楽天グループが利回り10%を超えるドル建て社債を発行――既存3社と互角に戦うには設備投資はまだまだ必要か石川温のスマホ業界新聞

» 2022年12月04日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 楽天グループが11月30日に発行するドル建て社債の利回りが話題だ。10%超ということで、過去のドル建て債を大きく上回っている。資金調達に関しては、今後、楽天銀行や楽天証券の上場準備を進めている。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年11月26日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 楽天モバイルは参入当初、設備投資に6000億円を計画していた。当然、それでは足りないわけで、日本郵政が1500億円を出資している。すでに1兆円を超える規模となっているが、もちろん、それでも足りるわけはない。

 総務省のおかげで、なんとか既存3社からプラチナバンドの再割り当てをもらえるようになりそうだ。フィルター設置などの工事費用は、既存3社がそれぞれ1000億円規模を負担することになりそうだが、楽天モバイルはビタ一文、負担しない。しかし、あくまでそれは既存の周波数帯を楽天モバイルに明け渡すための費用であり、ここから楽天モバイルは自分たちが使えるようにプラチナバンド用のアンテナを既存の基地局に設置していく必要がある。

 楽天モバイルは来年中に基地局数が6万に達する見込みだ。もちろん、すべての基地局にプラチナバンドのアンテナを設置する必要はなく、数としては限定的だろう。

 ただ、楽天モバイルが本気で既存3社と同等になる、あるいはNTTドコモを超えて日本一のキャリアになるつもりなのであれば、計画している6万という基地局数では足りないのではないか。6万局で面的カバーはできても「容量」が足りなくなってくる。

 既存3社に肩を並べるユーザー数を抱え、さらに多くのユーザーが使い放題で利用することを想定すると、おそらく今の3倍、20万近い基地局数が必要になるはずだ。1兆円で6万基地局を建てたということは、あと2兆円ぐらいは欲しいところだ。

 また、楽天モバイルは衛星通信によって全国100%のエリアカバーを実現しようとしている。先日、ようやく衛星のアンテナが開いたようだが、本気で衛星通信サービスを提供するには、おそらく100機以上の衛星を飛ばす必要があるはずだ。

 もちろん、日本のみならず世界規模でサービス提供できるようになるため、楽天シンフォニーのように世界展開が可能になる。また、衛星サービスを提供するASTにはボーダフォンも出資しているため、ボーダフォンとの折半になるだろうが、それでもASTには相当な追加出資をしなくてはならないのではないか。

 ソフトバンクもボーダフォン買収直後から資金繰りについて不安視をされてきたが、iPhoneを独占的に扱えたことでなんとか危機を回避することができた。

 楽天モバイルはまだまだ資金が必要なはず。ソフトバンクのiPhoneのような、他社からユーザーを集めるための競争力のある武器が必要だろう。

© DWANGO Co., Ltd.

アクセストップ10

2025年12月18日 更新
  1. 資さんうどんが「PayPay」の取り扱いを停止 他のキャッシュレス決済は引き続き利用可能 (2025年12月16日)
  2. なぜ? U-NEXTが自ら「U-NEXT MOBILE」を立ち上げた理由 20GB実質300円、ワンプラン、eSIMのみの狙い (2025年12月17日)
  3. 500ポイントもらえる「東京アプリ」のテストに参加する方法は? 1.1万円相当のポイント付与に向けた最終検証がスタート (2025年12月15日)
  4. 総務省が「SIMのみ契約」のMNP優遇を問題視 端末値引きは規制緩和の可能性も? (2025年12月17日)
  5. ドコモ、“スマホ新法”の詳細は「公取委に問い合わせて」 施行前に自社サイトで案内 (2025年12月15日)
  6. 待望のおサイフケータイ対応、OPPO最高峰「Find X9」が示すスペックを超えた体験価値 (2025年12月16日)
  7. Apple Watchいらず、iPhone単体でフィットネスの「ワークアウト」を測定する方法は? (2025年12月17日)
  8. 通話も録音できるAI要約・文字起こし対応レコーダー「Notta Memo」がタイムセールで1万6992円に (2025年12月16日)
  9. テスラの車載Wi-Fiをワイモバイルの“子回線”と“バッテリーレス”ルーターを活用して“安く”構築した話 (2025年12月17日)
  10. スマホ新法は「オープンなAndroidエコシステム」と矛盾しない Googleが高く評価する理由 (2025年12月18日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー