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ドコモがオリックス・クレジットを子会社化、個人向け金融事業を強化へ ドコモ版「マネ活、ペイトク」は?(1/2 ページ)

» 2024年03月06日 20時00分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 NTTドコモは2024年3月6日、オリックス子会社のオリックス・クレジットを買収すると発表した。出資額は792億円。NTTドコモがオリックス・クレジットの株式66%を取得し、連結子会社化した。

NTTドコモ オリックス ドコモはオリックス・クレジットを連結子会社化した

 3社は同日、共同で記者会見を開催し、その狙いを説明した。会見には下記3人が登壇した。

  • ドコモ執行役員スマートライフカンパニー統括長の江藤俊弘氏
  • オリックス・クレジット取締役社長の岡田靖氏
  • オリックス執行役の渡辺展希氏
NTTドコモ オリックス ドコモ執行役員スマートライフカンパニー統括長の江藤俊弘氏(画像=左)、オリックス・クレジット取締役社長の岡田靖氏(画像=中央)、オリックス執行役の渡辺展希氏(画像=右)

ドコモがオリックス・クレジットを買収する狙い

 ドコモは、日本で移動系通信の契約者数における事業者別シェアの36.1%を占め、約2160店舗のドコモショップを持ち、かつマーケティングプラットフォームの「dポイントクラブ」を通じて約9876万人の会員基盤を有している。

 ドコモはこれまで「dポイントの魅力をベースに顧客基盤を作ってきたが、多角的な利用が見込まれる決済サービスにおいて顧客接点を最大化させ、今後、投資、融資、保険といった新サービスにつなげて、ドコモの金融サービスを使ってもらう戦略」(江藤氏)を取り、弱点だった金融事業最大化に向けて打って出ていく。

NTTドコモ オリックス ドコモによるオリックス・クレジットの連結子会社化は、金融事業最大化に向けた策の1つだ

 発行当初はDCMXという名称で提供していた「dカード」は1700万会員を超える規模となっている。2018年にはバーコード決済、スマホ決済である「d払い」をスタートさせ、現在5700万契約を突破している。他にも、ドコモ回線契約、ドコモサービスの契約状況に応じ、最大で年率3.0%の金利優遇が適用される、個人向けローンサービス「dスマホローン」を2022年7月から提供し、2024年2月には累計貸付実行額が370億円を突破した。

NTTドコモ オリックス 金融決済事業の強化に向けたこれまでのドコモの動き

【訂正:3月7日18時25分】初出時、「「dカード」は700万会員を超える規模」と記載していましたが、正しくは1700万会員です。お詫びして訂正いたします

 2023年10月には、マネックス証券との資本業務提携を行い、証券業への本格参入を果たした。

 dスマホローンの強みは、「dカードの利用、あるいは電話契約などを行っている場合、金利を優遇する点」「手続きがWebで完結できる点」「1000円から借り入れができる点」「d払い残高でショッピングができる動線がある点」の4点だという。

NTTドコモ オリックス dスマホローンの強みは、ドコモのサービスの利用状況に応じて、最大年率3%優遇したり、少額から借り入れができたりすること

 江藤氏によれば、「dスマホローンをさらに多くの人に利用してもらいたい」という思いから本提携に至ったという。「dスマホローン事業のさらなる拡大」も狙いの1つで、オリックス・クレジットの商品開発力を生かしながらラインアップをさらに増やす他、ドコモの販売チャネルを生かして、現在の商材「フラット35」などの販売強化のサポートも行う。

 ドコモはローン事業を自前で立ち上げて2年弱がたつが、「今後の事業拡大に向けた課題が見えてきた」と江藤氏は振り返る。「事業運営には、きちっとしたオペレーションや、審査と回収の幅広い業務のノウハウが必要になる」と江藤氏は続ける。

NTTドコモ オリックス ドコモはオリックス・クレジットのオペレーション力や、個人向け融資の与信ノウハウ、融資サービス開発力などを必要としている。それとドコモが持つリアルでの顧客接点、dポイント会員基盤などを組み合わせて、金融サービスの強化を図る

ドコモから見たオリックス・クレジットの魅力とは

 ドコモが手を組むオリックス・クレジットは、オリックスグループの総合信販会社として、個人向けにローン事業、信用保証事業、モーゲージバンク事業を展開する。

 ローン事業は、1987年に販売を開始した低金利・大型枠の「VIP ローンカード」がプレミアム・カードローンの先駆者として地位を確立するとともに、2024年現在はデジタル化やキャッシュレス化のニーズに対応したスマートフォン起点のローンサービス「ORIX MONEY」へ発展している。

NTTドコモ オリックス オリックス・カードは、スマートフォンを起点としたローンサービス「ORIX MONEY」を展開している

 信用保証事業は、ローン事業で培った与信ノウハウをベースに、主に金融機関が取り扱う無担保ローンの保証を行っており、現在、全国で250超の金融機関と提携している。

NTTドコモ オリックス 営業拠点は2015年から開設され、営業ネットワークも強みとしている

 オリックス・クレジット取締役社長の岡田氏も「44年で培った与信ノウハウ、審査から回収まで自社完結の体制」を自社の強みとして挙げる。同社は「営業ネットワークと顧客基盤、7営業所、東京・沖縄のオペレーションセンター」を保有していることも強みだという。江藤氏は「オリックス・クレジットが独自に与信のノウハウを持ち、自前でコールセンターなどのオペレーションを持っている」点が魅力になるとしている。

 モーゲージバンク事業では、「フラット 35」を中心とした、住宅に関する資金ニーズに対応した商品を展開している。

NTTドコモ オリックス 住宅関連の資金ニーズに対応する商品も手掛けている

 個人向け金融サービスの市場は、少子高齢化をはじめとする社会構造の変化による資金ニーズの多様化や、IT・デジタル活用に強みを持つ異業種からの新規参入などが目立つ。ドコモとオリックスは、オリックス・クレジットがこれまで培ってきた個人向け金融の審査ノウハウ・オペレーションと、ドコモが有する会員、事業基盤のデータを利活用し、スマートライフ領域における融資分野の業容拡大を目指すとともに、新たな融資サービスの開発を行う。

 「各経済圏陣営では、当たり前のように商材として提供されている、住宅ローンについても検討し、ドコモとオリックス・クレジットで共同開発し、提供していきたい」(江藤氏)としている。

 オリックス執行役の渡辺氏は、「オリックスが持つ株式の66%をドコモに譲渡。その実行日を3月29日とした」ことを説明する一方で、「株式譲渡による社名や代表者の変更、リストラ、サービス内容などの変更は予定していない」とした。

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