―― 今回、NEOプランWと同時に、バリュープラスでNEOプランの帯域を試せる「NEOトライアル」も導入しました。この狙いは、やはりアップセルでしょうか。
石井氏 NEOプラン以外の料金プランをお使いの方の中には、NEOプランの詳細を知らない方もいます。どういったサービスかが分からないという方に、ストレスフリーの高品質を認知していただくのが狙いです。まずは使っていただき、事前に体感いただくことでプラン変更の不安を払拭(ふっしょく)できればいいなと考えています。
―― 100MB単位で追加できますが、こういった設計にした理由はありますか。時間にするという手もあったかと思います。
石井氏 確かに時間軸にする手はありましたが、その場合、想定コストの算定が難しくなります。また、容量だと、動画であれば数十分といった形でイメージをしやすい。ではなぜ100MBにしたかというと、動画などを最低限ご利用いただけるボリュームで、かつあまりちゅうちょせずに購入できる価格をつけたかったので100MBにしています。
―― バリュープラスで契約すると、そのうち100MB分が専用帯域になるのでしょうか。
石井氏 いえ。単純に100MBが追加され、その追加された分だけがNEOプランの帯域を通るようになります。
―― オプションのあり、なしを判定して即座にユーザーが利用する帯域を切り替えるといったことをしているMVNOは聞いたことがありません。なかなか技術的に高度なことをしている印象ですが、いかがですか。
石井氏 おっしゃるように、仕様整理ではいくつかの課題がありました。具体的な開発内容をコメントするのは難しいのですが、NEOプランの帯域に抜けるルートを準備したという形になります。グループ会社がMVNEも運営しているので、そこと連携しながら設計、構築しています。
―― 話は変わって、昨年導入したかけ放題プランについてですが、あちらを導入した狙いを教えてください。
茂木氏 かけ放題プランも今回のNEOプランWと同じで、ユーザーアンケートの結果として、お求めになる方が多かったからです。通話が中心の方にもNUROモバイルを選択肢に入れていただければと考えていました。
―― ちなみに、その後、オプションとして通話定額をつけられるようになりましたが、あれはなぜでしょうか。
茂木氏 プランとオプションの時期が分かれたのは、単純に開発状況による違いです。もともとは一緒に出そうと考えていました。
―― ソフトバンクが来年、ドコモが26年に3Gを停波しますが、そのユーザーを狙ったプランということでしょうか。
茂木氏 そういったお客さまにも選んでいただければと考えています。
―― その意味だと、ターゲット層が今までの料金プランとは違うような気もします。よりシニア向けという感じでしょうか。
田中氏 バリュープラスとNEOプランも、ターゲット層は若干違います。かけ放題プランは年齢というより、通話を中心にご利用される方で、ペルソナの違いと言った方が正確かもしれません。3G停波の影響を受ける方は年配が多いのですが、そういった方々は店舗で説明を受けるため、実際にNUROモバイルを契約するのはその息子さんだったり、お仕事で通話を中心にご利用される方だったりします。ですから、年齢というより、利用シーンに合わせてお選びになっているといえると思います。
―― 通話中心ということだと、いわゆるガラホとも呼ばれるフィーチャーフォン型の端末の方が使いやすいような気もします。こういった端末を販売される計画はありますか。
石井氏 今のところ、導入予定はありません。端末については、他のプランも含め、幅広いニーズに対応できるようラインアップを最適化しようと思っています。ここもニーズを測定しながら、検討していきます。
―― eSIMの導入も予定されています。この理由を教えてください。
茂木氏 eSIMの導入も、ご希望される方が多かったからです。市場を見ても、eSIM対応端末が増えてくる予測があります。そういったところを踏まえ、対応が必要であると考え、このタイミングでリリースすることになりました。
―― 確かに、米国ではiPhone 14シリーズがeSIMオンリーになりました。世界的にこれが広がると、eSIMに対応していないMVNOは厳しくなりそうですね。
茂木氏 それを待ってからとなると、時間がかかってしまいます。総務省のデータを見ても、24年で30%ぐらいの割合になる予測が立てられています。できるタイミングでやっていきたいと考えました。
―― KDDIとソフトバンクが副回線サービスをリリースしましたが、ああいった用途にeSIMを活用していくお考えはありますか。
石井氏 お客さまのニーズを測りながら、検討していくべきテーマだと思っています。
―― eSIMのトリプルキャリア対応もあるのでしょうか。
茂木氏 取りあえずはドコモ回線からスタートする予定ですが、ユーザーニーズは高まってくると思いますね。
バリュープラス、NEOプラン、かけ放題プランと性格が大きく異なる3つの料金プランを用意しているNUROモバイルだが、その背景には、徹底的にユーザーのニーズを分析する同社の姿勢があった。インタビューからは、需要予測などを踏まえ、タイミングよく新サービスを導入している様子が見て取れる。NEOプランWを投入したのも、1年で1.2倍というトラフィックの増加量を踏まえ、ユーザーニーズが高まると判断したからだ。
AIを活用した帯域の割り当てができたり、NEOトライアルのような仕組みを整備できたりするのは、ソニーグループならでは。グループ会社のミークが各キャリアと相互接続し、MVNEを展開しているからこそできる取り組みといえる。これまで、小容量・低価格にとどまっていたMVNOだが、NUROモバイルはそこから脱却できるのか。同社やNEOプランの動向には、今後も注目しておきたい。
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