他社のは「なんちゃってOpen RAN」 楽天三木谷氏が語る「リアルOpen RANライセンシングプログラム」の狙い(1/2 ページ)

» 2024年03月02日 11時17分 公開
[房野麻子ITmedia]

 楽天シンフォニーは2月26日、楽天モバイルやドイツの携帯電話事業者1&1が採用しているOpen RAN(※)対応の集約ユニット(CU)と分散ユニット(DU)ソフトウェアを、サブスクリプション型で他社に提供する「リアルOpen RANライセンシングプログラム」を発表した。

※無線の送受信装置などのオープンな仕様に基づき、さまざまなベンダーの機器やシステムと接続できる無線アクセスネットワークのこと。

 また、楽天グループはスペイン・バルセロナで開催されているMWC Barcelona 2024に出展。会期2日目の2月27日(現地時間)にはブース内でイベントを開催し、楽天グループ 代表取締役社長兼会長の三木谷浩史氏がリアルOpen RANライセンシングプログラムの狙いを語った。

三木谷浩史 楽天グループ 代表取締役社長兼会長の三木谷浩史氏
楽天モバイル 楽天のブース。MWC期間中、複数のイベントが開催されていた

 三木谷氏は初めに、「当時、誰もが仮想化された無線アクセスに懐疑的だった」と楽天モバイルがMNOとして参入した当時を振り返った。楽天グループは今や70以上のサービスを展開する大手IT企業だが、「正直、一番やりたくなかったのはモバイルビジネスだった」という。ネットワークを構築するには莫大な資金が必要で、十分なリターンを得るのは難しいからだ。しかし、多くの国では数社の通信キャリアによる寡占状態が続いており、料金も高額。リーズナブルなコストで高品質なネットワークを提供する必要があるとの考えに至る。

 そのときに「従来のやり方ではいけない」と三木谷氏は考えた。そこで、現在の楽天シンフォニーが構築した仮想化技術を採用。サポートシステムも仮想化した。

 なぜそれができたかというと、楽天が最も成熟したソフトウェアを提供している「モバイルネットワーク・ソフトウェア会社」だからだと三木谷氏。「携帯電話業界は何かおかしいと思っていた」が、「世界中の誰もが非常に高品質で、非常にリーズナブルな価格で(ソフトウェアを)利用できるようになることで、大きな変革をもたらせると確信している」と、リアルOpen RANライセンシングプログラム導入の狙いを説明した。

楽天シンフォニーのソフトウェアが間違いなく成熟している

 イベント修了後には、日本の報道陣向けのグループインタビューを実施。リアルOpen RANライセンシングプログラム関連の話題を中心に質問に応えた。主なやりとりは以下の通り。

三木谷浩史 グループインタビューで報道陣の質問に応える三木谷氏

―― リアルOpen RANライセンシングプログラムを発表されましたね。

三木谷氏 われわれは、誰もがバーチャライゼーションやOpen RANが難しいと言っていた5年前から始めました。今はみんなOpen RAN、Open RANって言っているけれど、だいたいのOpen RANは「なんちゃってOpen RAN」なんですよ(笑)。

 そもそもOpen RANというからには、たくさんのソフトウェアがあってはいけないと僕は思っている。Open RANが安くて、みんなが使えるようになれば、いろいろなハードウェア機器がつながります。ハードウェアメーカーさんはハードウェアを作るのに集中してくださいね、という世界が正しい姿だと思っています。

 でも、今は、エリクソンOpen RAN、サムスンOpen RAN、ノキアOpen RANのようになってきている。これは変えないといけない。

 今のところ、楽天シンフォニーのソフトウェアが間違いなく成熟していると思います。それをリーズナブルな価格で提供するので、「皆さん、使ってくださいよ」という形です。競合が利用するかもしれないけれど、それはそれでいいということで、戦略を進化させたという感じです。

 つまり、Linuxみたいにしようということですね。LinuxもピュアLinuxでは使えないから、Red HatとかRockyのようなディストリビューションがある。Open RANのリーダーとして、そんな世界に近づけていきたいなと思っています。

 もっと古い話では、サン・マイクロシステムズが開発したSolarisに比べると、Linuxはずいぶんと安いわけです。Solarisは自社のハードウェアとソフトウェアをバンドルしていたわけですから。

 われわれはクラウドやオペレーティングサポートシステム(OSS:運用サポートシステム)のソフトウェアも持っているので、「ついでにOSSもいかがですか?」というセールスができるわけです。コミュニティーを作って、ハードウェアとソフトウェアの接合の問題は、「NECも富士通も他の会社も、自分で接続テストをやってよ」という方が楽なんですよ。ライセンスしたら自分たちで接合してくれと。必要があればわれわれがソフトウェアをバージョンアップしますので、という形。Androidもそうですよね。機種によって時々不具合があるけれど、Androidがアップデートして直していく。それと同じような感じですね。

―― このプログラムを採用する事業者の規模感はどれくらいですか?

三木谷氏 分からないですね。今、話をしている相手がいきなり全部行くとは思いませんが、少なくとも、皆さん関心は持っています。まだアナウンスしたばかりなので、正直言ってこれからです。

―― Androidに近いですよね? 

三木谷氏 そうです、Androidに近い。

―― AndroidはフリーだけどGoogleはもうかっている、みたいな感じで考えていいですか?(笑)

三木谷氏 われわれとしては、ここで強烈な利益を上げようとは思っていません。それよりも、いろいろなベンダーとのリレーションシップを作って、クラウドやOSSである程度の利益を出したい。そもそも、大体1つのソフトウェアで全部賄えるというのが目的だったはずなのに、今は個別に自分の牙城を作って開発している。この牙城を崩しちゃおうかな、と思っています。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年06月10日 更新
  1. iOS 27は「iPhone 11」以降で利用可能 iOS 26から据え置きで過去最大のiPhoneに対応 (2026年06月09日)
  2. あなたの街の「スマホ決済」キャンペーンまとめ【6月版】〜PayPay、d払い、au PAY、楽天ペイ (2026年06月08日)
  3. スマホの“ミニ”外付けディスプレイが流行の兆し? 若者がインカメラではなく「アウトカメラ」で自撮りする理由 (2026年06月10日)
  4. 「iOS 27」はアプリの起動速度が30%高速、最適な通信切り替えも iPhone 11やiPhone SE(第2世代)も対応 (2026年06月09日)
  5. JR東日本が2027年春から「二次元コード乗車券」を導入 近距離券売機での磁気券は順次廃止へ (2026年06月09日)
  6. ソフトバンクが「今回もやる」とGalaxy S26を月額1円で販売――販売方法を早急に見直さないと撤退を迫られるメーカーも (2026年03月08日)
  7. IIJmioのスマホ大特価セール 中古「iPhone SE(第3世代)」が4980円、「OPPO Reno11 A」が9980円など (2026年06月09日)
  8. 次世代の「Siri AI」発表 ユーザーを理解した応答が可能、表現力も向上 26年後半に英語から対応 (2026年06月09日)
  9. 「それ、家じゃダメなの?」──スタバ長時間滞在に冷ややかな目 “スマホ操作”に“PCで仕事”も (2026年06月07日)
  10. WWDCで「折りたたみiPhone」に言及なしも、Apple版「大画面×AI」に期待できるワケ (2026年06月09日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー