ドコモに聞く新料金「irumo」の狙い 矛盾しているように見える仕様にはワケがあった(2/3 ページ)

» 2023年08月16日 11時45分 公開
[石野純也ITmedia]

OCN色を完全に消す方向に持っていくのか、資産は生かすべきかを議論

―― そうなると料金体系がOCN モバイル ONEに似てしまいます。MNOとMVNOの違いで料金が上がるのは仕方がないとは思いますが、単純比較できると、どうしても値上げしたように感じてしまいます。ここは、あまりOCN モバイル ONEに寄せすぎず、サブブランド対抗色を全面に打ち出した方がよかったのではないでしょうか。

山本氏 先ほどお話ししたように、従前から議論して3GBを中心に料金プランを考えていた中、NTTレゾナント吸収の話もあり、ジョインしてもらいました。その知見を生かしたいという思いが、ちょっと出すぎていたのかもしれないですね。例えば、吸収合併のタイミングがズレていたなら、そのような見方はされなかったのかもしれません。

 ただ、そういう声は徐々に薄れています。きちんとドコモの料金プランとして認知していただければ、MVNOと比べてどうこうというお話は出てこなくなってくるのかなと思っています。

―― その意味で、石原さとみさんをCMに起用したのも、OCN モバイル ONEを引きずっているような印象を受けます。石原さとみさんはいいのですが(笑)。

山本氏 あれも随分議論しました。OCN色を完全に消す方向に持っていくのか、資産は生かすべきか。結果的に、資産を生かした方がいいということで、OCN モバイル ONEが生まれ変わったようなリリースの仕方になりましたが、一方で、あれが誤解を招く要素になったのかもしれないですね。ただ、ああいった打ち出し方でOCN モバイル ONE(の後継)だと認知し、そのイメージに引っ張られるのは、かなりわれわれのことをご存じの方だと思います。

irumo irumoサイトのトップページには石原さとみさんが登場。石原さんもOCN モバイル ONEから“移行”した形だ

OCN モバイル ONEから強制的に移行させる思いはない

―― そのOCN モバイル ONEは、新規受付を終了しています。移行はどのように進めていくのでしょうか。

山本氏 0.5GBはほぼ同じような料金体系なので、自然に移行は進むと思っています。それ以上になると、価格コンシャスな方がかなり多い。ドコモ光に入っている方はスムーズにいけそうなので、こちらからオファーはしていきますが、それ以外の方には何らかの特典を用意しないと、なかなか一気に進むことはないと思います。これは、ユーザーの動きを見ながら検討したいですね。ただし、強制的に移行させるような思いはありません。

irumo OCN モバイル ONEは既に新規受付を停止しているが、サービス自体は継続して利用できる

―― ただ、0.5GBプランには3Mbps制限があり、ネットワークも4Gまでです。OCN モバイル ONEにはそういった制限事項はなく、データ容量と金額が違うだけでしたが、なぜこのような仕様になったのでしょうか。

山本氏 0.5GBであの値段を実現するには、それ相応の機能を絞る必要があり、その一環の中でやらせていただきました。実態も見て、0.5GBしか使わないなら、あのスループットと4Gで十分利便性はあると判断しています。0.5GBを選ぶ方はWi-Fi中心になると思いますので、モバイルではそこまでスピードを重視しないと思います。

―― ユーザーはMNPなどをしなければそのまま使い続けられますが、ドコモと相互接続している帯域が徐々に減っていくということはないのでしょうか。同じドコモ提供のMVNOになったので、接続料は気にする必要性があまりなさそうですが。

山本氏 今のところ、(帯域を減らすような話は)聞いてないですね。ドコモグループが出ていかれてしまうのは困るので、適切なタイミングでマイグレーション(移行措置)をしていきます。

―― KDDIの場合、MVNOだったUQ mobileをユーザーごと統合しています。OCN モバイル ONEをそのままirumoにして、徐々にドコモ側と統合していくというようなお考えはなかったのでしょうか。

山本氏 当時の議論ではなかったですね。MVNO品質と、われわれが提供したいドコモのMNO品質はそもそもが違います。彼らのプランをそのまま統合すると、強制移行になってしまうこともあり、実現がなかなか難しかったと思います。そこは議論の俎上(そじょう)にも載らなかったですね。

名前は極めて分かりやすく、ドコモらしいものにしたつもり

―― 先ほどアップセルのお話がありましたが、irumoで足りなければahamoというようなルートを想定されているのでしょうか。

山本氏 ギガライトとギガホを一本化したようなeximoも同時に出しているので、そちらもあります。サポートを充実させてほしい、家族内の通話をしたいという方は、eximoにするというアップセルの仕方もあります。逆に、リテラシーが高く、サポートはいらないという方には、irumoからahamoという道筋もあります。

―― その意味で、irumoはリテラシーの高い人と低い人、両方に対応でき、ターゲットが二極化している印象があります。

山本氏 irumoは低料金を実現するために機能を絞り込んでいるので、リテラシーが高い人向けという見方はあります。確かに、それも1つのかたまりとして想定をしています。低容量は、賢くWi-Fiを使いたい方にも向いています。一方で、データ通信を本当にそこまで使わないシニアの方もいます。サポートは必要だが、データ通信は使わない――そういった方にもirumoはお勧めできます。

 リテラシーが高めで効率的にご利用される方と、本当にデータ通信はあまり使わず、通話やメールなどのコミュニケーションを重視する方では、ユーザー像が全く違います。irumo(の仕様やコミュニケーションの仕方に)に矛盾があると感られるのは、そういった異なるターゲットを狙っている部分があるからだと思います。

―― 発表後、名前が覚えづらいという声や、ahamo寄りでシニアに分かりづらいのではという声がありました。しかしながら、お話を聞いていると、シニア世代はドコモショップで契約するため、極端に言えば、料金プラン名は知らないということもあるのではないでしょうか。それを狙って、名前はリテラシーが高い人寄りにしたのでしょうか。

山本氏 異なるターゲット像の両方にハマるものとして、極めて分かりやすいもので、かつドコモらしいものにしたつもりでした。ドコモにahamoがあったので、「〇〇モ」で3文字がいいのではないかとなりました。特にリテラシーが高い人を狙ってネーミングしたわけではなく、分かりやすさを求めていき、irumoにたどり着きました。

 irumo、ahamo、eximoと名前を3つ立てたので注目していただけましたが、他社でも、プラン名を覚えてもらうことが大事かというと、必ずしもそうではありません。お店に来ていただければ、3プランのどれが合っているのかというコンサルはします。名前を認知いただければうれしいのは確かですが、(料金プランには)そういった側面もあります。

―― irumo専用サイトがスタイリッシュなのも、やはり自分でサイトを見るようなリテラシーの高いユーザーを意識しているのでしょうか。

irumo irumoサイトの料金紹介も、ahamoサイトのように、凝ったデザインにしている

山本氏 ahamoに近い形で、1つのターゲットであるリテラシーの高い方に向けています。irumoを全面に出し、料金プランを変更できた方が便利かなと思い、ahamoの知見に基づいています。一方で店頭サポートを設けているので、そちらもにぎわっている状況です。

古川氏 裏側ではmy docomoに飛ぶような仕組みで、細かい手続きはそちらを使っています。

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