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ドコモがマネックス証券を子会社化 出遅れた金融サービスで他社を追撃へ

» 2023年10月05日 06時00分 公開
[小山安博ITmedia]

 NTTドコモがマネックスグループのマネックス証券の株式49%を取得して連結子会社化し、ドコモの金融サービスを拡充する。会見に臨んだドコモの井伊基之社長は「マネックス証券のネット証券ならではのサービスやノウハウに、ドコモの顧客の基盤を生かして、初めてでも手軽で簡単な資産形成サービスを提供していく」とアピールする。

 まずは2024年1月から始まる新NISA制度に向けて、dポイント連携など順次サービスを拡大していく方針。マネックス証券のブランドは今後も維持する方向性だ。

ドコモ ドコモとマネックスが業務提携。中央左がドコモの井伊基之社長、中央右がマネックスグループ松本大会長

dポイント会員基盤9600万ユーザーをベースに、金融サービスへの誘導を図る

 今回のスキームは、マネックス証券が中間持株会社ドコモマネックスホールディングスを設立して発行株式を移転し、マネックスグループが51%、ドコモが49%の株式を保有。取締役の過半数を指名する権利を持つのはドコモで、マネックス証券はドコモの連結子会社となる。

 ドコモの方が、持株比率がわずかに低いのは、「マネックス」のブランドを生かすためだと説明。新サービス名なども明らかにされていないが、「マネックス」のブランドは活用していく考えだ。

ドコモ 井伊社長と松本会長

 両社で資産形成に対する需要が高まっている中、新たな資産形成サービスを提供し、将来や老後に対する漠然とした不安などの社会課題を解決したいという思いが一致したと説明。具体的な取り組みや、目指す収益規模のがい然性が高まったことから今回の資本業務提携契約に至ったとしている。

 その結果、マネックス証券がドコモの子会社となることで、今後ドコモも証券サービスに対して積極的にユーザー獲得、サービス連携の開発に取り組む。dポイント会員基盤9600万ユーザーをベースに金融サービスへの誘導を図り、マネックス証券のさらなる証券口座数、預かり資金の増大とドコモの金融サービスの収益拡大を図る狙いだ。

 これまでドコモでは、dポイント、d払い、dカードといった決済サービスを強化して、金融サービスとしては三菱UFJ銀行と連携したdスマートバンク、SMBC日興證券と連携した日興フロッギー+docomo、お金のデザインと協業した「TEHO+ docomo」といった商品を展開してきたが、あくまで協業レベルにとどまっていた。

 マネックス証券とは同社ポイントとdポイントの交換で連携していたが、資本業務提携によって子会社化し、積極的に証券サービスを打ち出していく方針だ。KDDIはauカブコム証券、ソフトバンクはPayPay証券、楽天モバイルは楽天証券を抱え、SMBCグループとの連携を強化しているSBI証券など、業界では連携が進む。

 基本的には同様のポイント、クレジットカード連携をする他社と似たサービスを想定するが、他社に出遅れているドコモとしては、証券会社を取り込むことでまずは他社に追い付き、さらなるサービス強化を図っていきたい考えだ。

 ドコモの既存サービスと連携することで、例えばd払いと資産形成サービスを連携させ、証券口座開設や証券サービスの分かりにくい部分といった負担を軽減する、dカードによる積立投信サービス、投資残高に応じたdポイントの付与、dポイントによる金融商品の購入といったサービスを想定する。

ドコモ 初めてでも簡単に使える資産形成サービスを開発する。まずはポイント付与など、既にあるサービスを連携させるなど、順次サービスは拡大する

 dポイント会員の年齢や家族構成、購買データなどにもとづいて、ドコモのオンラインメディアや全国のドコモショップも活用。ユーザーのライフステージやライフスタイルに即した金融商品を提案していきたい考え。

ドコモ ターゲットとしては家族層をメインに置いているようだ

 具体的な話はなかったものの、ドコモグループ全体で検討しているweb3や生成AIなどの新しいテクノロジーを活用して新しい証券サービスも開発していきたい、と井伊社長は話す。

ドコモとの提携でまずは500万口座、預かり資産15兆円を目指す

 マネックスグループの松本大会長は「創業以来、常に日本の資産形成サービスにイノベーションを起こし、多くの業界初のサービスを考案、実現し、業界をリードして資産形成サービスを個人に提供してきた」とアピール。資産形成は自己実現のための手段で、その夢の実現を手助けするのが究極的な企業作りであると強調。

ドコモ 両社の協業がどのような結果になるか、今後のサービス開発や戦略に注目が集まる

 その上で、「あなたと世界を変えていく」というドコモのブランドスローガンと同じ企業理念を共有していると指摘し、ドコモとの協業にメリットがあることを強調した。

 業界的にも「デフレを脱却してあらたな成長をする機運がある。政府もNISAを導入して“貯蓄から投資へ”を推進している」という状況下で、「個人が安心して利用でき、便利で良質な金融サービスや資産形成サービスが求められている」というのが松本会長の考え。

 ドコモは、dポイント会員基盤を始めとしたプラットフォームを備えており、両社が協業して資産形成サービスを提供することは「エポックメイキングな出来事」とアピールする。

ドコモ ドコモの既存の金融サービス。ここに証券サービスを追加していく

 まずはドコモの中でもユーザー層の厚い40代以上をターゲットとして狙いつつ、これから資産形成の拡大が見込まれる20代などの若年層にもサービスを拡大していきたい考え。キャリアを問わないdポイント会員基盤をベースにするため、ドコモ回線ユーザー以外にも広くサービスを展開していきたい考えだ。

ドコモ 9600万ユーザーに対して最適な商品をタイムリーに提供していきたい考え

 マネックスグループ社長CEOの清明祐子氏は、現在のマネックス証券口座数が220万、預かり資産が7兆円程度だと説明。現在の目標が300万口座、資産10兆円に対して、ドコモとの提携によって、まずは500万口座、預かり資産15兆円を目指す。ドコモの執行役員でスマートライフカンパニー統括長の江藤俊弘氏は、「数百万口座では物足りないので、ドコモがやるからには1000万口座を目指したい」と意気込む。

ドコモ 両社のもつアセットを組み合わせてサービスを展開する

 金融サービスとして証券会社を子会社化したドコモ。これまでは他社との協業にとどめてきたが、銀行、保険など、他の金融サービスについてもより深い取り組みも考えられる。他社はauじぶん銀行、PayPay銀行、楽天銀行を有しており、ドコモがどういった金融戦略を描くか、今後の展開が注目される。

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