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“打倒PayPay”でスタートした「d払い」アプリの刷新 賛否両論の決済音を導入したワケ石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2023年04月22日 09時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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ついに導入した決済音、リニューアルの成否はいかに

 決済音を導入したことも、大きな話題になった。競合となるほとんどのコード決済は、サウンドが鳴るのが一般的だ。ただ、決済音には賛否両論があり、無音を貫くのがd払いの美点と捉える人もいただろう。サービス名を大きな音で読み上げるため、「恥ずかしい」という声は少なくない。決済サービス側も、音量調整機能を搭載するなどして、こうした批判に応えている。では、d払いはなぜ決済音を導入したのか。ペイメントサービス企画担当主査の郭スミン氏はこう語る。

 「d払いのサービスをローンチしたときには搭載しておらず、決済音には賛否両論あることは分かっていたので分析をしました。(搭載の)発端になったのは、お店のスタッフからの声です。コード決済は、画面で支払われたことを確認しなければなりません。音が鳴れば直感的に支払いが完了したことが分かり、オペレーションもはかどる。そういったご要望から、検討をスタートしました」

d払い 賛否両論あることを踏まえつつ、店舗の声を受け、決済音の検討をスタートしたと語る郭氏

 「お客さまにとってどうなのかも、綿密に調査しました。決済音が鳴ってほしいのか、ほしくないのか。音次第なところもありますが、一般論として、9割のユーザーが『音で知りたい』という回答でした。では検討しようというところから始めています」

 一方で、郭氏が話すように、評価はどのような音が鳴るかによるところも大きい。決済音に関しては「後発なので、これまでの決済事業者の音を分析しつつ、われわれのオリジナリティーをどう入れていくのかに時間をかけた」という。ドコモには、非接触決済サービスのiDで決済音を導入した実績があり、力強さと高級感を備えた音色は評価が高い。郭氏も、「あれを超えるほどではないが、あれ並みの好感を持たれるような音を作らなければならない」と思ったという。

 決済音の開発には、「TOUCH WOOD SH-08C」のCMである「森の木琴」を手掛け、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで3冠に輝いた清川新也氏を起用。「d払いの『d』の筆跡をヒントに、それを想起できるようにしていった」(同)という。dの筆跡に基づき、音が2段階になったのは、「コードを出し、決済が完了するというストーリー性もある」(同)。

d払い 結果として、「d」の筆跡をモチーフにしたサウンドを採用。d払いを想起できるとともに、「決済する」という行動に即したストーリー性のあるサウンドに仕上がった

 実は開発途中では、「d払いとサービス名を読み上げるものや、ポインコの声を使ったものなども制作したが、いずれも「アンケートでは微妙な結果だった」(同)。「マーケティング視点では名前を出した方がいいという意見もあったが、心地よさを大事にした」(同)という。

 こうしたリニューアルの結果、アプリの利用動向が大きく変わってきているという。まず、dポイントカードをスワイプで出せるようになり、表示される回数が「50%ぐらい増えている状況」(阿部氏)だという。支払いボタンだけを赤くして目立たせた結果、タップ回数も「27%近く増えている」という。リニューアルの方向性もおおむね好評で、「18%ぐらいの方が以前より利用したくなったと話している。逆に以前より利用したくなくなったという方は3%ぐらいしかいない」(同)。

d払い 2割弱のユーザーが、以前より利用したくなったと回答。逆に、不評は3%にとどまった
d払い 賛否両論あった決済音も、結果として利用を促進する効果の方が大きかったことがうかがえる

 こうした数値が、d払いの取扱高にどう影響してくるのかは、「今後(データを)取っていく予定」(同)で、現時点では結果が出ていないものの、少なくとも、ユーザーの行動を変えることには成功しているようだ。とはいえ、5500万ユーザーを突破し、決済取扱高も第3四半期までで5.7兆円に達したPayPayの背中はまだまだ遠い。アプリのリニューアルによってここにどこまで迫っていけるのか。d払いの今後の動向に、注目したい。

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