「プラチナバンド」獲得に自信を見せる楽天モバイル それでも課題が山積の理由石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2022年10月29日 10時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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プラチナバンドの再割り当ては思惑通りに進むか? 今後に課題も

 矢澤氏がここまで強気の要求をしているのは、競願申請をした場合、「後発(の事業者)が非常に有利」になる公算が高いからだという。既存の事業者は「既に設備を持っているところに対し、われわれは勝てるものとして開設計画を出す」という。いわば、後出しジャンケンで勝負ができるところに、楽天モバイルの強みがある。こうした事情も踏まえ、矢澤氏は「電監審(電波監理審議会)で楽天モバイルの方が有効利用されるとなった場合、基本的にはどかないといけない。そこに抵抗するのは賢明な判断ではない」と語る。

 とはいえ、既存3キャリアがフィルター挿入にこだわる理由も理解できる。常時発生するわけではないとはいえ、楽天モバイルの電波が弱い場所では、フィルターがないと通信品質が大きく劣化するのは事実だ。いくら確率の問題とはいえ、通信品質の劣化が生じるケースはある。実利用環境での影響がどの程度出るのかが読み切れない以上、あらかじめ対策を講じておきたい既存キャリア側の気持ちは理解できる。

楽天モバイル 本スライドにあるように、実環境はシミュレーションより複雑な状況になりうる。あらゆるパターンの干渉リスクを排除することが求められるため、フィルターの挿入が必要という主張は一定程度理解できる

 フィルターの挿入は電波法第56条に該当するというKDDIの理屈にも、一理あるように思える。同法56条は混信等の防止を定めたもの。フィルターの挿入は「先発事業者(編注:既存3社のこと)の基地局の運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないために実施する措置」というのがKDDIの意見だ。周波数を失うだけでなく、レピーター交換やフィルター挿入、さらにはエリア再設計の費用まで負担しろとなれば、簡単には「はい、分かりました」とは言えないだろう。

楽天モバイル KDDIは、電波法56条を根拠に挙げ、混信リスク解消の義務は楽天モバイルにあるとしている

 一方で、矢澤氏は「強く自信を持っている」としながら、次のように語る。「原理原則4社体制でやっていくのは、総務省も含めてそういう方針で行こうとなったので参入している。無理を言っているわけではない。確かに電波法改正前に費用負担なしでというならかなり強引だが、法整備も終わっている」。こうした事情もあり、移行のスキームが決まれば、楽天モバイルは「競願申請を出すつもり」だという。

 プラチナバンド獲得に自信をのぞかせる楽天モバイルだが、仮に同社の主張が通り移行に伴う費用は既存事業者が負担することになったとしても、その後、開設計画に基づく審査は行われる。ここでは、楽天モバイルが他社より電波を有効利用できることを証明しなければならない。確かに後出しジャンケンなら、基地局数を既存の事業者より多くし、人口カバー率などを広く設定する手は使えるだろう。

 とはいえ、この基準はまだ明確にはなっていない。「電波の有効利用」は、保有している帯域幅や、ユーザーのトラフィックを勘案しなければならない。タスクフォースでも、他社より契約者数の桁が1つ少ない楽天モバイルに、15MHz幅のプラチナバンドが本当に必要なのかはドコモやKDDIから疑問が投げかけられていた。

楽天モバイル ドコモが提出した帯域幅と収容見込みの資料。ユーザー数が500万を下回る楽天モバイルにとって、15MHz幅のプラチナバンドは過大ではないかとの見方を示した

 また、楽天モバイルは料金の安さも有効利用の1つと主張していたが、この点はタスクフォースで有識者から否定的な見解が示されていた。料金が下がるのは、ユーザーを増やすことに寄与するものの、あくまでトラフィックを発生させるきっかけにすぎない。間接的には影響があるものの、イコールで電波の有効利用かというとそのロジックは相関関係が弱いようにも思える。最終的には電監審がどのような基準を出すかによるが、同社の主張がそのまま通ることはないのではと感じた。

 ただ、楽天モバイルがプラチナバンドを保有していないことが競争上、不利になっているのは事実だ。電波法の改正も、プラチナバンドの再割り当てを念頭に置いていることから、楽天モバイルの競願申請は半ば“既定路線”のようにも見える。矢澤氏は、「11月中には総務省から、楽天モバイルが勝った場合、既存事業者はこういうふうにするといった指針が出るのではないか」との見通しを示す。「三方よし」ならぬ「四方よし」でプラチナバンドの再割り当てが着地するのか。今後の動向にも注目しておきたい。

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