世界を変える5G

ソフトバンクで「パケ詰まり」が起こりにくいワケ 重視するのは“ユーザー体感とバランス”(1/2 ページ)

» 2023年09月20日 19時10分 公開
[田中聡ITmedia]

 2023年初頭から、ドコモの通信が繁華街を中心につながりにくいという声を聞くようになった。電波はつながっており、アンテナピクトは立っているが、通信品質が劣化する「パケ詰まり」と呼ばれる現象だ。

 5Gのエリア拡大が追い付かずに4Gのトラフィックが増大したことがパケ詰まりの主な要因だが、エリア拡大の余地がある楽天モバイルを除く、大手3キャリアのうち、KDDIとソフトバンクに関してはドコモほど回線品質に対する不満の声は聞かれない。なぜ、大手3キャリアの中で明暗の分かれる事態になっているのか。

 ソフトバンクが、9月19日にモバイルネットワークの品質についての説明会を開催し、同社常務執行役員 兼 CNOの関和智弘氏がネットワーク設計で注力しているポイントを説明した。

コロナ禍によってトラフィックの傾向が一変

 ソフトバンクは、増加するトラフィックに対して5Gで対応しているが、2020年からのコロナ禍によってトラフィックの傾向が一変。人々の生活が在宅中心になったことで、住宅街のトラフィックが増加する一方で、繁華街のトラフィックが鈍化し、トラフィックの動きが読みづらい状況に陥った。

ソフトバンク
ソフトバンク コロナ禍とコロナ後でトラフィックの動きが変動している。現在は繁華街にトラフィックが戻ってきている

 2023年に新型コロナウイルスが5類に移行してからは繁華街のトラフィックが戻りつつあるが、データ利用量は増大傾向にある。ソフトバンクの月間データ使用量が20GB以上のユーザーは、1年で約1.15倍に増加を続けており、20GB超のユーザーで80%ほどのトラフィックを占めているという。

ソフトバンク 月間のデータ利用量が20GBを超えるユーザーは増加傾向にある

アンカーバンドのLTEがいかに動くかが重要

ソフトバンク ソフトバンク常務執行役員 兼 CNOの関和智弘氏

 ソフトバンクのネットワーク構成は、NSA(ノンスタンドアロン)の5Gがメインとなっている。NSAでは4Gのコアネットワークと5Gの基地局を組み合わせたもので、5Gと同時に接続するアンカーバンドのLTEがいかに動くかが重要になる。関和氏は繁華街にトラフィックが戻ってきたモバイルネットワークの品質課題は3つあると指摘する。

ソフトバンク ソフトバンクが5Gで運用しているネットワーク構成。NSAではLTEのアンカーバンドを効果的に活用することが重要になる
ソフトバンク モバイルネットワークにおける品質の課題

 1つ目が「過渡期の5G展開」。5Gエリアは展開途中なので、場所によっては離散的で電波が弱くなるが、その弱い電波をつかむと急に品質が悪くなることがあるという。いわゆる「セルエッジ(エリアの境目)」と呼ばれる場所だ。そこで、品質がいい場所に絞って5Gの電波を割り当てる必要がある。

 「都内で(5Gエリアの)密度が上がってきている場所もある。そこには、5G基地局がグループになることでセルエッジの発生が抑えられる。積極的に5Gを使うことで、容量の大きい電波で品質を維持できる」(関和氏)

ソフトバンク 点在している5Gエリアを面で展開する必要がある

 次に問題となるのが「アンカーバンドの容量」だ。5G基地局を過度に割り当てるとLTEのアンカーバンドが輻輳(ふくそう)するので、5Gとセットで使うアンカーバンドに在圏させるユーザーと、4GのLTEバンドに在圏させるユーザーのバランスを取ることが大事になる。

ソフトバンク LTEのアンカーバンドにトラフィックが集中して通信品質が劣化するケースがある

 続いて課題に挙げるのが「電波の届き方」だ。いかに5Gエリアを重ねたとしても、5Gの高周波数帯は直進性が強いので、一部の屋内ではLTEのトラフィックが集中する場合がある。そうなると、低周波数帯である900MHz帯での通信が輻輳してしまう。「この対策は、飛び道具はなく、地道に基地局を追加して、そこに届く電波を追加するしかない」と関和氏は話す。

ソフトバンク 一部の基地局にトラフィックが集中しないような制御も必要になる

 その際、ネットワークと端末で見られるデータを活用している。ネットワークは基地局単位で見ており、端末は100メートルから1キロまでのメッシュ単位で細かく見ている。これにより、通信品質が劣化しているエリアがピンポイントで分かるようになる。AIや機械学習も導入しており、異常のある地点を自動検出したり、要因の分析を自動で行ったりできる。問題の予兆も検出できるので、品質劣化が起こる前に対策を打てるのもメリットだ。

ソフトバンク 基地局側と端末側のデータを解析することで、通信品質が劣化している場所を特定できるようにしている
ソフトバンク AIを導入することで、品質劣化を未然に防ぐ取り組みも進めている

高品質のネットワークではユーザーの体感を重視

 品質劣化を抑える取り組みは分かったが、ソフトバンクが考える「高品質のネットワーク」とは何か。同社が重視するのはスピードテストの数値ではなく、ユーザーの体感だという。「アップリンク(上り)とダウンリンク(下り)のバランスを取ることが重要。ダウンリンクが速くてもアップリンクが遅いとパケ詰まりが起こる。アップとダウンのバランスをいかに取るかが重要」(関和氏)

ソフトバンク ソフトバンクがネットワークの整備で特に重視しているのが、ユーザーの体感だという

 そんなユーザー体感を可視化すべく、ソフトバンクは独自の評価指標に基づいて通信品質を分析している。具体的には「通信要求が上がってからネットワークからデータが落ちるまでの時間を分析している」(関和氏)そうで、Agoopが調査したもの。4キャリアで比較した結果、ソフトバンクが最も応答速度が高い結果になった。400ms以下を広げられるかが重要である一方で、700ms以上が増えると、変動によって通信劣化が起こる可能性があるという。

ソフトバンク ソフトバンクが独自に行ったキャリアごとの通信品質の分析。具体名こそ挙げていないが、A社(恐らくKDDI)はソフトバンクと同程度の好結果となっており、B社(恐らくドコモ)は、データの応答に400ms以上かかる通信が最も多くなっている
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