世界を変える5G

終わりの見えないドコモの通信品質改善 d払いアプリの活用で“パンドラの箱”を開く恐れも石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2024年02月03日 10時00分 公開
[石野純也ITmedia]

鉄道動線の対策やイベント対応も強化、d払いをエリア特定にも活用

 ここまでは“点”での対策だが、ドコモは鉄道動線に沿った“線”での対策も進めている。基本的な手法は先に挙げた基地局の角度調整や出力調整、指向調整などだが、こちらも12月時点で一通りの対応は完了したという。一方で、4Gと5Gの切り替えを高速化したり、設備自体を増設したりといった対応は、現在も継続している。その結果として、対策後は乗車時間の90%で動画の視聴が可能になった。それでもまだ10%は、動画の再生が止まってしまうが、小林氏は「ここについては継続して改善を実施していく」と語る。

ドコモ “点”としてのエリアだけでなく、鉄道動線に沿った“線”の対策も進めている

 こうした一連の対策の結果として、SNSでのドコモ回線に対するネガティブな声は、3月時点との比較で、約75%減少したそうだ。4月や10月はドコモが記者会見を開催したことが引き金になった、不満が噴出しすぎたため、その直前である3月の1週間と、12月の1週間に、X(旧Twitter)に投稿された不満の声を分析。3月は、「渋谷駅のホームのアンテナが撤去された次の月」だったため、不満の声が増え始めたタイミング。こことの比較では、大幅に状況が改善されたという。

ドコモ 一連の対策の結果、Xでの不満の声は75%減少したというが……

 日常的な通信品質の改善に加え、ドコモはイベント対応も強化。12月に開催された「コミックマーケット103」では、会場となった東京ビッグサイトに5Gの基地局を増設。基地局をチューニングした上で、投入する移動基地局車の数も増やしている。イベント時の計測では、スループットが約1.5倍になり、Xで不満を述べる投稿も、夏の「コミックマーケット102」と比較すると80%減少したというデータを紹介した。

ドコモ コミケをはじめとしたイベント対応も強化している

 また、品質劣化を検知するために、ドコモはアプリも活用し、場所をきめ細かに特定していく方針だ。当初の発表では、「ドコモスピードテスト」を対象にしていたが、一般的ではないアプリのため、その効果に疑問符がついていた。こうした声を受け、ドコモは「d払い」のデータも活用することにしたという。具体的には、d払いでバーコードが表示されるまでの時間を使い、それをエリア情報と掛け合わせるという。

 位置情報の特定にはGPSなどは利用せず、「基地局のどのセクター(電波を複数方向に分けて吹く際のまとまり。3方向や6方向に分割している)の、どの周波数かを見ている」(同)。都市部は基地局が密に配置されているため、このデータで場所を特定していくという。一般のユーザーが、日常生活の中で使うアプリのデータを活用することで、対策すべきエリアを早期に発見していけるようになる。そのd払いのデータ活用は、1月中旬から始まっているという。

ドコモ 体感品質の劣化を早期に検知するためのアプリとして、d払いも活用していく

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