月額1390円で10GB+5分かけ放題 日本通信が“激安プラン”を提供できる理由――福田社長に聞くMVNOに聞く(3/3 ページ)

» 2023年05月30日 11時13分 公開
[石野純也ITmedia]
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帯域課金とパケット課金それぞれにメリットがある

―― 仮にパケット課金が実現すれば、今MVNOで起こっているお昼休みの速度低下もなくなりそうです。

福田氏 速度はまったく同じになるので、そういう問題はなくなります。同じ原価で勝負できた方が、フェアな市場環境になると思います。

―― ただ、帯域課金は帯域課金でメリットがあると思います。

福田氏 IoTなどのように、あるキャパティを有効活用した方が勝ちというようなときには帯域課金が有効です。うちも量的に言えば、監視カメラ用など、上りの通信が多いものが結構あります。下りばかりが多いのであれば、上りが余るので、それをミックスしてビジネスにしています。

 おっしゃるように、それはそれで必要です。帯域とはイコール周波数なので、周波数の有効活用にもつながります。もともと、うちが帯域課金を主張した理由も、周波数の有効利用でした。キャリアより高い効率でできれば、ビジネスを拡大するインセンティブになります。ただ、一方で当然課題もあり、違うやり方も必要です。特に算定方式については、疑念のないやり方はやはり必要だと思います。

―― パケット単位でいくらとなると、使い放題のようなプランはMVNOのリスクになりそうですが、歯止めはあるのでしょうか。

福田氏 (何らかの歯止めは)必要になるでしょうね。ただし、キャリアの方でもこういう使われ方は困るというものがあり、トラフィックを分析して止めています。

 これは通話もそうです。(接続料の差額を利用し、不正に大量の通話をする)トラフィックポンピング的なものは、最初の方でやられました。もともとそういうものがあるので定額は無理と言っていましたが、実際やってみて、ちゃんと分析できれば止められることも分かりました。止めていけば、そのうちトラフィックポンピングもなくなります。あの家は泥棒が入り放題という評判が広がれば、泥棒が集まってしまいますが、ガードが堅いと知られればみんな逃げていくのと同じです。こういうものは最初の方できちんと止めておくことが重要で、これはデータになっても同じです。

トラフィックポンピング 発信側事業者がかけ放題を利用して大量に発信することで、着信側事業者に支払う接続料を搾取する「トラフィックポンピング」が問題視されている(第71回接続料の算定等に関する研究会の資料より引用

海外ユーザー向けにソフトバンク回線のサービスも人気

―― ところで、以前はソフトバンク回線もやられていましたが、あちらはどうなりましたか。

福田氏 あれも、実はけっこう伸びていて。海外事業者が日本でやるサービスがあり、端末の事情でソフトバンクを選んでいます。

―― 周波数的にグローバルバンドが多いからでしょうか。

福田氏 そうです。ソフトバンクのネットワークがいいと、指名があります。コストは高くなるのですが、そのぶん料金が高くてもいいと選ばれています。

―― もう少し具体的に、どういう用途なのかを教えてください。

福田氏 プロジェクトのために3カ月間だけ日本に来るといった場合や、日本に留学してくる方にサービスを提供している会社があります。イギリスで展開している会社で、携帯電話のローミングが一般的ではなかった時代からの付き合いがありました。その会社は大企業をきちんと押さえていて、ニーズもあります。

―― なるほど。ただ、合理的○○プランのソフトバンク回線となると、やはり難しいですよね。

福田氏 音声卸ができないと難しいですね。うちが出していないというのは、そういうことです。他のMVNOは、それと同じような条件でドコモから調達している。やはり、音声が原価ベースで入れられるようになったということが重要です。最終的には、今申し入れをしている音声接続を仕上げることで、次のステップにつながります。

取材を終えて:パケット課金は5G時代に有効な手段になり得る

 合理的みんなのプランがこのタイミングで改定された背景には、MNPワンストップ方式の開始があった。データ容量を増やし、通話定額を選択できるようにすることで、主回線として日本通信を選ぶユーザーを増やしていくのがその狙いだ。いくら原価の値下げに成功したとはいえ、月額料金が290円だとなかなか売り上げも上がらない。合理的みんなのプランを選びやすくすることで、収益性を高める意図もありそうだ。

 今回の料金プラン改定とは別に、福田氏が提案していたパケット課金も5G時代には有効なアイデアだと感じた。MVNOがどちらかを選択できるようになれば、料金プランやサービスにも幅も広がる。低容量・中容量が主戦場のMVNOだが、課金体系が変われば、その生存領域が広がる可能性もある。今後の議論の行方にも注目したい。

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