AppleのAirDrop対抗? GoogleがAndroidの「ニアバイシェア」を刷新するワケ石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)

» 2024年01月13日 09時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 米ネバダ州ラスベガスで開催されたCESに合わせ、GoogleはAndroidの「ニアバイシェア」を刷新することを発表した。Wear OSに続き、タッグを組んだのはサムスン電子だ。同社のGalaxyシリーズが搭載している「クイック共有」機能を“Android標準”に格上げすることで、機能やユーザー体験を強化する。機能のロールアウトは2月から。ニアバイシェアに対応するAndroid 6.0以上の端末は、いずれもクイック共有に対応する予定だ。

クイック共有 Googleは、CESに合わせニアバイシェアをクイック共有に変更する方針を明かした。クイック共有は、Galaxyシリーズに搭載されているファイル共有機能だ

 また、ChromebookやWindows PCにも、クイック共有を展開していく。Googleの発表によると、LGエレクトロニクスなどのメーカーと協力し、自社OSのChromebookだけでなく、Windows PCにもクイック共有をプリインストールしていく方針だ。サムスンとタッグを組んでAndroidのエコシステムを強化しているGoogleだが、ニアバイシェアをクイック共有にするメリットはどこにあるのか。ここからは、iOS対抗を打ち出したいGoogleの狙いも透けて見える。

ニアバイシェアより多機能なのが魅力なGalaxyのクイック共有

 スマートウォッチなどのウェアラブル向けOS「Wear OS」を、サムスンが開発してきたTizenに統合すると発表したのは2021年のこと。同年に発売された「Galaxy Watch4」を皮切りに、Wear OSは続々と新バージョンに切り替わっている。Google自身が手掛ける「Pixel Watch」シリーズも、この新Wear OSをベースにしている。Wear OSと銘打たれてはいるが、Tizen側にWear OSを統合しており、省電力性能やパフォーマンスが向上している。

クイック共有
クイック共有 ウェアラブル端末向けのOSでも、Googleはサムスン電子と協力。サムスン電子が開発を推進してきたTizenを取り込んでいる。2社とも、そのOSを使ったスマートウォッチを投入している

 これに続くサムスン電子との大きな機能統合が、ニアバイシェアのクイック共有への刷新だ。ニアバイシェアとは、ピアツーピアのファイル共有機能。iPhoneやiPad、Macに搭載される「AirDrop」のAndroid版と言えば、Androidを使ったことがないユーザーにも理解がしやすいだろう。これに対し、クイック共有はサムスン電子がGalaxyシリーズの「One UI」に独自実装している機能。以下の画面のように、GalaxyではAndroid標準のニアバイシェアとクイック共有の両方を利用できる。

クイック共有 ニアバイシェアは、Android共通のファイル共有機能。共有メニューから呼び出し、写真や動画などのデータを送受信できる

 ニアバイシェアとクイック共有は、ほぼ同じ役割を持った機能。裏側でBluetoothやWi-Fi Directを活用している点も、共通項といえる。だが、違いもある。前者はAndroid標準のため、幅広い端末で利用可能。対する後者のクイック共有は、Androidの中でもGalaxy同士でしか利用できないが機能は豊富だ。例えば、「プライベート共有」という機能。これを使うと、相手がデータにアクセスできる期限を決めたり、スクリーンショットの取得を禁止したりといったルールを定めることができる。

クイック共有 Galaxyのクイック共有は、ニアバイシェアと同等の機能に加え、プライベート共有という機能も備える。これを設定すると、データを閲覧できる期間を決めたり、スクリーンショットの取得を禁止したりといった制限を加えることが可能になる

 また、送信だけであれば、Galaxy以外のスマホにも対応している。モバイルデータ通信やWi-Fiを使って一時的にサムスン電子のクラウドに、ファイルを保存する機能があるからだ。そのURLをQRコードで相手に読み取ってもらったり、LINEやMessengerなどのアプリで送信したりすれば、相手がファイルを受け取れる。外出時などはモバイルデータ通信でアップロードすることになるため、動画などのGBクラスのファイルには向かないが、デバイスを問わないのは魅力だ。

クイック共有 URLの送付やQRコードで、Galaxy以外のデバイスにデータを送ることも可能。この場合、送信するデータはサムスン電子のクラウドに一時保存される

 クラウド経由でファイルを受け渡せるため、OSの違いも問わない。Galaxy以外のAndroidスマホはもちろん、iPhoneにも送信することができる。iPhoneからGalaxyを含めたAndroidスマホには“エアドロ”ができない一方で、Galaxyからであれば、iPhoneであろうがGalaxy以外のAndroidであろうが、ファイルを共有することが可能というわけだ。Galaxy同士のピアツーピアの通信と、クラウド経由のファイル送信をシームレスに統合している点は、クイック共有の優れたユーザーインタフェースといえる。

シンプル化がサムスンのメリットか 機能面での統合はどこまで進む?

 一方で、Galaxyシリーズにはニアバイシェアとクイック共有の両方が実装されているため、ユーザーにとって分かりづらくなっていたのも事実だ。Galaxy同士であれば、クイック共有を選んだ方がスムーズにファイルの共有をできるのは事実だが、アプリの共有メニューで最初に表示されるのはニアバイシェア。クイック共有は、他のアプリのアイコンと並んでいるため、見逃しやすい。

 また、Galaxyとそれ以外で、機能を使い分けるのも少々面倒だ。Galaxy同士やiPhoneにファイルを送りたいときにはクイック共有、その他のAndroidデバイスに送る場合にはニアバイシェアと、ユーザーが相手を見ながら考えなければならず、一定のスキルが必要になる。ニアバイシェア側は、AndroidやChromebookであれば、相手を選ばないのがメリットだが、iPhoneやiPad、Macにデータを送ることができない。 ファイル共有の仕組みがAndroid内で“分断”されていることで、複雑性が増していたといえる。

クイック共有 GalaxyもAndroidであることに変わりはなく、共有メニューにニアバイシェアとクイック共有が両方表示されてしまう。どちらを選べばいいかが分かりづらい点は、初心者泣かせといえそうだ

 Androidの標準機能として統合されるクイック共有が、今のままの形であれば、ある程度これらの問題を解決することが可能になる。Galaxyユーザーは、2つのファイル共有機能が1台の端末に同居することがなくなり、体験がシンプルになる。どこまで今のクイック共有を再現できるかにもよるが、現行のニアバイシェアより機能は多彩なため、Androidユーザー全体にとってもメリットは多い。

 ただし、これは統合後の新クイック共有が、現行と同程度の機能を備えていたときの話。少なくとも、Galaxy以外のAndroidスマホとGalaxyでクイック共有を使ってファイルの交換ができることになるのは確かだが、クラウド経由のデータ送信やプライベート共有まで“移植”されるかは明かされていない。

クイック共有 Googleの発表では、端末同士のダイレクトなファイル共有には言及があるが、サムスン電子が独自に実装した機能には触れられていない

 発表では「サムスンとの協業により、クイック共有の名のもと、最高の共有ソリューションを単独のAndroidプラットフォームをまたがったソリューションにまとめた」としているが、クラウド経由のファイル送信やプライベート共有といった機能は、Galaxyシリーズの独自拡張という扱いになる可能性もある。

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