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“打倒PayPay”でスタートした「d払い」アプリの刷新 賛否両論の決済音を導入したワケ石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2023年04月22日 09時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 ドコモのコード決済サービス「d払い」が、大幅にリニューアルされたのは3月16日のこと。事前にアナウンスされてはいたが、アプリを開いた際に初めてUI(ユーザーインタフェーイス)が刷新されていたこと気付き、その違いの大きさに驚いた人もいるはずだ。ドコモのコーポレートカラーである赤を前面に打ち出したデザインは、白やベージュが基調になり、dポイントカードも画面上部のスワイプだけで呼び出せるようになった。

d払い 3月16日にUIを刷新した「d払い」アプリ。その狙いを聞いた

 また、このリニューアルに伴い、これまで決済時に画面の遷移しかなかったd払いに、決済音が加わった。競合他社の決済サービスは当初から導入していたサウンドにも追随した格好だ。一大リニューアルを果たしたd払いだが、その狙いはどこにあったのか。同サービスのUIやUX(ユーザー体験)を担当したドコモのスマートライフカンパニー ウォレットサービス部の3人に経緯や成果を聞いた。

【訂正:2023年4月22日10時30分 初出時、タイトルを「妥当PayPay」としていましたが、正しくは「打倒PayPay」です。おわびして訂正いたします。】

狙うは打倒PayPay、使い勝手の差を埋めるために取り入れたアジャイル開発

 2018年4月に開始したd払いは、キャッシュレス決済の普及を追い風に、年々、規模を拡大している。2022年度の取扱高は、第3四半期までで1兆5030億円に達しており、2021年度通期での数字を既に超えてしまっている。数カ月の差ではあるものの、その歴史も、実はコード決済サービスでトップシェアを誇るPayPayよりも長い。

d払い 2018年4月に開始したd払いは、徐々に規模を拡大。2022年度第3四半期には、1兆5030億円に達した

 一方で、ユーザー数のシェアや決済の取扱高などでは、PayPayの後塵を拝しているのも事実だ。d払いをリニューアルした背景には、そんなドコモの危機感があった。同社のペイメント・企画担当、阿部能人氏は、その理由を赤裸々に語る。

 「d払いの利用者多くいますが、PayPayにはかなり負けている状況でした。ドコモ回線のユーザーでもかなりの割合の方がPayPayを使っている。かなりユーザーを取られている状態でした。理由を探っていく中で、競合の方が使いやすいという回答がありました。一方のd払いは、街のお店での支払いなど、ベースの機能で負けていて、なおかつ使い勝手の調査も各項目が全てマイナス評価でした。そうなるのは、かなり問題がある。そこで使い勝手をよくする動きを2年前からスタートし、UXチームが誕生しました」

d払い 「PayPayにかなり負けている状況だった」と語る阿部氏。その使い勝手を挽回すべく、2年前から改善の動きを始めていったという

 阿部氏が語っていたように、リニューアル自体は2年前にスタートし、1年前の2022年から、徐々にアプリに反映させていったという。例えば、「7月に支払い画面をリニューアルして、d払いとdポイントが別々だったのを1つの画面に表示できるようにした」という改善が、その1つ。これも「コンビニなどでPayPayで支払う人も、dポイントカードを出すことが多いのが分かった」(同)からだという。シームレスな体験を提供し、dポイントを起点にd払いの利用を促進するのが、その目的だ。

d払い 2022年7月には、d払いのコードとdポイントのコードを1画面に表示できる新機能に対応した

 d払いとdポイント同時表示機能は比較的大きなトピックで、いわば中間地点だが、細かなものまで含めると、2022年3月から「100カ所ぐらいの改善をやっている」(同)という。dポイントの利用をオンにすると画面上部から通知が出てバイブが鳴るようになったり、残高の金額を非表示にできるようにしたりと、さまざまな新機能を加えていった。

d払い 支払いにdポイントを充当しようとした際に、通知のようなポップアップとバイブが振動するようになった

 また、起動速度やコードの表示速度も「1年を通してきれいにしていったことがジワジワと効いて、速くなっている」(同)。Wi-FiやデュアルSIMで回線を切り替えるとすぐにログアウトしてしまう問題にも改善を施し、以前と比べると「数分の1程度まで落ち着いている」(同)。

 いわばチューニングとも呼べそうな細かなリニューアル作業を短期間で、かつ素早くできるよう、「2021年の秋ぐらいに、アジャイルで開発できる体制に変え、2週間に1回ぐらいのリリースをできるようになった」(同)。4月からは、その改善を「1週間に1回にしようとしている」(同)といい、スピードをさらに上げている。3月に実施されたUI刷新は、そんなリニューアルプロジェクトの集大成だ。

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