2023年5月16日、京セラは個人向け携帯電話事業から撤退すると発表した。今後は国内外の警察や消防など法人向けに高耐久性スマートフォンを販売していくことになる。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年5月20日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
家電メーカーであるソニーがXperia、シャープがAQUOSといったブランドで、ハイエンドで技術面をアピールしつつ、台数を稼ぐのはミドルクラスという展開をしていたのに対して、京セラはどちらかといえば、キャリアから発注された企画端末を得意としていた傾向が強い。
京セラもDIGNOといったブランドもあったが、もちろんハイエンドではなく、エントリーモデルであったため、ブランド認知という面が弱かった。
京セラはKDDIとの結びつきが強いが、昨年度、KDDIはモバイルデバイスの出荷台数を前年から260万台も減らしている。当然、iPhoneやGalaxyが優先されるわけで、結果として、KDDIへの依存度が強かった京セラのポジションが無くなってしまったということだ。
今後、子どもやシニア向けを作っていた京セラが撤退することで「漁夫の利」を得る日本メーカーも出てくることだろう。
ただ、京セラが撤退を発表する一方で、アップルが新しいアクセシビリティ機能を公開してきた。いまのところは英語のみの対応のようだが、iPhoneやiPadでシンプルな表示が適用される「Assistive Access」という機能が搭載されるようになる。これに切り替えることで、大きな文字でボタンが表示されるようになり、色自体もコントラストが高くなるという。
ぱっと見は、まさに「らくらくスマホ」や「シンプルスマホ」といえる操作性となっている。
これまでこうした取り組みは日本メーカーが得意とするところだった。
シニアを徹底的にリサーチし、使いやすいユーザーインターフェースに仕上げるというのが、日本メーカーの生きる道であった。
アップルも当然のことながら、これまでもアクセシビリティ機能を強化してきた。今回、さらに一歩踏み込んで、見た目から一新させてくるのには驚いた。
また、アップルでは「Live Speech」として、自分がいいたいことをテキスト入力すると電話やFaceTime、対話で音声で伝えられるようになる。
さらに、利用者によく似た音声を生成できる「Personal Voice」もあり、将来的に自分の声を失ってしまうことがあっても、音声を生成しておけば、家族との音声コミュニケーションが続けられるというものだ。
さらに「Point and Speak」は、利用者の指の動きに合わせて、目の前にある文字をカメラが読み上げてくれるというものだ。現在、TBSテレビ系で日曜夜にやっている「ラストマンー全盲の捜査官ー」で出てくるデバイスに近い使い勝手を実現してしまっている。
アクセシビリティの世界も、もはやAI勝負になろうとしている。日本メーカーが単に「ボタンを大きく表示する」程度の機能だけでは生き残っていけないだろう。
© DWANGO Co., Ltd.