他社のは「なんちゃってOpen RAN」 楽天三木谷氏が語る「リアルOpen RANライセンシングプログラム」の狙い(2/2 ページ)

» 2024年03月02日 11時17分 公開
[房野麻子ITmedia]
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楽天モバイルは単体で黒字化する

―― このLinux的なビジネスモデルは、長期的にはすごいエコシステムができるイメージはあるんですけども、短期的に楽天シンフォニーが楽天モバイルの赤字を救済するくらいの利益を出すのは難しいのではないでしょうか。

三木谷氏 楽天モバイルは(単体で)黒字化しますから(笑)。ただ、自分たちでOpen RANソフトウェアを売っていくのがいいのか。例えば家に置くフェムトセル、あれにもRANのソフトウェアが載っているわけです。そこまで行くと世界中に何億とあって、巨大なマーケットになる。今は個別のソフトウェア開発をちくちくやっていますが、おそらく利益はこっち(広い範囲までソフトウェアを提供する)の方が上がると思います。今のビジネスは今のビジネスで、われわれはやっていきますよ。

―― (楽天シンフォニーがシステム提供したドイツのキャリア)1&1のような丸抱えの案件は、まだ出てきますか?

三木谷氏 出てきますよ。何件か進んでいます。1&1は(契約者数1200万以上の)巨大なMVNOなので、そこまでのものはなかなか難しいですけど、特に発展途上国を中心に、非常に引き合いは多いです。1つのポイントはセキュリティです。セキュリティ面でもわれわれに対する関心は高いです。

―― 1&1型のビジネスは人がたくさん必要になってくると思います。それよりは、もっと広く薄くやっていくという狙いがあるのでしょうか。

三木谷氏 そうですね。テコが効きますから。昨日発表して既に4、5社、やりたいという話がありました。彼らがやってくれればいいと思っています。

ネットワークの自動運用で大規模障害を未然に防げる

―― 楽天シンフォニーのビジネスにおいて、手応えや課題感にしろ、今回のMWCで変わってきたと思うことはありますか?

三木谷氏 どうですかね。今年のテーマは分かりやすくて、Open RANとAIですよね。AIは仮想化しないとあまり意味ない。そういう意味では、仮想化にいち早くかじを切った戦略が正しかったと思います。

―― OpenAIとキャリアム向けのソリューションを協業して開発することも発表されましたが、手応え、期待はどうでしょうか。

三木谷氏 自動運転ならぬ自動運用ですよね。自動運用することによって、1つは大規模障害を事前に防げる。運用コストも大幅に下げられるようになるだろうと思っています。サム(OpenAIのCEO サム・アルトマン氏のこと)と話したときに、「AIでやるんだけど一緒にやらない?」と言ったら「やる」となって決まりました。

―― OpenAIにはChatGPTなど、用途ごとのツールがありますが、オペレーター向けのツールが出てくるということですね。

三木谷氏 そうですね。通信障害が起こるときには、なんだかんだ言っても前兆があるわけです。そのことを事前に予知し、対策を打っていく。例えばIPネットワーキングを自動化したりする。そういうことで仮想化することの意味が出てくるわけです。

 人がやると、ケーブルを挿し間違えたりしてダウンすることもありうる。他社さんも経験した2日間の通信障害も、結局、ブラックボックスだから、ああなってしまう。仮想化すると……そうはいっても仮想化するだけでは人手がいるので、それを自動化していくということです。

―― 通信障害は、どうしてもゼロにはできないと思います。それでも楽天モバイルは昨年、大規模な通信障害は起こっていません。なかったことはアピールしづらいと思いますが、三木谷さんとして注目してほしいところはどこでしょうか。

三木谷氏 ブラックボックスじゃないということです。どんなソフトウェアにもハードウェアにも故障はありますが、故障したときの冗長構成が、自動的にちゃんと動くかどうか。冗長構成ってたいてい動かないわけですよ(笑)。でも、ウチのは一応動いている。動かなくなったとしても、自分たちで開発しているソフトウェアなので、即座に対応できる。以前(障害が起こったときは)、(復旧に)1時間半ぐらいかかりましたが、ちゃんとやっていれば5分で回復できた。そこは反省材料ですね。

―― ドコモがNECとのジョイントベンチャーで、Open RANの会社「OREX SAI」を作り、ソフトバンクも「AI RANアライアンス」を設立しました。三者三様ですが、受け止めを教えてください。

三木谷氏 分からないです。本当に勉強不足で分からない。もしかしてすごいことがあるのかもしれないけれど、ちょっと1周遅れ感はありますね。われわれはオープンにしていこうよ、という方向性。でも、もしかしたらそこでコラボレーションできるかもしれないですね。



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