日本通信が“安すぎる”30GBプラン提供に踏み切った背景 福田社長「反響すごかった」:MVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2023年12月20日 10時48分 公開
[石野純也,ITmedia]

 MVNOの老舗、日本通信は11月27日に「合理的30GBプラン」を提供開始した。30GBのデータ容量と1カ月間合計で70分間の無料通話をセットにしたプランで、1回5分の音声通話定額を選択することも可能。月額料金は2178円(税込み、以下同)と、無料通話を加味すると、中容量プランの中では頭1つ抜けて安い。同社は、2021年2月に「合理的20GBプラン」を導入していたが、合理的30GBプランはこのデータ容量を10GB増量したもの。新料金プランの追加ではなく、料金プランの改定という位置付けだ。

日本通信 月額2178円は据え置きで、データ容量20GBから30GBに増量した「合理的30GBプラン」

 料金を据え置きにしたこともあり、既存のユーザーも自動で合理的30GBプランにアップグレードされる。日本通信では、データ容量が1GBで290円の「合理的シンプル290プラン」や、平均的なユーザーに向けたデータ容量10GBの「合理的みんなのプラン」を用意しており、合理的30GBプランと合わせて3本立ての料金プランを主力にする。容量から中容量のやや大きなデータ容量までをカバーしているといえそうだ。

 合理的30GBプランのプレスリリースでは、35GB超のユーザーに向け、「これ以上の大容量は携帯キャリアのプランをお使いください」と記載し、料金の安さと相まってその率直さが話題を集めた。では、今回の料金プラン改定や、あえて大容量のユーザーにキャリアを勧めた狙いはどこにあったのか。日本通信で代表取締役社長を務める福田尚久氏に話を聞いた。

追加チャージによる収益を諦めてまで20GB→30GBに増量した狙い

―― 自分が合理的30GBプランの発表をX(旧Twitter)でポストしたところ、かなり大きな反響がありました。日本通信ではいかがでしたでしょうか。

福田氏 反響はすごかったですよ。問い合わせもガンと増え、数字を見ても、合理的シンプル290プランを含め、レベルが違うところにきています。今回はいろいろと伝わったのでしょう。もともとの戦略として大臣裁定の後、通話の使い放題を出し、その後のahamoの発表を受けてすぐに対抗するために合理的20GBプランを出しました。ただ、主戦場はもう少し容量の小さなプランという思いもあり、合理的シンプル290プランを出し、春には合理的にみんなのプランの容量を6GBから10GBに改定しています。

 今回、20GBを30GBにしたことで、ラインアップとして当面のものが完成しました。だからこそラインアップとして見せようとしましたが、その見せ方がよかった。分かりやすかったのだと思います。20GBのプランの比率が圧倒的に低くなっていてバランスが悪かった。そのバランスが整ったのが、今回の一番の効果です。全体を見ると、合理的シンプル290プラン、合理的みんなのプランも増えているので、3つがおしなべて上がっています。これは狙い通りでした。

日本通信 日本通信の福田尚久社長

―― このタイミングで30GBに容量を上げた理由を教えてください。

福田氏 今お話ししたラインアップを整理したかったというのが1つ目の理由です。合理的シンプル290プランは昨年(2022年)度が終わった段階で、「容量の少ないプランなら、これ」というご評価をいただけていました。楽天モバイルの無料廃止も、いいサポートになりました。

―― サポート(笑)。

福田氏 (基本料無料には)povo2.0もありますが、あれもずっと使っていないと解約になるややこしさがあります。その点、合理的シンプル290プランはずっと290円という分かりやすさがありました。ここでベースを築けたので、次ということで4月に合理的みんなのプランを6GBから10GBにして、一定の評価を得られました。

 「さて、もう一段」というところで、背景事情として、コロナが収まり活動が活発になった結果として、平均的なデータ使用量が増えていたことがありました。合理的20GBプランや合理的みんなのプランは、超過料金が発生する率が高くなっていた。短期的に言えば、超過料金でうちのARPU(1ユーザーからの平均収入)は上がりますが、それは逆にどこかに移る理由にもなってしまいます。それはよくないということで、6GBを10GBにし、その次として20GBを30GBにしました。

 30GBになってくると、それを超える方はほぼほぼいません。うちとしては、超過料金を全てギブアップした形になりますが、それで長期的にいてくれた方がいい。もしコロナ禍が続いて人の動きが活発化していなかったらやらなかったかもしれませんが、明らかに使っている量が増えていたので、その動きに応じていくことにしました。20GBから25GBにするような案もありましたが、中途半端なことをするとまた料金を変えることになってしまうので、ここは思い切って30GBにしています。

―― ある程度先々のトラフィック増加も見越した、先回りの容量アップということですね。

福田氏 そうですね。ちなみに、20GBでも、超過する人は2割もいません。その人たちを全て基本料金内で使える形にすると、多くの人はデータ容量が余ることになります。ただ、お声を聞いていると、YouTubeを見るときにもっと品質を上げたいと言われることもあります。

20GB→30GBは自動適用も、不利益変更にはならない

―― 容量に余裕があれば、動画を見る時間が長くなったり、画質を上げるなど、使い方も変わるかもしれません。

福田氏 そうです。今はなんだかんだ言っても、モバイルで動画を見ることが多いですからね。今まではテレワークなので家にいてスマホもWi-Fiにつないで……となっていましたが、今は電車で普通に動画を見ている人が多い。2年前と比べると、1人あたりのトラフィックも上がっています。2年前に一度(データ使用量が)落ちたということでもありますが、今は一定の法則性を持って増加しています。

 ただ、これはPHSでMVNOをしていたときから言い続けていたことですが、MVNOは帯域を買ってくるので、バランスよくそれを使わないと破綻をきたしてしまいます。ですので、適度な成長が一番いい。うちは今、それをずっとやっています。法人関係も多いですし、中央官庁でも使っていただけています。何がいいかというと、その人たちは昼間あまり使わない。ピークがズレるので、法人関係もバランスよく成長していくことで収益が立ち、品質も維持できます。売れると思ってワーッと一気に広告を出し、コンシューマーを追いかけるMVNOもいますが、あれをやればやるほど品質が劣化していきます。そのために、バランスよく成長していくことを心掛けました。

 そのためにも、うちに来ていただいた方に満足していただけることが重要です。通信の世界では珍しいと思いますが、6GBから10GBへの変更や、20GBから30GBへの変更は、自動適用にしています。重要事項説明での説明と容量が変わってしまうため、厳密に言えばもう1回承諾をいただかなければならないのですが、不利益変更にはならない。それで裁判をされてもいいというつもりでやっています。社内でも議論はありましたが、クレームが来たら直接僕が会いに行ってお話すると言って回収しました(笑)。

―― 楽天モバイルの0円廃止のような変更だと物議をかもしそうですが、あれも自動適用でしたね……。

福田氏 うちはデジタルIDもやっていますが、ここには深い議論があります。重要事項説明や利用規約にサインするというのを、イベントと捉えるか、プロセスと捉えるかの違いです。アメリカはイベント、欧州はプロセスが中心で、イベントと捉えるとそれが絶対になり、変えてはいけないとなってしまいます。日本の行政はイベントという立場を取っていますが、裁判所はプロセスを取ることが多い。やはり1枚紙を交わしたら、それを変えてはいけないというのはおかしい。うちは後者の立場に立って、6GBを10GBに変更しました。その際にも弁護士と検討し、慎重にやっています。

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