さて、現在のスマートフォンで主流の形状は、画面の上部に丸くカメラの部分だけくり抜かれた状態の画面が採用されている。これはパンチホールカメラと呼ばれるもので、日本では「Galaxy S10」が初めての商品だった。
カメラの部分だけくり抜かれたこの手の商品は画面占有率の向上とインカメラの使い勝手を両立しており、近年の主流となっている。加工性の高い有機ELパネルだったからこそ可能なものだ。
そして、次世代のインカメラといわれているものがアンダーディスプレイカメラだ。UDCと略されることもあり、文字通り「ディスプレイの下にカメラがある」ものとなっている。見かけ上は全画面ながらカメラ部だけ解像度を落としたり、フィルターを調整したりして対応している。
仕組み上は画面内指紋認証技術の「光学式指紋センサー」が近い。光学式の機種はセンサー部に強い光を当てると認証エリアが分かるものになる。UDCでも機種によっては光の当たり方などでは目立ってしまう。
今後の画面の在り方を占うのなら、アンダーディスプレイカメラを搭載したものが究極のベゼルレスといえる。中国メーカーではZTEとXiaomiがUDC搭載機を販売しており、多くのメーカーでインカメラの小型化に力を入れている。
Android端末には「画面の上には極力邪魔になるものを置かない」といった姿勢を感じるが、コストの関係から、数年間はアンダーディスプレイカメラも一部機種の採用にとどまるのではないかと考える。現時点のUDCではインカメラの画質を落とさなければならず、コストも高いことから完全回答とはいえない。
一方で、インカメラの画質をある程度維持できる技術が確立できれば、画面の自由度は高いので普及は時間の問題と考える。
アンダーディスプレイカメラはフォルダブル端末のようにカバーディスプレイを備えるプレミアムラインの機種を筆頭に普及していくはずだ。2つの画面を持これらの端末では、展開時にカバー画面をセルフィーモニターとしても利用できる。
画質を求めたい場合の代替手段が用意されていること、コスト的に切り詰める理由が少ない高付加価値路線の端末であることから、Galaxy Z Fold4などで採用例がある。
一方で、iPhone 14 Proで「ダイナミックアイランド(Dynamic Island)」と称するパンチホールカメラが採用されたが、Android端末と比較すると形状も大型でハードウェア的にはあまり洗練されていない。iPhoneとしてはFace IDの関係でカメラの他に各種認証センサー類を持つため、パンチホールが大きいものになっている。
ただ、iPhone 14 ProではこのパンチホールをシステムUIに溶け込ませて「うまく生かす」といった見せ方をしている。隠すのではなく、UIに溶け込ませる考えに至るのはさすがだと感じた。
さて、パンチホールカメラやUDCといった技術は、ベゼルレス化に伴って研究、開発が進んだものだ。ベゼルが細くなることによって、従来よりも大型の画面の端末が手に収まるサイズになっている。
iPhoneで例えるのなら、かつての4.7型のiPhone 8のサイズで対角6.2型になるなどベゼルレス化の恩恵が出ている。画面が大型化したことで、動画もより大画面で視聴できるなどユーザー体験が向上している。
その中でも視聴体験を向上させるためには、ベゼルレスの延長でカメラ部の小型化を各社進めており「画面に余計なものを置かない」ことが共通のトレンドとなりそうだ。毎日目にするスマートフォンの画面も常に進化が止まらない。次の世代の製品にも期待が高まるものだ。
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