eSIMの普及にまだ時間がかかると感じる理由(2/2 ページ)

» 2022年10月27日 11時00分 公開
[金子麟太郎,ITmedia]
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古い機種から新機種へeSIMの情報を簡単に移せない

 eSIMを古い機種から新しい機種へ移すのは容易と捉えられることが多いが、実は場合によってはそうとはいえない。

 容易と捉えられている機能の1つがiOS 16に搭載された「eSIM クイック転送」だ。これは新旧のiPhoneがiCloudまたはBleutoothでつながり、eSIMプロファイルを旧iPhoneから新iPhoneへクイックに移せるというもの。移行の手軽さがある反面、Android端末では使えないし、対応する機種とキャリアが限られている点がネックだ。2022年10月時点ではKDDI(au、UQ mobile、povo)、楽天モバイルでしか使えない。

 移行にかかる時間もネックだ。楽天モバイルの場合は楽天ID(会員ID)でマイページにログインし、再発行のボタンを押すだけですぐにプロファイルダウンロード用のQRコードが送られてくる。それほど時間はかからない。早ければほんの数分で手続きが終わる。povo 2.0では、こうはいかず、チャットでオペレーターに契約者本人が再発行を依頼し、再度本人確認を行う必要がある。経験上、先の楽天モバイルよりも手順が多く、時間もかかると感じるし、24時間対応ではない。

 一方、簡単にログインして再発行できる楽天モバイルだと、二段階認証を踏まずに手続きできるので、「誰かに勝手に手続きをされてしまう……」という心配はある。povo 2.0のようにしっかりと本人確認をすれば、そうした不正アクセス、不正利用を未然に防げる、という見方もある。

 だが、povo 2.0の本人確認はしっかりと行うものの、場合によってはすぐに本人確認ができないケースがある。プロファイルを再発行した場合だ。例えば、先のeSIM クイック転送を利用できない場合や、Android端末(古いAndroidから新しいAndroidへ乗り換える)場合において、本人確認をオンラインで行わずにプロファイルを再発行するときだ。

 povo 2.0におけるオンラインでの本人確認は、本人確認書類(パスポート、運転免許証、マイナンバーカード)と本人の顔写真が一緒に写った構図の写真をチャット画面にアップロードする必要があるが、ユーザーの中には「それだけのためにメイクをしなければならない……」「顔や姿の見えない相手(オペレーター)に自分の顔写真と身分証明書を提示するのに抵抗を持つ」と、理由からためらう人もいるだろう。

eSIM メリット デメリット 普及しない povoの場合は契約者と身分証明書が一緒に写った画像のアップロードが必要となる

 その場合、郵送での本人確認が必要になり、時間を要してしまう。流れとしてはまず契約者の住所宛に本人限定受取郵便にて本人確認番号が届く。それを受け取った後、改めてチャットにて問い合わせる。最後にチャット欄で本人確認番号を入力すれば、本人確認が完了するという。

 また、eSIMのプロファイルを誤って削除してしまったら、再発行する必要があること、機種変更時にショップで発行する際など、場合によっては手数料がかかることも、ユーザーにとっては不便と感じるところだ。

 かくいう筆者もeSIMの再発行で、スムーズに手続きできたケースはほとんどなく、これだと「物理SIMを差し替えた方が早いし楽なのでは?」と感じる場面が多い。

 総務省のかかげるeSIMの普及にはまだほど遠い状況だと感じる。総務省が公開している「表題は検討の方向性(案)について、目次はeSIMの促進」資料では、オンラインでeSIM関連の手続きを行うに際して、本人確認もオンラインで完結すべきとの記述がある。だが、これまでまとめた通り、オンラインで一筋縄にいかないケースが多いと、促進どころか普及までの道のりは長いと感じる。

 eSIMの特徴である書面・対面を必要としないオンラインで完結する事業者間の乗換えを円滑に行うためには、eSIMとともに本人確認をオンラインで確実に行うことが重要である。

eSIM メリット デメリット 普及しない 検討の方向性(案)の中で示されているeSIMの課題

通信事業者視点に立つとどうか

 ここまではユーザー視点でのデメリットをまとめてみたが、通信事業者視点ならどうだろうか? そもそも一般のユーザーが初めてeSIMでキャリアや機種を乗り換えるというのは大変だろうが、通信事業者がそのサポートを手厚くできるか、というとそうでもない。簡単な内容ならQ&Aで解決できるし、オンラインのチャットサポートでも対応できそうだが、トラブルシューティングに至るまでが困難だとそれだけでは足りないだろう。

 「仮にオンラインで解決しない内容は店舗へご相談ください」としてしまうと、せっかく店舗オペレーションを不要とすることで通信料金を抑えたオンラインブランドの意味を成さなくなる。ユーザーによっては「オンライン手続きが面倒だから」という理由で、本来なら自己解決できる内容でも店舗に頼ってしまう人も出てくるはずだ。

 やはり通信事業者にとっては、気乗りしない「サポートの強化」よりも、煩雑なオンライン手続きをいかにして簡易化するか、それが課題となっている。かといって簡易化を優先するあまり、本人確認を怠っては本末転倒だし、この辺りの線引きは慎重に考える必要がありそうだ。

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