日本通信が「ネオキャリア」で実現するサービスとは? 福田社長が語る“音声接続”で広がる可能性MVNOに聞く(2/3 ページ)

» 2024年05月27日 11時37分 公開
[石野純也ITmedia]

契約した海外キャリアで全ての機能が使えるようになる

―― SIMカードを作れるのも、音声接続の利点としてあると思います。

福田氏 これが大きいですね。今の最大の弱点は、海外で使えないことです。音声は卸なので大丈夫ですが、自分たちのSIMになれば、契約した海外キャリアで全ての機能が使えるようになります。ただし、今はSIMを買ってきて売っているという状況なので、それができません。認証情報まで全て自分たちが持つことになって、初めてサービスが作れるようになります。

 通信事業者とは何屋なのかというと、私は認証屋だと思っています。それをしているからこそ、利用した分だけを請求できます。今のMVNOは、その認証に関する部分を自分たちでマネージできていません。私たちまで「だったら通信事業者と言うな」と書かれてしまうので、今までこれはあまり言ってこなかったのですが(笑)。冷静に言えば、そういうことです。

 (音声接続をすることで)初めて自分たちの鍵や番号を入れ、それを使って認証できるものをSIMという形で届けることができます。認証が全てなのは、何も通信に限った話ではなく、いろいろなサービスで必要になります。日本通信では、FPoS(※)のビジネスとして、地域通貨の「めぶくPay」をやっていますが、それも同じことです。どちらもやっているのは安全な認証で、認証によって通信ができたり、決済ができたりする。それが一番重要なことですが、ようやく2年後にビジネスにすることができます。

※FPoS=Fintech Platform over SIMの略。金融サービスを安全に利用できるよう、SIMに内蔵している電子証明書技術と暗号化技術を利用し、本人の認証を行うプラットフォーム

日本通信 FPoSを用いた群馬県前橋市のスマホ決済サービス「めぶくPay」

―― データローミングできないことは、やはりユーザー獲得の障壁になっているのでしょうか。

福田氏 できないと言われることはありますね。特に法人契約ではそれが多いです。今、インフレが始まってコスト削減する企業は増えています。大手企業はキャリアがタダのような価格で(端末を)配っているのでいいのですが、中小企業には来ないのでショップで通常の契約をしています。それと比べると、日本通信の方が安くなります。ただ、今のままだと海外出張のときに対応ができません。一般消費者は海外向けのWi-Fiルーターを借りればいいのですが、今後のことを考えると、やはり海外ローミングは必要です。

―― 逆にインバウンド用のSIMカードを出したりもできるのでしょうか。

福田氏 先日出した「VISITOR SIM」は、トータルで何GBにするかをカスタマイズして作れるものですが、結構人気がありますね。ああいったものは増えると思います。これは総務省にも言っていますが、本人確認の規制は何とかしないと、海外から来た人が音声付きの契約ができません。彼らだって、レストランの予約をするようなときには電話をします。首相の方針でもその部分の対策は言われていました。

 FPoSではマイナンバーカードを読み取っていますが、パスポートにもICチップは入っているので、同じようなことはできます。あれで確認すれば本人確認とどの国の政府が発行しているかの確認ができるので、重大な事件になれば捜査は可能です。総務省なのかデジタル庁になるのかはありますが、それによって契約できた方がいいという話はしています。

マイナンバーカードでの本人確認を入れていなかったら、パンクしていた

―― マイナンバーカードをNFCで読み込んで本人確認するという方法は楽だと思いますが、日本通信以外だと導入しているMVNOは少ないですね。

福田氏 この部分のノウハウは、アメリカでローカル4G(sXGP)をやってきて培ったものです。そのノウハウが大変なのではないでしょうか。うちも米国事業があったからできていることです。

 マイナンバーカードの認証は、去年(2023年)1月に始めていますが、結構な率がそこに行っています。読み取ってデジタルIDを発行するといったことをビジネスとしてやっているからこそで、多くのMVNOはどうすればいいのか分からないのではないでしょうか。昨年、あれを入れていなかったら、うちもオペレーションがパンクしていたと思います。

日本通信 日本通信では2023年1月から、マイナンバーカードを用いた本人確認が可能になっている

―― IMS(IP multimedia subsystemの略で、キャリアの持つサービスを実現するための設備)を持ち、電話もやるとなると、アクセスチャージの支払いも受けられるようになると思います。それを生かした値下げも可能でしょうか。

福田氏 そういう可能性もあると思っています。キャリアからすると、音声は完全に無料で提供している感覚だと思います。ナローバンドで帯域を取らず、データを使うよりも音声で話をしてもらっていた方がよっぽど安くなる。アクセスチャージがありますが、あれもかける側と受ける側を平均すればイコールになるはずで、イコールだとすれば接続料の支払いと受け取りが“行ってこい”になります。

 残るのは維持コストですが、それは基本料に含まれているので、従量部分は0円に近くなるはずです。うちの場合は受ける方の回線も借りているので、イコールにはなりません。その意味で他社より高く設定する可能性はありますが、本来であれば通話料は極めて0円に近くなってもおかしくないと思っています。

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