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“打倒PayPay”でスタートした「d払い」アプリの刷新 賛否両論の決済音を導入したワケ石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2023年04月22日 09時00分 公開
[石野純也ITmedia]

コンセプトは「インフラとしてのデザイン」、シンプルに導線を整理し情報をそぎ落とす

 UIの刷新にあたり、コンセプトとして掲げたのが、“インフラ”としてのデザインだったという。このプロジェクトを率いたペイメントサービス企画担当課長の永野優作氏は、d払いアプリには「それぞれの機能があって、それぞれのデザインを作っていた。1つに方向性が定まったいなかった」と振り返る。これを、1つにまとめていくよう、社内で承認を取り、作業を進めていったという。永野氏によると、目指したのはシンプルで使いやすいデザインだったという。

 「方向性としてインフラを目指したいと考えました。GAFA(Google、Amazon、Facebook《現・Meta》、Apple)は、シンプルで使いやすいデザインを採用しています。UXの考え方として7つの要素がありますが、GAFAはそれらを全て達成している。逆に中規模の会社のサービスは、意外とそれができていません。インフラを目指すということで、7つのうちの5つまでをしっかり作っていくことになりました。

d払い 1つのアプリ内で方向性がバラバラのデザインが同居していたというかつてのd払い。これをリニューアルすべく、一貫したコンセプトを導入したのが永野氏だ

 誰でも使えるシンプルを目指していきたいということを、社内の決裁者、エンジニア、デザイナー、企画の担当にそれぞれ紹介して、この方針でやらせてくれと示し、リニューアルに向けて進めていくという話を作りました。例えば、何かにエントリーしたいボタンがあったとき、今までだとエントリーボタンをボコッとさせて(飛び出るような処理を入れて)目立たせていましたが、(リニューアル後は)周りの情報を削り、シンプルに目立たせるようにしています」

d払い リニューアル後のUI、UXで目指したのが、インフラとしてのデザインだった

 7つの要素とは、UXデザインの第一人者として知られるピーター・モービル氏が提唱した概念で、1)役に立つ 2)使いやすい 3)探しやすい 4)信頼できる 5)アクセスしやすい 6)好ましい 7)価値がある の7つを指す。このうち、6と7はd払いそのものやドコモ全体にも関係するため、1から5までを満たすよう、「徹底的にその方向を目指した」(同)という。

 実際、リニューアル後のd払いは、シンプルながら情報が整理されており、どこに何があるのかが分かりやすくなった。また、「リテラシーの高い人は使っているので、お年寄りのようなレイトマジョリティーの方にももっと使ってもらいたい」(阿部氏)という思いから、誰もが親しめるようなビジュアルデザインを採用。「フォントサイズも大きくするなどして、無駄なものをそぎ落としつつ、見た目のデザインをしっかり作り込んでいった」(永野氏)という。

d払い 情報量をあえて減らし、シンプルで直感的に使えるビジュアルデザインを採用。より幅広い層を取り入れる工夫を盛り込んだ

 UIやUXの開発はコンペ形式で外部のデザイン会社に協力を仰いだが、結果として「ahamoのデザインを担当したフォーデジットにお願いし、『優しい』を定義し、指標を決めて調査していった」(阿部氏)。もちろん、視覚障がいや色覚障害のユーザーも想定しており、「アクセシビリティーのチェックもやり、ボタンと背景は全部満たしている」(同)という。

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