世界を変える5G

KDDIの5Gネットワーク戦略を解説 高橋社長が「他社の上に立てる」と自信を見せる理由:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2024年02月24日 09時00分 公開
[石野純也,ITmedia]

干渉条件緩和で首都圏はメッシュ数が2倍に 既に関西では実績も

 4月から、この状況が大きく変わる。

KDDI 4月以降は5Gの普及期として、Sub6を使った大容量エリアを拡大していく方針。これまでの広さに、厚みが加わる

 衛星干渉の条件が緩和されるためだ。前田氏は「高い周波数帯は屋内浸透も含めて厳しいので、まずは4Gの周波数を先行させてきたが、干渉条件緩和の後は、いよいよSub6のポテンシャルを最大化していける」と自信をのぞかせる。

 「5Gのサービス開始当初から、衛星事業者とは干渉条件の緩和について議論してきた。ようやく、23年度末にそれが緩和される」(同)。先に挙げたように、もともとKDDIは、他社より多い3.7GHz帯、4.0GHz帯の基地局を設置してきた。その上で、抑制していた出力を上げれば、Sub6エリアのカバー率を一気に広げることができる。地道に積み上げてきた成果が、ついに発揮されるというわけだ。

 首都圏において、その広さは2倍にも及ぶ。より細かく言えば、この2倍は100メートル四方に区切ったメッシュの数が、約2倍に増加することを意味する。前田氏によると、「出力向上前は2.1万ぐらいだったメッシュの数が、出力向上後は4.3万ぐらいまで広がる」といい、その広さのイメージは「山手線の内側はほとんどをSub6のエリアとして塗り切れて、そこから外にも広がる」という。

KDDI エリアマップにも、4月以降のデータが公開されている。スポット単位のエリアが減り、より面でカバーできるようになるイメージだ

 実際、既に衛星との干渉条件が緩和され、Sub6の出力を上げられている関西圏では、エリア拡大の実績を出しているという。エリアマップを見ると、確かに関西圏は1つの都市だけでなく、帯状にSub6のエリアが広がっている。神奈川県や千葉県がスポット的に点在しているとのは対照的だ。KDDIの代表取締役社長CEOの高橋誠氏は、「関西での実績があり、Sub6のエリアがドンと広がった。これによってSub6の5Gの品質が大きく上がり、何とか他社の上に立てる」と自信をのぞかせる。

KDDI 2月の決算説明会では、高橋社長が関西での実績を元に、効果の大きさを強調した

 このように、衛星干渉の影響で出力を抑えていた地域は他にもあるが、「そこはおおむね解決していき、残る大所が首都圏の地球局との条件緩和だった」(前田氏)。KDDIをはじめとしたキャリアにとっては、「満を持して」(同)のエリア拡大といえる。衛星干渉については、代表取締役 社長執行役員兼CEO 宮川潤一氏も「出力を上げることでエリアが広がるのはわれわれもまったく同じ構造」と語っている。ただし、もともと基地局数が多い分、その影響度合いはKDDIの方が大きい。

KDDI ソフトバンクの宮川社長も、Sub6の出力を上げることでエリアが拡大する見通しを語っている

 一方で、出力を上げれば、基地局ごとにエリア化できる半径が広がり、エリアの“円周”も伸びる。こうしたエリアの“端”では、通信品質が低下しやすい。特にNSA(ノン・スタンドアロン)の5Gは、いったん4Gに接続する必要がある関係で、システムが複雑。セル端で弱い5Gをつかんだまま4Gにフォールバックせず、いわゆる「パケ止まり」が発生することもある。

 ドコモもかつて、パケ止まりに悩まされ、5Gの電波をより早いタイミングで切り離して4Gにフォールバックするチューニングを導入。ユーザーに端末側で5Gをオフにする設定を案内するなど、苦肉の策に追われた経緯がある。KDDIも、その設定には苦労したというが、パケ止まりが起こらないよう、設計を最適化してきた。結果として、KDDIの調査によると、KDDIやソフトバンク(と思われるキャリア)はその数値を非常に低く抑えられている。Sub6の出力を上げることで、その体感品質に悪影響を与えてしまうおそれはないのだろうか。

KDDI 5G拡大期は、エリアの端でのパケ止まりが課題になっていた

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月10日 更新
  1. 資産3000万円以上が対象 MUFG「エムット」最上位サービスと“年会費無料”アメックス・プラチナの魅力とは (2026年10月08日)
  2. 「iPhone 18 Pro Max」を試して分かった進化と課題 想像以上に“使えた”可変絞り搭載カメラ (2026年10月09日)
  3. ダイソーで1100円のノイキャンイヤフォン「TWS009」を試す 騒音カットの効果は実感も電池持ちに課題か (2026年10月09日)
  4. 楽天モバイルの「ローミング継続」条件は本当に「エリア外」だけ? 2社のマップから見えた“食い違い” (2026年10月08日)
  5. ソニーが小型マイク「ECM-AX10」発表 スマホに挿して立体的で臨場感のある音の収録を (2026年10月09日)
  6. スマホの「実質価格」高騰の恐れ、iPhone 18 Proは2倍高く? 総務省の残価設定ルール厳格化は“誰のため”か (2026年10月10日)
  7. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  8. 10月1日から楽天モバイルの「au 4G LTEエリアローミング」が縮小も意外と残っている件 (2026年10月10日)
  9. 富裕層向けカードの潮流が変化 アメックス、三井住友、ダイナース、ラグジュアリーカードが狙う“特別な体験価値”とは? (2026年09月22日)
  10. 楽天グループ、1億件超の会員情報流出説を否定 「情報漏えいが発生したという事実は確認されておりません」 (2026年10月09日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー