GoogleやMicrosoftといったパートナーを招き、その蜜月関係をアピールするのもGalaxy Unpackedでは“恒例行事”といえる。今回、Unpackedでステージに上がったのは、QualcommでCEOを務めるクリスティアーノ・アモン氏。GoogleでAndroidやChromeのプラットフォームやエコシスエムを担当するSVP(Senior Vice President)のヒロシ・ロックハイマー氏もステージ上に招かれ、TMロー氏と握手を交わした。
ロックハイマー氏はUnpackedにたびたび登壇する“レギュラー選手”だが、アモン氏の登壇は珍しい。背景には、サムスン電子がGalaxy SシリーズのプロセッサをSnapdragonに一本化したことがある。これまで、Galaxy Sシリーズは、地域によってSnapdragonと自社製のExynosを使い分けていた。日本で展開されるGalaxy Sシリーズは、キャリアのIOT(相互接続試験)を通す都合もあり、基本的にはSnapdragonが採用されていたのに対し、Exynos版を発売している国や地域も多い。
2021年に発売されたGalaxy S22シリーズもプロセッサに幅を持たせ、「Snapdragon 8 Gen 1」と「Exynos 2200」のどちらかが採用されていた経緯がある。Unpackedで新製品を発表する際にも、「4nmのプロセッサ」といった形で詳細がボカされていることが多かった。これに対し、サムスン電子はGalaxy S23シリーズのプロセッサをSnapdragonに絞り、独自カスタマイズを加えることで他社との差別化を図った。それが、先に挙げたSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyだ。
アモン氏が「世界最速のSnapdragon」と語っていたように、同チップは、通常のSnapdragon 8 Gen 2よりCPUのクロック周波数が高く、その最大値は3.36GHz。GPUのパフォーマンスも向上させているという。Snapdragon 8 Gen 2は、Cognitive ISP(Image Signal Processor)を採用し、写真や動画を撮影する際に被写体を分析し、それぞれのパーツに最適な処理を施すことが可能だが、これを採用した初のスマートフォンもGalaxy S23シリーズだという。同シリーズのナイトグラフィーが大幅に強化されたのは、センサーの刷新だけでなく、このISPによるところが大きい。
こうした“特別扱い”が許されるのも、Galaxyの販売ボリュームが大きいからこそといえる。Qualcommにも、それだけのカスタマイズを施す理由がある。同社の競合となるMediaTekのプロセッサが勢いを増したことで、Qualcommはモバイル分野のプロセッサでシェア2位に転落。ミッドレンジ以下が強かったMediaTekだが、最近ではハイエンド向けにも注力しており、主に中国メーカーを中心に採用が進んでいる。
この状況で、トップシェアのGalaxyを押さえられるのは、Qualcommにとってもメリットが大きいといえそうだ。アモン氏は、Unpackedの壇上でサムスン電子と25年に渡る関係の強さを強調。「近年、われわれの関係はさらに緊密になり、最先端のプレミアム体験を提供するために、何が可能かという境界線に立ち続けている。その最高の例がGalaxy S23シリーズだ」と持ち上げた。
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