaxy Z Flip3 5Gでも任意のアプリを起動できます)。
好きなアプリが開けるrazr 5Gは明らかにやりすぎですが、Galaxy Z Flip3 5Gのサブディスプレイはかなりいい線をいっていると感じます。Galaxy Z Flip3 5Gのサブディスプレイは起動すると自分の好きな文字盤に時計とバッテリー残量が表示され、右スワイプで通知、左スワイプで設定したウィジェット、上スワイプでマナーモードとサブディスプレイの明るさ設定が表示されます。
これがどれも絶妙な必要最低限の情報だけになっているのがニクい! 例えば通知はアプリと最初の1文だけが並んでいて、通知をタップすると初めて詳細が見られます。メッセージだったら簡単な定型文を返すことができますが、ほとんどの通知はもっと見ようとすると端末を開くことを求められるようになり、その状態でスマホを広げると対象のアプリがスタンバイしているのです。
簡単な返信ができるのはApple Watchと同じですが、Apple Watchは大画面になることはないし、razr 5Gのようにサブディスプレイでキーボード入力して返信というのはスマートではありません。他にも電源キーの2回押しでカメラが起動してボリュームキーでセルフィーを撮った後にディスプレイを開けば大画面で撮れた写真を確認できるところも直感的で、これらのような絶妙かつ使っていて引っ掛かるところがない心地よい体験が提供できるかどうかが折りたたみスマホの重要な価値で、そこが自分に合うかどうかが折りたたみスマホを選ぶ大事な指標だと思います。
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