総務省は11月8日、「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース 報告書(案)」を公開した。これにより、楽天モバイルへのプラチナバンド再割り当てが現実味を帯びてきた。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年11月12日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
11月11日に開催された楽天の決算会見では、タレック・アミンCEOが「大変嬉しく思う」とコメント。同社では2024年3月からの使用開始を目指すとしている。
総務省のタスクフォースでは「移行期間は10年が必要」という議論が進んでいたが、報告書では5年という年月に区切られた。さらに「終了促進措置」として、新たな認定開設者が既存免許人の移行費用を負担すれば基地局設置の前倒しが可能になるとしている。
楽天モバイルとしては、移行費用を負担すれば、徐々に5年間でプラチナバンドを広げるよりも、一気に全国展開も実施することもできるようになった。しかし、矢澤俊介社長は「タスクフォースの場で話したように終了促進措置は使うつもりはない」として、ビタ一文、支払う気は無く、5年をかけて徐々にエリアを広げていくようだ。
ただ、あくまでこれは楽天モバイルの皮算用であって、既存3社がどこまで友好的に周波数の受け渡しに応じてくれるかはかなり不安要素でもある。
そもそも「3Gが終わるから」という理由でプラチナバンドの再割り当てが議論の俎上に上がっているが、ソフトバンクは2024年1月下旬、NTTドコモは2026年3月末まで3Gサービスを提供し続けている。
auに関しても、プラチナバンドにおいては15MHz幅があるからこそ、DSSで4Gと5Gの混在が可能なわけで、10MHz幅になれば帯域を確保できず、ネットワーク品質が落ちることも予想される。
auユーザーにとってみれば「auの通信が遅くなった」ということになりかねないわけで、KDDIにとっても死活問題なのではないだろうか。
KDDIとしては700MHzの活用を広げるなどの対策が求められそうだ。いずれにしても、1年ちょっとの間で周波数の戦略を見直し、さらに5G展開よりも優先させる形で対応しなくてはならないのは間違いない。
いずれにしても、3キャリアとも、新たな収益を全く生まないプラチナバンドの再割り当てのために1000億円規模の工事を負担し、工事の人員も割かなくてはならない。
5Gの展開をないがしろにしてやらなくてはいけないだけに、日本全体の5G展開が世界に比べてまた大きく後れをとるということは、本来であれば何とか避ける必要があるのではないだろうか。
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