世界を変える5G

KDDIが語る「パケ止まり」対策 2024年度は5G本来の力を発揮、基地局数も大きな武器に(1/2 ページ)

» 2024年02月16日 06時00分 公開
[田中聡ITmedia]

 KDDIが2月15日、5Gエリア展開と通信品質向上に向けた取り組みを説明した。携帯キャリア各社が2020年に5Gサービスを開始してから、間もなく4年を迎えようとしている。アフターコロナで人流が戻り、各社はトラフィックの予測や基地局のチューニングで難しいかじ取りを迫られている。KDDIはどのような工夫で通信品質の向上に努めているのだろうか。

KDDI5G KDDIの5Gネットワーク戦略について説明する、執行役員 技術統括本部 技術企画本部長の前田大輔氏(写真提供:KDDI)

5G導入期は4Gの転用でエリア拡大、パケ止まりを抑える基地局のチューニングにも尽力

 KDDIは、2020年から2023年度末までの4年間を5Gの「導入期」に位置付けている。5Gの新周波数は、屋内で浸透しにくい高周波数を用いているため、4Gの周波数を5Gに転用してエリアの「面」を広げていった。

KDDI5G 2024年度を境に、5Gの導入期と普及期が入れ替わる
KDDI5G 5G導入期は4Gの周波数転用でエリアを広げ、5G普及期には5Gの高周波数エリアを一気に拡大する

 KDDIは初期段階から生活動線を重視してエリア拡大を進めており、2024年2月時点で鉄道は48路線、商業施設は398エリアをカバーしている。2023年のアフターコロナで戻ってきた人流にも対応してきた。「コロナ禍に入ってお客さまの人流が止まったが、2023年5月ごろからアフターコロナで一気に人流が復活して、生活動線のトラフィックが上がってきた。ただ、当初から生活動線を優先して5Gをエリア展開していたので、人流回復によるトラフィックにもミートできた」(KDDI 執行役員 技術統括本部 技術企画本部長の前田大輔氏)

KDDI5G 5G導入当初から生活動線のエリア化に努めてきた

 その上で、5Gのセル端で弱電波をつかんでしまい通信しにくくなる「パケ止まり」や、トラフィック増によってデータが流れにくくなる「パケ詰まり」の対策も行ってきた。その際に役立ったのが、3Gから4Gに移行した際に蓄積したチューニング技術だったという。

 セル端でのパケ止まりについては、5GのNSA(ノンスタンドアロン)で同時に使う4Gのアンカーバンドに遷移させることで解消に努めている。ただし、アンカーバンドに収容するユーザーが増えると混雑して、今度はパケ詰まりが起きてしまう。そこで、異なる4Gバンドへ誘導して負荷分散するチューニングを行っている。KDDIは比較的多くの4G周波数を持っているため、分散する周波数に余裕があることが強みになる。

 また、4G周波数を転用する際、既存の4Gエリアと重なると、システム間干渉が起きてしまうという。「これが多くなると、品質が劣化する」(前田氏)ため、干渉エリアをいかに縮小できるかが重要になる。「5Gエリアは出力を上げるが、干渉エリアは5Gの出力を下げている。4G側も出力を下げるチューニングをすることで、干渉を抑える努力をしている」(前田氏)

KDDI5G 4Gと5Gの周波数や面を品質課題の解消に努めてきた

 KDDIは、自社のビッグデータに基づくパケ止まりの発生率を4キャリアごとに収集。競合他社は具体名を挙げず「A社」「B社」「C社」としている。「A社(恐らくソフトバンク)が、周波数の使い方で同じ戦略を取っており、2023年4月の段階では少しリードしていた。われわれも、追い付く形で日々の努力を続けてきたが、直近では同等の所まで来た」と前田氏は手応えを話す。ちなみにB社とC社(恐らくいずれかがドコモか楽天モバイル)は、au・A社と比べて2倍以上、パケ止まりが発生している。

KDDI5G 競合他社と比較した、パケ止まりの改善状況

 このデータはKDDIの基準で取っているので必ずしも客観的なデータとはいえないが、こうした通信品質の競争は重要だと前田氏は考える。「日々の事業者間の切磋琢磨が続いていることで、日本の5G品質も向上していくと考えている」

 データやAIを活用した品質向上にも努めている。端末ごとの品質データ、基地局で収集している統計データ、SNSでのユーザーの声、(つながりにくい際の相談窓口)電波サポート24のデータを掛け合わせ、品質の劣化が大きい場所から対策しているという。こうしたビッグデータの要因分析、基地局トラフィックの監視、分散を自動化し、スピーディーに通信品質を改善できるよう努めている。

 前田氏によると、データ分析を自動化したことで、分析時間を約8割短縮できるようになったという。さらに、データに基づく対策も自動化しており、「輻輳(ふくそう)を検知したら、自動的にその基地局のトラフィックをコントロールする」(前田氏)仕組みも取り入れている。

KDDI5G
KDDI5G データの検知→分析→対策を自動化することでスピーディーな改善に努めている

2023年度までに約3.4万局を開設 衛星干渉を抑えてSub-6本来のパワーを発揮

 2024年度以降は5Gの普及期と位置付け、5Gの新周波数をより積極的に運用して、新周波数のエリアを拡大していく。KDDIは、Sub-6(6GHz帯未満の周波数)の3.7GHz帯と4GHz帯で100MHzずつの計200MHz帯を運用しており、2023年度末までに3万4267の5G基地局を開設する計画だ。これは競合のNTTドコモ、ソフトバンク、楽天モバイルと比べても多い数字で、この計画通りで考えると、2024年度からKDDIは2倍以上多くの基地局を運用することになる。なお、現時点での5G基地局数は非公表としている。

KDDI5G KDDIはドコモと並び、100MHzの5G周波数を2ブロック保有している。2023年度末までに計画している5G基地局の開局数はKDDIが最多となっている

 さらに追い風となるのが、衛星通信と5Gの干渉条件が2023年度末に緩和されること。現在、衛星通信の地球局は、下りの通信にCバンドと呼ばれる3.6GHz〜4.2GHz帯を使っており、KDDIが運用しているSub-6と重なってしまう。そこで、地球局周辺の対象エリアでは、衛星通信と干渉しないよう、基地局からの電波の出力を100分の1程度に抑えている。この干渉条件が2023年度末をめどに緩和されるので、「基地局からの出力を一気に引き上げられるようになる」と前田氏は話す。

KDDI5G 衛星通信との干渉条件が緩和されることで、より高い出力で5G基地局を運用できるようになる

 衛星との干渉を抑えているエリアは首都圏だが、この首都圏で、2023年度末までに6000局ほどの5G基地局を開設する予定。衛星干渉によって出力を下げている基地局が2000局ほどあるため、2024年度第1四半期では、首都圏でカバーできるSub-6のメッシュ数がトータルで2倍ほどに広がるという。Sub-6の持つ本来の力を発揮できるようになることが、5G普及期の大きな動きとなる。

 KDDIは、環境に配慮した基地局建設も進めている。2023年6月から、昼間は太陽光パネル、夜は再生エネルギーを活用した「サステナブル基地局」を利用している。2023年12月からは、曲がる太陽電池を活用した「ペロブスカイト基地局」を運用。こちらは敷地面積の少ない基地局でも太陽光発電できることがメリットだ。そして2024年1月からは、「GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)基地局アンテナ支持柱」を採用。軽量化しているのでクレーンで設置する必要がなくなり、基地局建設の工程短縮や作業負担の軽減にもつながる。サビによる劣化を抑えられるので、長期使用にも向いている。

KDDI5G 環境に配慮し、スピーディーに建設できる基地局を運用している

 KDDIは「通信品質でお客さまに選ばれるauを目指す」と決意表明をする。5G導入期において、4G周波数の転用は他社も行っているが、普及期は「Sub-6の2ブロック(100MHz×2)と基地局数が大きな武器になると考えている」と前田氏は自信を見せる。

 なお、KDDIは28GHz帯のミリ波も400MHz幅保有しているが、こちらは屋外での利用を想定している。ミリ波については、2023年度末までに1万2800局の開設計画を総務省に提出しており、「スタジアムなどの密集地帯に使っていくことが念頭にある」(前田氏)。ただしミリ波は直進性が高く、基地局だけでは運用できないため、「中継局を用いてミリ波のエリアを広げる実証も行っている」(同氏)。

 「数%のエリアに数10%のトラフィックが密集している。Sub-6の2波を使っても足りないエリアが出てくるので、ミリ波も有効活用していきたい」(前田氏)

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