スマホ新製品が1年前から大きな進化なし? 円安&物価高で透けて見えるメーカーの苦悩石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2023年06月17日 09時12分 公開
[石野純也ITmedia]

 オウガ・ジャパンは、6月13日にReno Aシリーズの最新モデルとなる「OPPO Reno9 A」を発表した。発売は6月22日。大手家電量販店やネット通販、MVNOなどがオープンマーケット版を取り扱う他、ソフトバンクのY!mobileや楽天モバイルがキャリア版を販売する。先代の「OPPO Reno7 A」で導入した「長持ち」のコンセプトを継承しつつ、快適な操作感により磨きをかけたのがReno9 Aの特徴だ。

 Reno Aは、OPPOが日本市場に特化したモデルとして開発してきたシリーズで、おサイフケータイや防水・防塵(じん)といったグローバルモデルにはない機能を加えている。単にグローバルモデルを日本仕様に改良しただけでなく、プロセッサの選定やデザイン、さらにはプロモーション戦略に至るまで、市場のニーズに合わせて作り込み、ヒットモデルに成長した。一方で、Reno9 Aは、先代のモデルから大きく進化していない印象も受ける。こうした仕様からは、端末メーカーの苦悩が透けて見える。

OPPO Reno9 A オウガ・ジャパンは、日本市場に特化したReno Aシリーズの最新モデルとなるReno9 Aを発売する

ローカライズの徹底でベストセラーになったReno A、コンセプトには変化も

 Reno9 Aは、初代モデルの「OPPO Reno A」から数えて5世代目の端末。そのコンセプトは一貫しており、歴代モデルはどれも、ほどよい性能と廉価な端末価格を両立したコストパフォーマンスの高さや、日本市場に合わせた機能やデザインが評価されてきた。後発として日本に上陸した中国メーカーがいち早くローカライズに取り組んだことも、注目を集めるきっかけになっている。

OPPO Reno9 A Reno Aは、2019年から続くシリーズ。初代のReno Aは、どちらかというと価格に対しての処理能力の高さや日本仕様を売りにしていた

 こうした端末やOPPOの姿勢が評価され、Reno Aシリーズは世代を経るごとに規模を拡大。2世代目の「OPPO Reno3 A」では、大手キャリアとしてY!mobileや楽天モバイルが販路に加わった他、2022年のReno7 AではKDDIも取り扱いを始め、auやUQ mobileでも購入が可能になった。ミドルレンジモデル台頭の波に乗り、右肩上がりで成長を続けてきたシリーズと言えそうだ。

OPPO Reno9 A
OPPO Reno9 A 2022年に発売された先代モデルのReno7 Aは、auやUQ mobileも取り扱っている

 その結果として、初代Reno Aから2022年のReno7 Aまでの累計出荷台数は180万台を突破している。1機種あたりの平均を取ると、その数は45万台に上る。2022年6月に開催されたReno7 Aの発表会では、出荷台数が130万台と公表されていた事実を踏まえると、Reno7 Aが加わったことで50万台底上げされていることが分かる。スマートフォン全体ではキャリア市場に強い他社の後塵を拝しているものの、オープンマーケットでは依然として存在感が強く、2022年の販売ランキングでは首位となった。

OPPO Reno9 A 3月までのシリーズ累計で、出荷台数は180万台を突破した
OPPO Reno9 A こちらは1年前に示されたデータ。差し引きすると、Reno7 A発売後に50万台伸びていることが分かる

 そんなReno Aシリーズだが、Reno7 Aではややその性格を変えている。「ときめき、長持ち」をコンセプトに据え、より長期間使えるようなシステム劣化機能を全面に打ち出した。端末自体のコンセプトが大きく変わったわけではないものの、中国メーカーならではのコストパフォーマンスをとがらせるのではなく、“安心感”や“長持ち”を重視したという点では、ブランディングを転換させたといえる。

OPPO Reno9 A 2022年に開催されたReno7 Aの発表会。このモデルから、長持ちや快適さといったフィーリングが重視されるようになった。スペック推しだったOPPOにとっては、路線変更といえそうだ

 Reno9 Aも、その路線を継承。より快適に使えるよう、ソフトウェアには新たに「Dynamic Computing Engine」を採用。アプリがメモリのリソースを使う際の割り当てを最適化することで、より動作が安定するようになった。Reno7 Aでは6GBだったメモリを8GBに増量したことも、安定感向上に貢献する。ストレージを仮想メモリとして使用する「RAM拡張機能」を有効にすると、メモリは最大で16GB相当まで増やすことが可能だ。

OPPO Reno9 A Reno9 Aでは、快適さが長持ちするための仕掛けとして、Dynamic Computing Engineを採用した

 また、Reno7 Aで取り入れた、光を反射させ、キラキラと輝く「OPPO Glow」を継承しつつ、背面の素材をガラスに変更している。この仕様変更によって、より硬質感が高まった他、サラサラとした手触りも実現した。Reno7 Aのコンセプトに磨きをかけ、より完成度を高めたモデルがReno9 Aというわけだ。使い勝手とデザインの両面を進化させたともいえる。

OPPO Reno9 A 背面に輝きを加えるOPPO Glowは継承。ただし、素材を樹脂からガラスに変え、より高級感を高めている
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