次にチェックしたのが、カメラだ。まずは、超広角、広角、3倍望遠、10倍望遠のそれぞれで風景を撮ってみた。空の青さがパッキリと出ているのは、補正の効果だろう。3倍望遠や10倍望遠は、広角カメラと比較するとセンサーサイズが小さく、レンズもF2.4、F4.9と暗くなっていくが、日中の風景写真を撮るには十分な性能。カメラ自体を切り替える光学望遠のため、10倍で撮ってもデジタルズーム特有の画質劣化は見られない。
これまでのUltraが付くGalaxyと同様、Galaxy S23 Ultraも最大で100倍までズームすることが可能だ。10倍望遠の写真をさらに10倍デジタルズームで引き伸ばすため、画質は当然劣化してしまうが、Galaxy S23 UltraはAIによる補正を強化したという。その結果は、次の通り。看板や横断幕に印刷されたような文字は非常にクッキリしており、壁のれんがの質感もかなり再現されている。劣化具合が少なく、10倍ものデジタルズームをかけたとは思えないほどだ。
一方で、何を撮るかでも結果は変わってくる。以下の基地局を撮った写真は、背景に樹木が写り込んでいるが、かなり描写が怪しい。恐らくこれは、AIが被写体をきちんと判別できず、補正をしきれなかったのだろう。ユーザーが100倍ズームで撮るであろうものはキレイに写るが、その想定から外れてしまうとやや残念な結果になるというわけだ。とはいえ、上記のように被写体次第ではかなり“実用的”な写真に仕上がるインパクトは大きい。
次に試したのが、メインの2億画素カメラだ。といっても、通常は16のピクセルを1つに束ねることで、サイズは1200万画素相当になる。2億画素をそのまま使いたいときや、5000万画素モードで撮りたいときには、アスペクト比の設定メニューを呼び出す必要がある。以下は、それぞれの解像度で撮った料理の写真。サムネイルだと違いは分かりづらいが、拡大しても仕上がりの差は少ない。2億画素モードだとピクセルサイズはかなり小さくなるはずだが、健闘しているといえる。
拡大してみたときの精細感には大きな差分がある。上記の写真の一部を切り取ってみると、その差は歴然。ただし、ピントの当たる範囲が狭いこともあり、どこを拡大してもそのまま使えるというわけではない。2億画素モードで撮った写真は画像のサイズが約16MBと大きくなってしまう上に、連写も効かなくなるため、使いどころは限られてくる。どちらかといえば、1200万画素で撮り、光を多く取り込んだ方がいいだろう。
このセンサーや画像処理の改善が生きてくるのが、先に挙げたナイトグラフィー、つまり夜景撮影だ。以下は、渋谷の街を背景撮ったモデルの写真。通常だと、ネオンはしっかり写っている一方で人肌は暗くなってしまいがちだが、Galaxy S23 Ultraのナイトモードで撮った写真は、どちらも明るく撮れている。ナイトモードを解除すると、背景のモニターなど、明るさの強い部分は白飛びしてしまうが、それでも被写体と背景がバランスよく映し出され、ノイズも少ない。プロモードで撮った無加工の写真と比べてみると、違いが分かりやすいだろう。
作例を見ると、ISP(Image Signal Processor)の処理がかなり効いている印象だ。実際、写真を撮った直後に表示すると、背景が白飛びしたやや暗目の映像が表示されるが、そこからわずかな時間で写真が処理され、上記のように人物と背景、どちらも際立った仕上がりになる。一言でいえば、PhotoshopやLightroomで行うような処理を、自動でスマートフォンがやっているようなものだ。デジカメで撮った暗さが残る写真を見慣れていると不自然に見えてしまう可能性もあるが、これはこれで“映える”写真といえる。その他の作例も掲載するので、仕上がりをチェックしてみてほしい。
写真だけでなく、動画でナイトグラフィーの処理が生きるのも、Galaxy S23 Ultraの魅力だ。この機能が実現したのは、プロセッサの性能が上がり、リアルタイムで被写体を認識しつつ、部分部分に最適な処理をかけられるようになったためだ。手ブレ補正も強力で、暗所、かつ動きながら撮影したとは思えないほど滑らかな動画を撮ることができた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.