UIの刷新にあたり、コンセプトとして掲げたのが、“インフラ”としてのデザインだったという。このプロジェクトを率いたペイメントサービス企画担当課長の永野優作氏は、d払いアプリには「それぞれの機能があって、それぞれのデザインを作っていた。1つに方向性が定まったいなかった」と振り返る。これを、1つにまとめていくよう、社内で承認を取り、作業を進めていったという。永野氏によると、目指したのはシンプルで使いやすいデザインだったという。
「方向性としてインフラを目指したいと考えました。GAFA(Google、Amazon、Facebook《現・Meta》、Apple)は、シンプルで使いやすいデザインを採用しています。UXの考え方として7つの要素がありますが、GAFAはそれらを全て達成している。逆に中規模の会社のサービスは、意外とそれができていません。インフラを目指すということで、7つのうちの5つまでをしっかり作っていくことになりました。
誰でも使えるシンプルを目指していきたいということを、社内の決裁者、エンジニア、デザイナー、企画の担当にそれぞれ紹介して、この方針でやらせてくれと示し、リニューアルに向けて進めていくという話を作りました。例えば、何かにエントリーしたいボタンがあったとき、今までだとエントリーボタンをボコッとさせて(飛び出るような処理を入れて)目立たせていましたが、(リニューアル後は)周りの情報を削り、シンプルに目立たせるようにしています」
7つの要素とは、UXデザインの第一人者として知られるピーター・モービル氏が提唱した概念で、1)役に立つ 2)使いやすい 3)探しやすい 4)信頼できる 5)アクセスしやすい 6)好ましい 7)価値がある の7つを指す。このうち、6と7はd払いそのものやドコモ全体にも関係するため、1から5までを満たすよう、「徹底的にその方向を目指した」(同)という。
実際、リニューアル後のd払いは、シンプルながら情報が整理されており、どこに何があるのかが分かりやすくなった。また、「リテラシーの高い人は使っているので、お年寄りのようなレイトマジョリティーの方にももっと使ってもらいたい」(阿部氏)という思いから、誰もが親しめるようなビジュアルデザインを採用。「フォントサイズも大きくするなどして、無駄なものをそぎ落としつつ、見た目のデザインをしっかり作り込んでいった」(永野氏)という。
UIやUXの開発はコンペ形式で外部のデザイン会社に協力を仰いだが、結果として「ahamoのデザインを担当したフォーデジットにお願いし、『優しい』を定義し、指標を決めて調査していった」(阿部氏)。もちろん、視覚障がいや色覚障害のユーザーも想定しており、「アクセシビリティーのチェックもやり、ボタンと背景は全部満たしている」(同)という。
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